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第3話 あるまじき逆転(298)
宝月捜査官からもらえる情報はこのくらいだろうか。
「それで、どうよ。牙琉検事はギャフンと言わせられそう?」
王泥喜はその言葉に考え込む。
「うーん……微妙ですね……。真犯人がいるとして、その影が全く見えてきませんし」
「ま、さっき見せられた証拠品も、こんなの何に使うのって言うようなパンチ力の欠片もなさそうな物ばかりだったもんね」
「そこまで弱そうですか」
王泥喜も何となく分かってはいたが、客観的な意見として受け止める。
「ま、そんなところはあんたにはぴったりだと思うけど」
「そこまで弱そうですか」
王泥喜は少し納得がいかない。それはともかくとしてだ。
「やっぱり真犯人を捜さなきゃ駄目でしょ」
「でも、どうやって……?」
「そうねえ。カガク的ではないけど、動機の線から探るのが定石かしら」
「動機……」
「たとえば、荒っぽい被害者にボコボコにされて恨んでたとか、立場的に被害者が目の上のたんこぶだったとか」
そんな人物は果たしているのだろうか。王泥喜には、心当たりがあるような気がした。
「それ、どっちもバランさんですし」
確かに心当たりはあったが、これでは駄目だ。
「……今回は牙琉検事をギャフンと言わせるの、諦めよっか」
しょげる宝月捜査官。
「俺の方はそうも行かないんですけど」
八方塞がりか。そう思った時、おずおずとみぬきが言った。
「パパの部屋……見てみます?」
同日某時刻 宿舎・座長事務室
事務室には、いかにも堂々と挙動不審な人物が待ち受けていた。
「ついに……あなたはここにたどり着いたわけですが。今の気持ちを是非一言!」
ICレコーダーをつきつけられた。
「え。お、俺ですか!……そうですね、一言で言い表すなら……あんた誰?」
とても正直な、今の気持ちを吐露した。
「あ、それなんですけど。私ですけれども。ワタシ、インタビューする側であってインタビューされるのは……ってゆう!」
幸い、みぬきはその人物に面識があるようだ。
「お久しぶりです、葉見垣さん」
「知り合いですか」
「よく取材に来てた記者さんですよ」
「あ。ワタシなんですけども。葉見垣正太郎というケチなニュース屋で!」
名刺を受け取った。
「これはご丁寧にどうも。……あれ、名刺はどこだろう」
ポケットをまさぐり出す王泥喜。悲しいくらいに何も入っていない。ハミガキは言う。
「いやいや、もうあなたのことは存じ上げてますよ。王泥喜法介さん……あの成歩堂法律事務所の若きホープ、大声で証人を威圧し黙らせて無罪判決をもぎ取る……ってゆう!」
「いやいや!そんなことしませんから!」
慌てた王泥喜はついつい声が大きくなってしまう。
「そしてワタシ。大声に威圧され黙らされてネクタイをもぎ取る……てゆう!」
王泥喜の大声に驚いたのか、ハミガキは自分をネクタイで締め上げ始めた。
被害者の知り合いなら、被害者について知っていることもあるだろう。話を聞いてみよう。
聞き込み項目
・ハミガキについて
・今回の事件
つづく

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