ミクシィは二年、ブログは四年はやっているので記事も大量になってきたのです。時々は昔を思い出して、恥ずかしさに身悶えさせたりしながら再載してみる。まぁ恥ずかしい。
今回は先日後輩にお勧めの曲としてあげたカリンニコフの交響曲第一番についての記事。悪い頭で考えた記事。
交響曲のススメ〜第三回 カリンニコフの交響曲第一番〜
前回の続きである。
不遇の作曲家、カリンニコフ。
彼の初めての交響曲が完成したのは三十を過ぎようとしていたころであった。
彼の『不遇』と言われる人生のくだりはここから始まる。
彼の初めての交響曲は極めて斬新のように感じられる。
それまでにあまり用いらないスタイル、技法を用いていたことが大きいが、彼の故郷、大国ロシアの自然の産物である、豊かな情緒感性はそれまでのどんなに偉大な作曲家にも劣らぬ素晴らしさであった。
一楽章から四楽章まで、一貫して幻想的な、それこそこの世のものとは思えない嘆美、優美さに満ちている。
一楽章は、満天の星の浮かぶ夜空で、唯一匹の若い馬が颯爽と駆け抜けていくかのような第二主題(イントロ、第一主題に隠された真なる主題とも)とそれを追い掛けるシンコペーション(拍を故意に半拍ずらすこと)が実に印章的。
二楽章の伴奏の重荷をその一肩に担うハープが幻想性を引き上げる。水面でただひたすら舞い続ける妖精を感じさせる。美しい。
一転して三楽章。うねり、躍動するような弦楽器の動きと柔らかなメロディーの対比。徐々に盛り上がる音楽は一旦ここで完結する…かのようにみえるが。
四楽章。一楽章の冒頭に等しく、物語の回帰を想像させるが、その物憂げなフレーズはすぐに本来の四楽章の主なフレーズ、大きな印象に変わる。
盛り上がりは止まるところをしらず、ここで初めて主な活躍を見せる金管楽器のファンファーレが感動の爆発を誘う。
全曲一貫して幻想的なイメージをぬぐえず、美しく、かつ、躍動的である。
明るさを表現するであろう部分は多いが、絶えず哀愁を帯びている(特に一楽章)。単純な明るさでないそのフレーズのカラーが、何とも言えず感動を誘う。
歴史的考察を加えるならばこの曲、元来までの作品と異なり、ホルンがメロディーを奏することが多い。
この当時、ホルンはバルブが付けられ演奏が容易になって長くない。
よほど彼がホルンの表現力、音色を好いていたかが伺える。
さて、彼が作曲したこの作品は当時のロシア作曲家らに絶賛された。
その中にはあのチャイコフスキー
※ロシア音楽家の大家中の大家。白鳥の湖、くるみ割り人形などのバレエ音楽が有名だが、全六曲の交響曲も有名。特質な性癖と不思議な男女関係。謎に包まれた死因も現代人の注目を浴びてやまない
やラフマニノフ
※ロシア音楽の大家。一際目立つ名曲として、『ピアノ協奏曲第二番(通称ラフマのピアコン)』がよく挙げられる。今のレベルの高い演奏家をもってしても、必要充分な練習期間として『個人練習五年合わせ十年、ラフマのピアコン三十年』と言われ、そのレベルの高さと名曲としての度合いが恐れられている。当時は音楽院の教授として籍を持っていたらしい
らがおり、チャイコフスキーは、彼の歌劇団の音楽監督の座を手配し、ラフマニノフは、金銭的、人間的な援助を惜しまなかったという。
また、これに前後して出会った女性と恋に落ち、結婚をする。
だが、その幸せを噛み締める間もなく、彼の体を病魔が蝕み、一年も立たぬうちにベッドから起き上がる事すら難しくなってしまう。
普段の生活もままならぬ、いつ容体が急変して…とも分からぬ身でありながら、ベッドの上で作曲活動を頻繁に行い、交響曲二番と少しばかりの短い作品を遺して、この世を去った。
病魔に蝕まれてからは文字通り立ち上がる事が出来ず、自分の作品の初演にすら立ち会えなかった。
彼の頭の中でのみ彼の音楽は鳴り続け、彼の中でのみ、それは完成していたのかもしれない。
しかしそれが作品として、実際の数々の楽器を目の当たりにして考え出された最後の作品であるという意味で、先の交響曲第一番が、彼のある種の最後の作品ではないか。
勿論二番も負けぬ劣らぬ作品である事は明言しておこう。
このように、自分は一人の作曲家の人生生い立ちその当時の状況を調べ、耳にする音楽の情報としてとり入れている。
人間ドラマの多様性、それを感じさせる音楽の表現力には感動してもし尽くせない。
…余談であるが、このカリンニコフの交響曲第一番。特に第一楽章であるが、彼の、病魔に寄る一切の活動の制限、つまり不自由化。
明るさの中に少しだけ見え続ける哀愁にもにた悲しさは、その『自由を求め、羨む気持ち』が表れているのでは、とおもう。
もっとも、彼の体を病魔が蝕み、生活を制限すらさせるのはこの曲完成の後のことであるが、ひょっとしたら体調の悪化を感じていたのではないだろうか…もちろん憶測に過ぎない。
是非この曲も聴いてもらいたい。
2005/12/3
投稿者:ミヤビ
http://wave.ap.teacup.com/hornist-miyabi/118.html

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