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第3話 あるまじき逆転(451)
尋問中
「
副座長には、今しかチャンスがないのよ!」
今しかない理由は先程聞いた通り、ザックが座長の座をみぬきに譲るつもりだったからである。だが、なぜそれをポランが知っているのか。そして。
「待った!……ポランさんがナンバーツーになれるという、その根拠のない自信はどこから来るんですか」
本気で言っていたかどうかはともかくみんなの前で堂々と言っていたんだろうと考えれば想像できるポランがそれを知っていた理由より、こちらを優先することにした。
「失礼ね。根拠はあるわ。みぬちゃんがトップになるということは一座は華やかでラブリーに生まれ変わろうとしているのよ。ならば、ナンバーツーは私に決まりよ」
(どこが根拠だ……)
崩しやすいのはこっちだと思って掘り下げたはいいが、そもそもバランの動機に関係ないし証言という扱いにもなっていないポランの妄言を崩したところで何にもならないことに今更気付いた。話を切り上げたいところだが、まだポランには言いたいことがあるようである。
「それに。みぬちゃんは優しい子ですもの。ここまで一座を引っ張ってきた副座長に上から直接ものなんて言えないわ。ワンクッションかまそうとするはずよ、私というクッションを!」
(超高反発クッションだ)
そして、みぬきに対するその信用というか信仰はどこからきているのだろうか。
「で、どうなんですみぬきさん。トップに立ったとして、バランさんに上からものなんてやっぱり言えませんか」
本人に確認してみた。
「うーん。言えるんじゃないですか?だって今がそうですし」
(いきなり崩れてるじゃん、根拠)
やはり、ただの妄言として流しておくのが良さそうである。
「……結局座員の座布団として敷かれるとしても。興業権を振りかざすと以上は一座の行く先は座長にしか決められないの」
つまり、ナンバーツーになどなったところで何の意味も無い、二位じゃダメなのである。何せ、今が既に二位なのだから。牙琉検事は言う。
「鞭で叩かれ手綱で操られても馬車を先頭で動かすのは馬さ。そのくらいの絶対的権力を得られるわけだね」
「それ……権力があるように思えないですけど」
どう考えても御者の尻に敷かれてると思う王泥喜であった。
「つまり。動機は一座を牛耳るために座長という絶対的地位が欲しかった……と言うわけですな」
裁判長はそうまとめた。そして、ポランは言う。
証言追加
座長だけが持つ興行権なしでは、何にもできないからね。
つづく

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