仕事で楽譜の読み方…とは言ってもドレミとか四分音符だとかいう話ではなく、更なる楽譜の読み方について教える機会があった。
よくよく考えてみるとある程度以上の範囲でしかあまり書物として見掛けない。ここで実践的なオーケストラ奏者としての楽譜の読み方について項目を挙げて書き連ねたいと思う。
・テンポ
楽曲のテンポは一定ではない。たとえ同じ譜面、同じ奏者及び楽団若しくは指揮者でも全く同一になるとは限らない。
速度標語にテンポを決定する力があるという考えは無くした方がいい。ある程度の憶測はつけども、速度標語は発想標語の一つでしかないのである。
♪=72などと指示をされている場合、一拍一拍がそのテンポ通りに動くと考えることは危険である。一小節、ないしは楽節などの中でその数値が賄えればいいわけであり、拍の速度は加減される。これこそが『テンポの中に…intempo』であり、『テンポにのっとった…ontempo』ではないのである。
・発想標語
我々音楽家は、音符からその内容を読み取らなければならない。しかし、作曲者が誰にも分かるように言語化して伝えようとしている内容はより謙虚に受け止めなければならない。
音符以外の表現、それが発想標語である。
しかし、その言語を日本語に無理に訳そうと思ってはならない。必ずしもイコールではないからである。
アレグロの意味は?快活?違う。暑いの意味は?と聞かれて我々は答え得るであろうか。言わずもがなである。暑いは暑い。アレグロはアレグロなのである。単語に含まれた深層表現を我々は理解せねばなるまい。
・強弱記号
端的に言えば、強弱記号には二種類存在する。即ち独奏的であるか伴奏的であるか。チャイコフスキーの交響曲第五番二楽章冒頭のホルンソロを実際ピアノで吹かれれば指揮者は頭をかきむしり檄口する、とは恩師ファーカス博士による。
文字によるクレッシェンドと記号によるそれとの違いを考えなければならない。ベートーベンによくみられるが、記号のクレッシェンドの先がクレッシェンド前よりも小さい記号になっている場合もある。
また、強弱記号は音量だけを左右するとは限らないことを付け加える。ファルテとピアノは英語ではハード、ソフトとそれぞれ訳される場合があることを考慮しなければならない。
次回はアートゥキレーション、リズム、楽器の持ち替えと調判定、楽譜の書き込みについて述べる

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