前回で、バルブの組合せによるピッチの不正確さを述べた。
本論である、『ホルンの種々の管長の特徴』を述べよう。
ホルンはFの調子を持つ、と前回に述べた。
しかしおかしい事に、多くの奏者は、実際にはそのFの調子の管を使用する頻度を少なくしている。
どういうことか?
実はホルンにはもう一つ、B♭(ピアノのシ♭)の調子を持つ種類があり、多くの奏者は、メインでそちらを使っている為である。
Fの管長は、実に管楽器の中で最長。バルブを全て押さえれば、実に5メートル近くにもなる。
管の長さから豊かな音色を得たものの、非常に演奏の難しい楽器となってしまった。非常に使用頻度の高い音域、実に記譜上の第三間線のドより上の音はほとんど、何にもボタンの操作をせずとも奏せてしまう。
つまり、音を外しやすいのだ。
はっきりいってリスクは高い…まぁもちろんこれは言い訳に過ぎず、その不安定な音域こそがホルンの美しい音域の一つであるのだが。
ともあれ、今のホルンの世界はその素晴らしい音色よりも、音の成功率を選んだ…つまり、音の高いB♭の管長にすることにより、音の成功率の獲得をしたわけだ。
これがB♭ホルンの誕生である。
だが、F管に欠点があったように、B♭管も完璧ではなかった。
特定の音にピッチの不満があり、低音域では音すら出ない。
その欠点を補う為に、F管を、F管の一から三番バルブを付け加えたセミダブル、フルダブルホルンが生まれた。
とりあえずは、それで現代に致る。
今の業界、F管よりもB♭管を使用する事が多い。
しかし、ご理解の通り、本当のホルンの音色は元来のF管のそれであるといえ、B♭では音に深みが無い。
熟練した奏者はB♭管でもF管並の豊かな音色を奏でられるが、そういった奏者をして、本来の音色を求め、F管を奏する。
個人的に、メインにF管、そして『B♭管を使わなければならない場合に』オプションとしてB♭管を奏するべきだと考え、実践している。
これらの管の特徴と役割を、ホルン奏者はもっと深く考察するべきである。

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