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第2話 逆転ブレンド(126)
7月16日 午後13時12分 地方裁判所被告人第2控え室
成歩堂とゴドーが休憩のため控え室に戻ると、そこには王泥喜たちが待っていた。
「なるほどさん!やりました!無罪ですよ!」
王泥喜はかなり盛り上がっている。そう言えば、同時進行で王泥喜の初法廷が進行していたがすっかり忘れていた。こちらもそれくらいに余裕のない状況だった。
「やったじゃないか。さすが、ぼくが見込んだだけのことはあるね」
白々しいことを言う成歩堂。一緒に控え室にいた糸鋸、茜とマコは御剣の控え室に行くと言い、部屋を出て行った。3人を見送った王泥喜が成歩堂に尋ねる。
「そっちはどうです?」
「ぼくが真犯人だと思う人物が出てくるところだよ。いよいよって感じだね」
「そっちも無罪判決は確実ですね!」
力強く言う王泥喜だが。
「どうだろう……。どんな証言が飛び出すのか予想もつかないし……、正直、真相はまだぜんぜんわからないんだ」
休憩前に御剣が言っていた、入れ替わりの真相、そして見え見えの毒コーヒーをためらいもなく飲み干した理由……。この事件にはまだ、足りないピースがありそうだ。
とにかく今は落ち着いて情報をまとめてみよう。そう思ったその時。
「弁護士さぁん!どういうことなのこれぇ」
どう考えても落ち着かせてはくれそうもない二人が入ってきた。ナミエと波野のなみなみコンビだ。
(ややこしいのが来たなぁ。でも……)
「お二人のくれた情報のおかげで、真相に近づくことができましたよ。あれがなかったら、きっとあのガールフレンドの嘘の自白を崩せませんでした」
一応、嘘偽りのない本心だった。
「えへへ、ほめられちった……。って、それだけどさ。……やっぱり、キョージが犯人ってこと……だよね」
嬉しそうにしていたナミエだが、すぐに表情を曇らせた。
「それはまだわかりません。しかし、ぼくはその可能性が高いと考えています」
「……やっぱり……あたしのせい……なのかな」
「え……。何か、動機につながりそうなことを知ってるんですか!?」
身を乗り出す成歩堂。ナミエはおずおずという。
「だってぇ。あたし……キョージからキョーイチに乗り換えたし!……そのことを恨みに思ってぇ……」
静まり返る控え室。
(恐ろしいことに、全くその可能性がないわけでもないんだよな……)
「とにかく。ぼくには鏡二さんについての情報が必要です。知っていることを教えてください」
「うん、いいよ。……でもあたし釣り好きってわけでもないし、キョージとは逆ナンしてからもお店で会うのがほとんどで……。あとはバイトが休みの日に大学の前で待ちあわせて、おしゃべりしながら歩くくらいだったなぁ。それで、すぐにキョーイチに乗り換えちゃったし」
「あまり詳しくはない、と?……それでもかまいません。今は些細なことでも情報がほしいんです。どんな情報が役に立つかわかりません。意外な情報が役に立つこともあります」
「そうだよなぁ。ナミエのデート日記まで役に立ってたもんなぁ」
波野が口を挟んできた。
「うん。ちょっと恥ずかしかったけど」
「むしろあれを読まされる方がかなり恥ずかしいと思います……。と、とにかく。大学で待ち合わせたという話でしたが、鏡二さんはどこの大学に?」
「真雲天大学だったよ」
とても有名な大学だ。
「雲くらい見上げるような成績でないと入れない一流大学ですね。確か鏡一さんは……」
「俺と同じ眞倫大学っすね。いっちゃあなんスけど、水平線ぎりぎりの成績でも入れる大学ですよ」
双子の兄弟の割に、随分と差がついたものだ。
(証人・栖潟美羅とは弟の方が同じ大学か……。やっぱり、証人は被害者のガールフレンドじゃなくて弟のガールフレンドである可能性が高いな)
「双子なのになにもかも真逆ですね……」
「確かにそうだったなぁ。キョージはタバコも吸わないし、えっちじゃなかったし、まじめだったよ。や、や、や、や、こういう言い方するとそっちに乗り換えたあたしまでえっちっぽいけど」
(それを認める気はないんだ……。証拠品もあるんだけどなぁ……)
・つきつける
・やめておく
つづく

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