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第3話 あるまじき逆転(10)
聞き込み中
・糸鋸刑事
話は変わるが、この話を切り出してみることにした。
「糸鋸刑事の言ってた部下って宝月刑事だったんですね」
茜は事件と関係ない雑談になったのでリラックスしてかりんとうを食べ始めた。いや、元々食べていたが。
「そうね。係長もせっかくの休暇だってのにツいてないよね。……あ。ツいてないとか不幸とか、そういうことを言うと怒られちゃうんだった」
「あ。そういえば俺もツいてないですねって言ったら怒鳴られましたケド……。何だったんですか、あれは」
その疑問の答えは茜が知っていた。
「……今日ね。係長、デートだったらしいの」
「そう聞いてます。年甲斐もないしガラでもないですね」
「へー。そこまで言っちゃうんだ。でさ、そのデートの相手ってのが自称『不幸の女神』ってくらいツいてない人でさ。行く先々で事件に巻き込まれちゃうんだって。今回のことも自分のせいじゃないかって気にしているらしいの」
「はあ。それでツいてないって言葉に過剰反応しちゃうんですか」
「そういうこと。でも、聞く話じゃ昔は無実の罪で逮捕されまくって、その度成歩堂さんにさんざん弁護されてたらしいから、捕まってないだけ最近はマシなんじゃないの?」
(つまり……事務所にとってのお得意様か。大事にした方がいいな。そして、もっと事件に巻き込まれてくれることを期待したほうがいいんだろう……)
人の不幸は蜜の味だ。
・みぬきの容疑
みぬきは自分の容疑について、あまり多くを話してはくれなかった。潔白であるならば事件についてよく分かっていないのも仕方がないが、どうもそれだけではなさそうだ。改めて警察から話を聞いておきたい。茜はみぬきの容疑について教えてくれた。
「もう大方話は聞いてるみたいだけど……。あの子はね、被害者と最後に会ったと思われる人物なの。被害者死亡直前に舞台の上にいるところも目撃されているわ」
「し、死亡直前……ですか」
死の瞬間、そこにいなかったという証拠はない。これはかなり不利な状況だ。
「そ。それに、動機もある。……もう聞いた?」
「ええ。暴力があったとか……」
「ドメスティック・バイオレンスってヤツよね。デリケートな話だからさ、そっとしておいてあげたいけど、……そういうわけにも行かないの。……捜査官の中には、この話が出たとき有力証言だって小躍りしてた無神経なヤツもいたけどね。……とにかく。彼女は父親から何度も殴る蹴るなどの暴力を受けていた。そのストレス……動機としては十分なものと考えられるわ」
「で、でも。本人は事件当日は暴力を受けてないと……」
王泥喜は異議を唱えた。
「言っている……それだけよね?あの夜、被害者と二人っきりになったあの子が暴力を受けなかったって言う証拠はあるの?」
「う。そ、それは……」
法廷でなくても、証拠も無しに異議は唱えられないということか。
「あの夜、暴力があったという証拠も見つかってないわ。……でもね。そもそも、あの夜に暴力がなかったとしても、それまでに繰り返し暴力があったという事実は揺るがない。……それにね、証拠があるのよ。彼女が被害者を殺したって言う、物的でカガク的で、決定的な証拠が……ね」
ただでさえ振りなのに、何かとどめになる物があるらしい……。
聞き込み項目追加
・決定的な証拠
つづく

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