この世の中には、人間の目に見えない「糸」があるようです。
「赤い糸」「陰で糸を引く」など。
実際に糸があるわけではなく、「陰で糸を引く」も物陰に隠れて納豆を食べているわけではありません。
そして、「緊張の糸」という不思議なものが存在しているから不思議です。
道しるべでも繁忙期は長期間休みが無く、やっとの思いで2日間だけ休みを取ると、緊張の糸が緩んでしまい、風邪をひいたりするのです。
また最近多い政治家の政治活動費の不正流用についても、就任当時は「自分がこの国を良くするぞ」と燃えていた闘志が無くなり、一度流用してしまうと「誰にも分からないんじゃないの」とそれが普通になってしまうのです。
これは、万引きと同じ犯罪です。
万引きをするのは結構裕福な人に多いと聞きますが、一度万引きをして成功すると、それがスリルになり成功したという快感が忘れなくなるのだと思います。
貧しくても頑張って共稼ぎをし、子供を立派に育てている人も多いと思いますが、私の人生を振り返ってみても、人間は少し貧しい方が幸せ感が強くてちょうど良いのかな、と思うこともあります。
裕福な生活を送っている人は、欲しい物はすべて手に入るから、たぶんもう欲しい物が無いのです。
だから、常識が分からなくなった人の一部が「緊張の糸」が切れて、万引きをするのでしょう。
それが少し貧しいと、自分が欲しい物を手に入れるために「よし、今日も頑張って働こう」と「緊張の糸」が続くのだと思うのです。
さて、「緊張の糸」が切れたのは、ポストシーズンで6連勝した阪神タイガース。
これはもういけません。
ベンチからタオルが投げ込まれるのではないか、と思ったほど戦力の差がはっきりしています。
昨夜の試合でも、初回からボディブローの連続で、全く足が動かなくなり、それでもダウンすること無く持ちこたえていました。
そして何とかクリンチで逃げて延長に入ったものの、最後は見事なアッパーカットを顎に受けて、一発でKOされてしまいました。
6連勝の時は、苦し紛れに出したストレートがたまたま顔面にヒットしたり、ラッキーな面が沢山ありましたが、ひとつ歯車が狂ってしまうと、すべてが逆方向に流れ始めました。
そもそも6連勝は流れに乗って勝ちが並んだだけで、実力を発揮したわけではありません。
昔、ペナントレースで11連勝して、その後8連敗くらいしたことがありました。
それも連勝中の「緊張の糸」がぷっつり切れたのです。
今回の日本シリーズを見て、第一戦から驚いたことがあります。
ソフトバンクは、無死でランナーが出ると、次のバッターがバントをして二塁に送り、そしてその次のバッターもバントをしました。
二つアウトにしてまでランナーを三塁へ送る野球は、高校野球でも見たことがありません。
そして、第二戦以降もランナーが出ると、次のバッターはことごとくバントをします。
昔、全盛期を迎えた森監督率いる西武ライオンズがこのような試合をしたことがありました。
連覇をしても、バント多用の野球はそれ自体が面白くないため、観客動員数は減少して、堤オーナーは優勝監督に対して「来年もやりたければどうぞ」と言いました。
それでも勝ちを意識して頑張った森監督は辛かったと思います。
そして彼も球団との確執で「緊張の糸」がぷっつり切れてしまい、辞任することになりました。
話を戻すと、野球は確率のスポーツです。
ヒットが出た時に、いかにしてランナーが二塁と三塁にいる状況を作るかで、勝敗が分かれます。
タイガースは無死でランナーが出塁しても、後続の三人がすべて凡打でチェンジと言うパターンが多いことに気が付きます。
それに対してホークスは、ランナーをバントで送るので、後続の誰かがヒットを打てば間違いなく1点が入る野球なのです。
野球で勝つためには、ホームランなど打つ必要は無く、ランナーを進めることが最も大切なスポーツです。
そのためには、相手チームを焦らす効果的なヒットエンドランや盗塁、スクイズなどを多用することこそが、特に短期決戦を制するための重要なポイントであると言えます。
ヒットエンドランがたとえ失敗してダブルプレーになっても、積極的な攻撃をせずにダブルプレーになることを考えれば、はるかに得点を上げる確率が高かったことが分かります。
2003年に星野監督で優勝した時は、ランナーを進めるバッティングが徹底していました。
なぜそれが出来ないようになったのか、やはりベンチの能力の欠如だと思います。
また、第二戦では初めて対戦する相手投手のカーブが打てないと分かった時、何故セーフティバントや積極果敢に盗塁をするなど、相手を撹乱する作戦を取らないのか、私は不思議に思います。
カーブを多用する投手に対しては、盗塁は特に有効なのに、ベンチは全員で腕を組んで見ているだけだったのが残念でした。
さて、1勝3敗で迎える今日の第五戦は、戦法を大幅に変えないことにはかなり厳しい状況だと思います。
やはりファンとしてはペナントレースで優勝して、クライマックスシリーズを制し、日本シリーズに臨みたいので、今年は神様がくれた来年のための予行演習でも良いのかな、と思っています。
今日の福岡ドームでの最終戦はメッセンジャーが先発ですが、ここから3連勝するためには、今までの戦い方ではよほどの奇跡でも起こらない限り、無理です。
「緊張の糸」が切れたチームは今日も負けて、「さあモツ鍋と博多ラーメンでも食べに行くか」という雰囲気のような気がしています。
偶然勝つと言う奇跡を信じるのではなく、それが実力だと理解することと、負けて悔し涙を流す選手がいるのかどうか、そちらの方が遥かに私は気になります。