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第3話 あるまじき逆転(410)
尋問中
「
その後、医者を呼んで死体を見せ……」
病院内を一人で回っていた当直医を、バランは都合よく捕まえることができた。だがその都合良さに不自然さを感じざるを得ない。その辺、少し突っ込んで聞いてみよう。
「待った!被告人によると医者は病室のすぐ近くで見つかったという話でしたが……確かですか?」
「その通りッス。急患をみ終わって被害者の病室に向かっていたときに鉢合わせたッス」
「異常にいいタイミングですよね。本当に偶然だったんでしょうか?」
「はっはっはっはっは。偶然に決まってるッス」
この刑事は何も考えていない!
「偶然じゃないって言うなら……是非、証拠を見せてほしいね」
そしてこの検事は男のことで深く考えたりはしないようだ。
(確かに、そんな証拠はない……。でも、そもそもなんなんだ、この騙されやすそうな人たちは)
「なるほどさんはお人好しそうに見えてそうでもないですもんね」
「えっ」
またも心の声に返事をされたが、そんなことよりその内容が重要だ。だが、そこを問い詰める隙は与えられなかった。
「まあ、被告人はかなりの悪運の持ち主ッス。それ以上の悪運を持つ弁護士に出会っちまったのが運の尽きッスな」
「こうして被告人は医者という自分の潔白を証明する人物を得たわけさ」
「そういうことッス。被告人はその医者を……」
「
点滴を調べるようにそそのかしたッス」
「待った!そそのした……?昨日の審理ではなかった話ですね」
成歩堂の指摘に裁判長は頷く。
「ですな。医者が自分で点滴を調べたのかと思っていました」
成歩堂も同様だ。であるならば、だ。
「被告人が医者に点滴を調べさせたことを言わなかったのは、あくまで点滴を調べたのは第三者である医者であり、自分は関わっていないというスタンスの方が自分の身が安全だからでしょうね。幸い、医者も駆けつけてきた警察に被告人による誘導のことは言わなかった。しかし、なぜ医者は被告人の発案だったことを言わなかったのでしょう?」
「さあ?黙っていれば手柄を横取りできると思ったんじゃないかな」
牙琉検事も意見を述べたが、それに糸鋸刑事が噛みついた。
「アンタら!さっきから聞いていれば、目立ちたがりの基準で話してばかりッス!自分のように奥ゆかしく、いつも輝ききれない人間だって巷には溢れかえってるッス!大洪水ッス!」
「その通りです。私もそれを言おうと思っていました」
だがしかし。そう言って頷いた裁判長は頭が眩しく輝いている。
「それじゃあ、慎ましく陰日向で人に踏まれ続ける刑事君の意見も聞かせてもらおうか」
牙琉検事の言葉を受け、糸鋸刑事の語りが始まる……。
「自分も随分と沢山の事件を見てきたッス」
(う……。なんか、話が長くなる予感が。異議を挟んで止めた方がいいかも……)
・異議あり!
・黙って見守る
つづく
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