取説 はじめから この章の始めから このパートの始めから この前のシーンから
第3話 あるまじき逆転(37)
同日 某時刻 或真敷奇術団・宿舎
ポランと共に宿舎の玄関をくぐると、そこには或真敷チャランと思しき深いブルーの衣装を纏った若い男がうろついていた。
「お、アンタがみぬきの弁護士か?……どんなオッサンかと思ってたけど、若いんだなー」
そう言う彼も、かなり若いようだ。高校生くらいだろうか。中学生かも知れない。
「もうポランから話は聞いてるんだろ?おいら、或真敷チャラン。ポランの相棒さ!」
(おいらときたか……!)
王泥喜も負けてはいられない。それに、オッサンくさく見える王泥喜にとってオッサン呼ばわりは特に気になるところだ。若さもアピールすることにした。
「王泥喜法介ですッ!22歳ですッ!」
「ありゃ。俺より若いのか!威勢もいいなぁ」
驚くチャランだが、王泥喜も驚いた。中高校生ではなく自分より年上だそうだ。
ポランがそっと耳打ちする。
「見た目はこんなですけど、チャランって27歳なんですよ」
(う、嘘だろ……)
どう考えても、見た目ではこっちが年上。王泥喜はとても複雑な気持ちになった。しかし、見た目がガキっぽいことは手品にも証言にも関係はないだろう。とにかく、話を聞こう。
聞き込み項目
・事件のこと
・チャランのこと
・事件のこと
「あの、事件について聞きたいんですけど……」
王泥喜が言いかけたところにチャランは口を挟む。
「おっと!そうはいかねーぜ!おいら、約束しちまったからな。赤い弁護士には余計なことを言わないってさ」
どうやら口止めされているらしい。これでは事件に関わる話は出来そうにない。しかし、その辺は明日の証言でたっぷりと聞けるはずだ。ひとまず、我慢しよう。
「いやー。おいら、夢だったんだよなぁ。取調室でさ、カツ丼出されて『お前のクニのおっかさんが泣いてるぜ』みたいな。色々、違ったけどさ」
取り調べされるのが夢だったのだろうか。その夢を叶えるために犯罪に走らないか心配した方がいいのだろうか。
「でも、取り調べの雰囲気だけでも味わえたぜ。それに、取り調べの刑事が美人のねえちゃんでさ。むさ苦しい刑事の髪の毛掴まれてライト浴びせられるのとはちょっと違ったけど、ああいうけだるくてセクシーな取り調べも悪くないぜ」
鼻の下を伸ばすチャラン。ポランは何か言いたげな顔をしている。
「思い出がわりにさ、ちょっとぶっかけてもらったよ。ハイドロキシアセトアニリドホスホモノエステラーゼ溶液!」
取り調べ担当の刑事は茜だったようだ。ハイドロキシアセトアニリドホスホモノエステラーゼ溶液……かけられたらどうなるのか、少し王泥喜も気になる。
「かけられて……どうでした?その……なんとか溶液」
「ん?ああ。なんか、反応無しだったぜ。何を調べるクスリなんだろうな。あれ」
とりあえず、無害のようだ。その薬品に若返ったりする効果があったりするわけでもないらしい。やはり、このキャラは素のチャランのようだ。
つづく

0