押入の奥から古いPCが出てきた。9801、俺が初めて買ったパソコンだ。
茶の間に持ってきて部屋の隅に置いていじってみるとちゃんと動くようだ。残念なのはディスプレイがないので代用で繋いだ新しい液晶のディスプレイとの相性の悪さだ。映ることは映るのだが、フルスクリーンではなく、左上の方に640×400分だけ占拠してちんまりと画面が表示されている。まあ、字はくっきりしているので文句はない。
早速ベーシックでも打ち込んでみるか、と思っているとそこに来客が。
セールスマンだった。二人組で、片方は痩せた小柄な若い男で誠実そうな顔立ち、有名人で言えば恵俊彰似と言ったところか。もう一人は浅黒い肌のパンチパーマ、厚い唇の中年男で営業スマイルが似合わないやさぐれ面。有名かどうかは分からないが、コミックビームの奥村勝彦編集長(
参考画像)がパンチだった頃の顔を思い浮かべていただければほぼ間違いない。
話を聞くとパソコンを売りに来たという。ゲームもこれからはPCの時代ですよ、などという触れ込みだ。
俺はイラネ、と言うが、母親が話くらいは、と言いだしたのでまあ話くらいならと言うことに。
厚かましくも上がり込むセールスマン。茶の間にあった先ほどの98の画面を見ながら、ホンジャマカ恵が「小さな文字ですねえ」などという。適当にお茶を濁す。
早速売り込みが始まった。やっぱりパソコンは最新式に限る、と言うようなことをなめらかに言い立てるホンジャマカ恵。奥村はニコニコと気味の悪い笑顔を浮かべているだけだ。
「こんな古いパソコンを使っているようでは時代に置いて行かれてしまいますよ」
使ってねえよ。
パンフレットを取り出すホンジャマカ。タワー型のPCの写真に、スーパーのチラシのようにびっくり吹き出しのような囲いが添えられ200,000と大書きされている。何とも購買意欲をかき立てないパンフレットだ。
「とにかくまずはお買いあげいただきたいですね。ではこちらの契約書の方にサインを……」
いきなりそれかよ。ちょっと待てっての。
「このパソコン、中身ちゃんとついてくるんですか?ちゃんと説明してもらえないとケースだけで20万かもって思っちゃうんですけど?CPUはなに?そもそも入ってます?グラボはなに?」
もうとっくに買う気など無い、やや切れかかった俺は冷めた声で言い放つ。
「パソコン売るならスペックくらい説明するのが普通でしょ?常識あるの、あんたら」
奥村の顔から笑みが消える。こちらを睨み付けた。俺は勝ち誇ったように奥村に向き直る。
「あんた、それが営業マンの態度?あんたらセールスマンの基本がなってないね!いや、詐欺師にしても出来が悪すぎる!」
先ほどと一転しヒートアップする俺。奥村も立ち上がる。いつの間にか服装までいかにもやくざ風の派手な背広だ。
もう俺は電話に向かい、通報を始めている。受話器の向こうでは受付のお姉ちゃんがのんびりした声で応対している。
ここでご飯の炊けるいい匂いがしてきて目が覚めた。
夢オチ。と言うか今日の日記は夢日記でした〜。
古いPC、しかも9801が出てくるのは、絶対に
manzo氏のブログで8801(多分)を落札して昔作った音楽を〜と言う
記事を読んだ影響だな……。
俺も88から入ったクチだ。中学校時代に、科学部の活動の一環としてパソコン室の88に触ったのが今パソヲタになってるそもそもきっかけだった。夏休みの部活動でなぜか宇宙戦艦ヤマトの上映会を始めるような不思議な科学部だったので、パソコン室で最新のテクノロジーに触れるのは以下にも科学部らしい活動の一つだったような気が今はする。
既に黄ばんだ88で、ファミリーベーシックで基礎を学んだプログラムを組んでいる後ろでは教師達がPCに向かい、遥かなるオーガスタに励む。そんな放課後の一幕。同じ部屋に既に9801もあった。教師達が遊んでるのはそれ。なので俺の歳を88で考えるなよ。

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