どちらかというと林家こん平キャラですが、笑点のメンバーならば三遊亭小遊三に憧れるオレです。
ようやく「アレキサンダー」見てきました。
期待してたけど実はハリウッド特有のヒーロー&ヒロインものだったらどうしようかという不安はあったのですが、要らぬ心配でした。
さすがオリバー・ストーン、ええもん作ってくれた!という感じです。
全般的な感想としては、戦争シーンが壮絶だったのと、衣装や舞台などの映像が綺麗だったのが嬉しかったです。
まぁ、不満がなかったわけじゃなく、3時間という尺に収めるのはムリがあったのではないかと。
三部作とかにしてくれれば伝記としてのクオリティーが上がったんじゃなかったろうかと思っています。
物語はアレクサンドロスの父フィリッポス2世の治世時代から始まります。
父の後を継いだアレクサンドロスは、ギリシア・マケドニア同盟軍を率いて多くの戦争をしますが、映画ではペルシア帝国との「ガウガメラの戦い」とインド侵攻時の戦争(たぶん「ハイダスペスの戦い」)の二つだけが描かれていました。
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特にガウガメラの戦い(BC331)では、そのときの戦術も説明されていました。
オレの手持ちの「世界戦争事典」によると、ガウガメラは現在のイラク北部アルベラ近郊であったらしいです。
そのときアレクサンドロス率いるギリシア・マケドニア同盟軍は、4万の歩兵と7000の騎兵からなっていたそうです。
対するダレイオス3世率いるペルシア帝国軍は25万の兵と15頭の象がいました。
その数、実に5倍以上!
野戦をするには圧倒的に不利です。
映画の中の説明によれば、まずアレクサンドロスの目指したところは、「ダレイオス本人を討てば、軍隊は指揮官を失い機能しなくなる」ということでした。
この
目的がハッキリとしているところが重要だと思います。
アレクサンドロス軍の戦術を実況すると、
(1) 左翼から敵の右翼を攻めると同時に、騎兵と歩兵を自軍の右翼へ広く展開し、敵の前衛の中央から左翼を惹きつけます。
(2) そうすると敵陣の中央にスペースが出来るので、その手薄となったスペースから右翼に展開した騎兵隊を敵陣奥まで突き進め、ダレイオス3世を討つ。
というものでした。
手持ちの文献によると、ペルシア帝国軍の中央に配置された象により騎兵の馬がおびえるので、中央を避けて象の後ろに回り、ペルシア軍の最後尾を襲ったとのことです。
いずれにせよ、25万もいたペルシア帝国軍の中央にスペースが出来たために、ペルシア帝国軍の陣形を崩すことができ、ダレイオス3世を敗走せしめたとのことです。
この戦争でのペルシア兵の戦死者は4万〜9万人、ギリシア・マケドニア同盟軍は500人以下となりました。
(参考文献:ジョージ・C・コーン著、鈴木主税訳,"世界戦争事典",河出書房新社)
この戦争での勝利により指導者を失ったペルシア帝国は崩壊し、アレクサンドロスは巨大都市バビロン(現イラク)を支配することになりました。
自軍を左右に展開し、敵陣の中央にスペースを作るという戦術は、上記の「ハイダスペスの戦い」でも用いられ、ギリシア・マケドニア同盟軍は大きな犠牲を負いながらも勝利を得ることができました。
このときインド軍のもっていた象は200頭もいたということですから、その威風はさも恐ろしげなものだったでしょう。
サッカーでサイド攻撃を重要視しますが、それはサイドにスペースがあるので攻め入りやすいからだけなく、中央にスペースを作るための布石であるからなわけです。
それと全く同じですね。
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映画ではアレクサンドロスと周囲の人々との確執やギリシア神話の神々に憧れたアレクサンドロスの思惑などが中核を成していましたが、個人的にはどうでも良いことでした。
アレクサンドロスの本当の功績は、多くの優れた戦略・戦術を残したことと、生まれもっての民族に関係なく優れた人物を起用したという、歴代の名将が行った当然至極の偉業を世界に先んじて実行したことだと思います。
アレクサンドロスの死後、世界史はローマ帝国の興亡へと辿ることになりますが、彼の残した戦術を大スキピオ、ハンニバル、カエサルなどが学び、西洋の兵法は更なる飛躍を成し遂げることになるのです。

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