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第3話 あるまじき逆転(419)
被害者はバランを挑発してまでも銃を撃たせようとした……。糸鋸刑事はそう考えているようだが、そんなに生易しくは無い。
「異議あり!被害者が本当に被告人による幕引きを望んでいたなら……用意されていたのが銃であったのは不自然です!」
「どこがッス……?」
「知りませんでしたか?被告人は……銃恐怖症なんです。銃を手に取るだけで手が震え、引き金を引こうとすると気が遠くなる。おもちゃの銃にさえパニックを起こす。そんな人が銃を撃てるわけがない!」
びしっと決める成歩堂。糸鋸刑事はここで大きく仰け反り……いや、全く落ち着いている。不敵に笑みさえ浮かべているではないか。
「……さすがあんたッス!……被告人相手には人がいいッスな」
「……え?」
「銃恐怖症で、銃は撃てない。そんな話なら取り調べでも何度か出たッス。もちろん、誰も信じなかったッスがね」
「何せ、散々嘘をついてザック氏に罪を擦りつけようとした男の発言だからね。軽々に信用しないさ。こんな演技でなんとでもなることは特に、ね。昨日の一幕だって、芝居じゃないととどうやって言い切れるんだい?」
「一度逃げおおせたのに、芝居のためにむざむざ戻ってきたというんですか!」
「そのくらいやった方が、こうしてお人好しの弁護士が騙されるってことさ。いっそ、昨日おもちゃの銃を撃った警備員も被告人の共犯者じゃないのかな。そうでなきゃ、こんなところにおもちゃの銃なんかもってこないさ」
常識に囚われた見解を示す牙琉検事。
(あんたは奴のことを知らなすぎる……!)
しかし、バランの銃恐怖症を証明することは困難なのは確かだ。更に原灰が常識を無視した変人であることを証明するのは多分簡単だが面倒であろう。だが、そんなことをする必要はない。
「問題になるのは被告人の銃恐怖症が事実かどうかではありません。被害者が銃恐怖症のことを知っていたかどうかです。ぼくは銃恐怖症のことをザックさんから聞きました。ザックさんが知っていたということは、被害者の耳にも届いていた可能性は十分にあります。そうであったなら、確実な死を望む被害者が銃恐怖症かも知れない被告人に銃を撃たせるような不確実な方法を選ぶでしょうか?」
「被害者がそのことを知っていたか……。被告人の銃恐怖症が本当かどうかくらいに証明は難しいだろうね。ただ、少なくともザック氏は被告人の銃恐怖症を確かに認識はしていたようだね。まだ彼が被告人だったとき、二人の容疑者のうち一人は銃恐怖症だということも自分の容疑に大きく影響すると感じていたそうだし。被害者が知っていた可能性は十分にあったといえるかな」
「しかし、それなら被害者はなぜ銃による幕引きを二人に命じたのでしょうか?」
裁判長が意見を求めてきた。応じたのは牙琉検事。
「そう、問題はそれだね。その事実は被害者が銃恐怖症のことを知らなかったことを示しているのさ」
「ふむう。どうですかな弁護人」
「弁護側の主張はあくまでも銃恐怖症のことは知っていた。そして、その上でいわばできるはずもない無理難題を押しつけたのです」
「へえ。なぜだい?」
(順を追って考えてきた結果、ここに辿り着いた……。ならば、ここからも素直に考えればいい)
つまり、これから考えるところである。
ぼくの答えを示そう
・バランに順番が回らないはずだった
・バランに殺される気はなかった
・バランを苦しめるためだった
成歩堂の答えは決まった。だが一つはっきりさせておいた方がいいことがある。
「その前に。全く同じ手紙を受け取ったザックさんは被害者を殺しませんでした。いや、殺さずに済んだと言うべきでしょうか。……その理由はこの証拠品です」
ぼくの答えを示そう
つづく
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