過日の落馬事故は、関係者の間でも当然話題沸騰だったようだ。
前回のこのブログを読まれた、親しくしているライターさんから、関東の騎手意識についてご指摘を頂いたこともあり、またもちろん、個人的にも例の内ラチ問題含め興味があったので、この2日間でトレセンに出入りできる記者の方々に依頼して調査してもらったところ、いろいろ分かったことがあった。もちろん全て匿名の上で掲載の了解を得ているのでまとめて紹介する。ただし、以下はあくまで取材対象となった人たちの見解であることをことわっておく。
★ 関東では、先輩騎手が内ラチを空けて回るように若手を指導、叱責している場面をよく見かける、とのこと。内ラチ1頭分空けるというのは、明文化されてはおらず、暗黙の了解として騎手同士が持っているもの。これは、馬は生き物である以上まっすぐ走れないし、突然驚いて横へ動くこともあるので、その場合の逃避空間として空けている。また前の馬が故障してきた時に下がってくるためのスペースとしても大事。
★ これに対し関西では、特に内を空けて乗るような申し合わせはなく、1頭分空けないといけないという具体的な数字を伴った感覚はない。ただあくまで騎手の常識として、内ラチへ寄りすぎると危険という意識で乗っている。(リーディング上位騎手1名、ベテランの域に入りつつあるGT複数回優勝騎手1名、中堅騎手1名)。
また調教師サイドも、特に内ラチ沿いについての規定や指導については聞いたことがない(リーディング上位調教師2名)。
(私見・・・ということは、例えば競馬学校などでそういう指導はしていないと思われるし、JRAから規則として指導しているわけでもないと思われる。ただ、関西については、もし他の人に訊いてみれば、違うコメントが出てくる可能性はある。)
★ 東西共に、今回の処分については仕方ないし、妥当であるという声が多い。落馬事故が起こった以上、いくら動きは小さくても、あれくらいの処分は妥当ということ。ただ落馬がなければ何にもお咎めなしだっただろうし、被害を受けた騎手はもちろん、三浦にとっても不運だったという声は多い。
もっとも、三浦騎手は以前から御法について細かいことで注意を受けることが多かったという指摘は複数の方からあった。
★ カメラマン氏の話によれば、「三浦の馬は4コーナーを回るときに、右トモを滑らしてタイミングを崩し、それで馬自身が態勢を立て直そうとしたところに、遠心力が加わって外にヨレ、それに勝浦がひっかかった。また勝浦の馬も、その外にいた横山典の馬が内に締め気味にきていたので、間隔(余裕)が足りなかった。」とのこと。(私見・これはあくまでカメラマン氏の目によるものです。真相かどうかは分かりませんが、ただこれまで無数のレースを集中して見つめてきているプロの目ですから、かなり真相に近いとは思われます。)
さて、ここからは私の意見です。
★ まず前提として、誤解のないように書いておきますが、私は三浦騎手の今回の処分は妥当という立場です。擁護するつもりは一切ありません。もし前回の内容を読んでそう誤解する人がいると嫌なので、断っておきます。擁護とかバッシングとかいうのは次元が低いと思います。以下本文。
★ まず改めてもう一度書くが、全ての意味において競馬(に限ったことではないが)とは運が左右する、ということ。これが私の競馬に対する大前提。
★ ここからは具体的な事象についての個人的見解。まず、内ラチ1頭分空けることの意識が東西で違うようなのは興味深い。
さらに、これが安全意識のために空けているというのは十分理解できるが、現実問題として、レース中ずっとこの間隔を保って周るのは不可能に近い。外からの押圧は当然のように毎度あるわけだし、それに抵抗して最内の馬がラチとの間隔を守り続けようとすれば今度は馬群の真ん中にいる馬にとって逃げ場がなくなることになる。
第一、実際にそんなことが必ず守られてレースが行われていないことは、レースを見れば明らかである。あくまで、手綱を握っている人間の臨機応変の意識に任せるしかない。
つまり、内ラチ1頭分問題は、ルールとして明文化できるものではない、ということだ。ならば、中村裁決委員が「内ラチを空けて回らなかったことが安全義務を怠っていたので」と、この「内ラチ問題」を罰則の1つの基準として今回用いたと語ったことは、マスコミやファンに誤解を招く恐れのあるものだったと個人的に思う。
それと同時に、今回のような大きな事故において、どの馬に何が起こっていたかをキチンと公表しないのは、やはり宜しくないことだと思うのだ。三浦騎手の馬はラチに接触していたのか、いなかったのか。外へのわずかな動きはなぜもたらされたのか、意図的に外へ出したのかどうなのか、勝浦騎手の馬の動きはどうだったのか、その外の馬はどうだったのか・・・と、それぞれの騎手に取材したり、フィルムを分析して判断した結果をすべて出すべきである。「これから気をつけます」的なコメントをいくら出されても、ファンにとってはあまり意味がない。
そうした詳細な状況を物語る証言が出ないと、こうして外野の人間がいろいろ憶測・・・というか推測しないといけないわけで、ただ「外への動きがあって、程度は小さいが走行妨害だった」という儀礼的な一文で済ませて良い問題ではない。丁寧に書いて書きすぎということはない。「落馬したんだから、失格処分です」というだけでは不親切である。とかく裁決は、レース当日に見解を出してそれっきりというケースが多い。たとえ後日であってもいいから、きちんとフォローすべきである。
★ ここからは少し本題から外れてしまうかもしれないことを2つ。
まず、スローになって馬群が密集してしまうレースが増えたり、芝でインを突かな
いとどうにもならないような馬場コンディションをずっと維持させたりすると、今後も近いような事例が起こる恐れがある、ということ。馬群が密集しやすいような条件を人為的に作り出すことの是非も、少し考慮されるべきではなかろうか。
もう1つは、これはかなり以前から雑誌でも書いていることだけど、「あまり騎手の
御法の取り締まりを厳しくし過ぎない方がいい」ということ。現実に危ないことをして被害が出ればその都度罰すればいいわけで、あまり抑止力が強くなるような規則は、競馬本来の魅力を削ぐことにつながると思う。もちろん、安全性が保たれる必要はあるのだが、あまり行き過ぎるのもどうか、ということだ。
分かり易くいうと、朝日杯のマイネルマックスにおける佐藤哲三騎手の騎乗、京都金杯のタマモクロスにおける南井騎手の騎乗、もっと古い話をすれば(苦笑)、昭和52年皐月賞におけるハードバージの福永騎手やアローバンガードの柴田人騎手などは、見ようによっては危険と紙一重、だが素晴らしいプロの騎乗ぶりだった。あれも、たまたま接触する馬がいなかったから名騎乗になったわけで、何か事が起きていたらアウトだったということ。
もちろん「ここは大丈夫」という一流騎手なりの判断力と確信があったから、彼らはそうした騎乗をしたわけで、若手の粗暴な騎乗と同列に並べてはいけないのだが、つまりはそんな紙一重の判断の上に競馬が成り立っているのだから、騎手から思い切りの良さを奪うようなことになったら、それはそれで憂慮すべきだと思う。
何やらとりとめがなくなってしまったが、現時点で書けるのはここまで。引き続きコネクションを頼って探ってもらっているので、何か分かったらまたここで書いてみたい。

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