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第3話 あるまじき逆転(441)
尋問中
「
お風呂から出たチャラン君が22:22に被告人に電話」
「待った!その時間は被告人には予測できなかったはずですよね」
被告人バランは自分が風呂から上がった後、その事を知らせにチャランの部屋に顔を出した。その時点でチャランはまだお色気DVD鑑賞中で、いつそれが終わるのかは正確には予測不可能だったはずだ。
「ええ、そうね。何せ部屋に声を掛けに行ったらいなくて、それでメールを打ったくらいだから。いつお風呂に入ったのか知らなきゃ、いつ出るかなんてわかりゃしないでしょ」
と、そこに牙琉検事が口を挟んできた。
「でも、チャラン証人は早風呂だそうだね。お風呂に入ってるのが分かれば、割とすぐに出て来るというのは想像できたんじゃないかな?」
「んー。でも、その夜は特別だったはずですよ」
宝月捜査官はそう答えるとにまっと笑みを浮かべた。
「え?どういうことですか」
その特別だった事情に王泥喜も特に心当たりはないので問いかけてみた。だが宝月捜査官の答えは王泥喜に心当たりがないとは言わせないものだった。
「知らないとはいわせないわよ。あんたが持ち出したんじゃないの、あのお色気DVDは。お風呂の前にあんなものを見たならそりゃあ……」
「異議あり!」
王泥喜が納得しかけるのと牙琉検事が先程まで見せていた余裕を吹っ飛ばして異議を挟んできたのは同時であった。
「いやいや、牙琉検事。自分の証人の発言に異議を挟んでどうするんですか」
裁判長も驚いたようだが、それどころではない。
「そりゃあ異議も挟むさ。ぼくのステージであまり生々しい話をしないでおくれよ」
今回は王泥喜ももっとやれとは思わない。
「そうですよ。もうチャランさんのプライベートのことは放っておいてあげましょうよ」
(今のところ重要な話でもないしな)
重要であってたまるか、と言ったところである。
「これは女としての使命だと思うワケよ。こんなおもしろい話、知っちゃった以上……喋らないと!」
「あんな困った証人のことなんてどうでもいいじゃないか」
意見を戦わせる宝月捜査官と牙琉検事だが。
(二人ともひどいな)
そして、とてもどうでも良かった。
「それで結局、お風呂の前にDVDを見るとどうなるんです?」
みぬきがとてもピュアな目を向けながら王泥喜に問いかける。
(知ってて聞いてるんだと思うけど)
そう思ったので、こう返す。
「後で牙琉検事に聞くといいと思います」
「異議あり!」
あちらにも聞こえていたようである。
「異議を認めます。そろそろ証言に戻るように」
そういう異議ではないと思うが、まあいいだろう。お遊びはこれまでだ。いやむしろ、後のお楽しみなのかも知れない。
つづく

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