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第3話 あるまじき逆転(427)
みぬきの発言はスルーして話は進む。
「被告人は昨日、驚異の大魔術で無実の少女に濡れ衣を着せたことが明らかになったのでしたな」
裁判長に問いかけられた牙琉検事はエアギターを披露した後格好付けて言う。
「そう。昨日そこのオデコ君が証明してくれたように、被告人はいい年こいていたいけな少女に罪を着せようとした卑劣でゲスな男さ」
(真犯人をあぶり出すためとは言え、犯人じゃないと分かってて起訴した検事がポーズまで決めながらよく言うよ)
そう思う王泥喜だが、そうは言わない。あぶり出されたバランが真犯人では、今日は困るからである。代わりに言ってやる。
「卑劣でゲスなろくでなしだろうが、犯人かどうかには関係ありません!」
「卑劣でゲスであるということについては見解が一致しているようですね」
その点は、覆しようのない事実であろう。
「それじゃ一つ聞くけどさ。昨日の審理で、被告人は事件現場で証拠隠滅を計った挙げ句に事件で一番傷ついている被害者の娘に罪を着せようとしたわけだけど、犯人以外の何者ならそんなヒドいことをするっていうんだい?」
(そんな被害者の娘をノリノリで起訴した検事がよく言うよ)
もちろん、これも口には出さない。口に出したらここに居合わせた牙琉検事のファンに酷い目に遭わされるであろう。
「しかし、起訴したのは牙琉検事では……」
だが裁判長は言った。
「今日はそこまでして着せたかった犯行がやはり被告人の仕業だったことを証明するよ。そして、この真実を……歪められた真実の刃から逃れた少女に捧げよう」
牙琉検事は裁判長の発言は聞かなかったことにしたようである。
「……なんか、お兄さんみたいなことを言いますね」
みぬきは言う。とてもどうでもいい指摘だった。が。
「ぐああっ、し、しまった!ぼくとしたことが!」
頭を抱える牙琉検事。
「やりました!早速コンセントレーションを乱してやりましたよ!すごいでしょ!」
「8割自滅だと思います」
とは言うものの。
(でも……みぬきさんがいるから張り切っちゃったところはあるのかな)
そんな牙琉検事につけいる策を練り始めたところで牙琉検事も立ち直ったようだ。
「大丈夫ですかな、牙琉検事」
裁判長の呼びかけに牙琉検事は元の涼やかな表情を取り繕いながら答える。
「あ、ああ。なんとかね。じゃあ、早速最初の証人に事件についてまとめてもらおうか」
牙琉検事が張り切っちゃったのは、みぬきだけではなくこの証人のせいでもあるのかも知れない……。
つづく
まだ一部適当につき完全版はFLASHで。

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