諸君 私は音楽が大好きだ
交響曲が好きだ
協奏曲が好きだ
間奏曲が好きだ
夜想曲が好きだ
奏鳴曲が好きだ
輪舞曲が好きだ
独奏が好きだ
唱曲が好きだ
平原で 街道で
自宅で ソロで
合奏で 指揮で
観賞で リハで
ゲネで 会場で
この地上で行われるありとあらゆる音楽活動が大好きだ
一列にならべたトランペットの斉奏が轟音と共に弦の音を吹き飛ばすのが好きだ
ばらばらになった奏者らが指揮棒一本でまとまった時など心がおどる
ベートーベンのソナタを必死に奏る奏者が好きだ
高音を弾き熱情籠ったヴァイオリンを打破るような金管は倒した時など胸がすくような気持ちだった
テンポをそろえたホルンのパートが曲のテンポを決めるのが好きだ
恐慌状態の新人が既に限界に達した音量をさらに上げようとする様など感動すら覚える
原典主義の奏者達を吊るし上げてモダン楽器に持ち替えさせる様などはもうたまらない
泣き叫ぶオーボエ奏者が私の振り下ろした手の平を待ちながら顔を真っ赤にさせ、失神しそうになるのも最高だ
哀れな学生達が雑多な実力で健気にも立ち上がってきたのを「それはない」と一言言い放った時など絶頂すら覚える
ベテランの奏者にダメ出しされるのが好きだ
必死に守るはずだった歴史が蹂躙され皆がモダン楽器に持ち替える様はとてもとても悲しいものだ
ドイツの歴史に押し潰されて感性を逆回転されるのが好きだ
イタリアオペラの深さに追い込まれあまりの出来に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ
諸君 私は音楽を天国の様な音楽を望んでいる
諸君 私に付き従う音楽仲間諸君
君達は一体何を望んでいる?
更なる発展を望むか?
情け容赦のない糞の様な堕落を望むか?
切磋琢磨の限りを尽くし三千世界の音を望む嵐の様な勉学を望むか?
『ブラーヴォ! ブラーヴォ! ブラーヴォ!』
よろしい ならば合奏だ
我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする指揮者だ
だがこの暗い闇の底で幾時間もの間勉学に堪え続けてきた我々にただの音楽ではもはや足りない!!
大喝采を!!
唯我独尊の大喝采を!!
我らはわずかに百人 千人に満たぬ雑兵に過ぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我ならば我らは諸君と私で総力100万に近い楽団となる
我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう
耳をつかんで引きずり出しその心に染み付けさせよう
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる
百人足らずの音楽家の合奏で
世界を燃やし尽くしてやる
「全国の音楽家へ」
目標地上の全ての人類!!
第一次クラシック音楽普及作戦 状況を開始せよ

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