いつもは見ないザ・ベストハウスをグールド目的で見てみた。
分からない人のために…グレン・グールドは20世紀の音楽家で、ピアノによる独特の解釈と奏法、そして筆舌に表せない感性により評判を呼んだ人物。自身をピアニストという狭い括りにされることを嫌い、音楽家と自称する。どれだけ凄い人物かというと、CDの売り上げが当時でも爆発的人気のルイ・アームストロングを抜き、NASAの外宇宙探査機に地球外知的生命体に向けられた情報の中に彼の演奏するバッハのレコードが搭載されたといえば充分かもしれない。
彼は音楽家ではあるが演奏家とは言い難く、楽譜を改竄し(装飾音符を改変・アルペジオの逆奏等)、歌いながらピアノを弾き、指揮者を無視してオーケストラを指揮する素振りを見せたりと、はっきり言ってしまえば音楽的協調性に欠ける人間だとすら言えてしまう(自閉症だったという説すらある)。
音楽は個人で楽しむものであり、演奏はレコードで聴けばいい、という姿勢も批判が多い人である。
しかして例えばゴルトベルグ変奏曲は彼によって発掘されたようなものであり、スタイルに目をつぶってしまえば、彼の演奏は音楽を本当に楽しんでいる姿そのものであることから素晴らしい音楽家であることは誰も否定しようがない。
特に演奏する姿は本当に楽しげであると同時に心を打つもので、演奏しながらメロディーを諳じる、空いた手でリズムを感じることは自分にも理解出来る行為だと感じる。
賛否の分かれる人物だと思うけれども、是非聴いてもらいたい。

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