明日封切りの映画「くちびるに歌を」は、長崎県五島列島福江島が舞台です。
私は平成2年から3年半、仕事で福江島に住み、素晴らしい大自然と島民の皆さんの温かな心に触れることが出来て、その後の私の人生を変えた島であると言っても過言ではありません。
また、この映画には不思議な縁を感じています。
私が住んだ福江市の旧三井楽町(みいらく)には弘法大師が遣唐使で中国に渡る際に詠んだ「辞本涯」(ほんがいをじす)は、「ここで日本の最果てを後にする、そして多くのことを学んで立派な人間となり必ず帰る」という彼の決意を表したもので、大きな石碑があります。
東シナ海の大海原を見渡す小高い丘に建つその石碑は、ゴーという深い海の唸り声のような音を聞きながら、遥か彼方の唐に憧れた弘法大師の夢を今の時代にも感じることが出来るのです。
その後私が静岡県の修善寺に住んだ時も「独鈷の湯」は弘法大師に縁があり、しかも現在は弘法大師が歩いた四国遍路のお遍路さんを受け入れる宿の仕事をしているのですから、弘法大師と私は因縁深いものを感じてしまうのです。
話が脱線しますが、当時の戦乱や政教腐敗、疫病の世の中で天皇が考え出したのが「弘法大師プロジェクト」ではなかったのか、と。
10名くらいいた弘法大師と名乗る高僧が、一夜で井戸を掘ったとか、ご本尊を彫あげたという不思議な現象を日本各地で起こし、平安な世の中にして人々を安心させようとしたのではないか、と思うのです。
そうしないと弘法大師一人の力で、遣唐使から始まり、日本全国を修行で回って多くの伝説を残すことは、到底不可能だと思っています。
現代にも日本全国には旅人がいますが、LCCも18切符もゲストハウスも無い時代のことですから。
さて映画の話題で、もう一つ驚きなのが「くちびるに歌を」の主題歌「手紙 拝啓 15の君へ」を歌っているアンジェラアキさんは、道しるべのある板野町の出身。
偶然と言えばそれまでですが、このつながりは奇妙ささえ感じるのです。
平成2年2月のこと、初めて五島に赴任した時は長崎から西に向けて夕方5時出航のフェリーに揺られること3時間30分、こんなところに日本の、しかも人が住んでいる島があるのか、と本気で思いました。
デッキから見た海上に浮かぶ蜃気楼のような福江市の夜景は、「もしかしたらこの島のために自分に何かが出来るのかもしれない」と勇気づけてくれました。
その後、島で出会ってお世話になった観光協会の会長さん、魚屋さん、スーパーのオヤジさん、五島高校の校長先生など沢山の人々の名前をいまだに忘れることができません。
また、高浜海水浴場のとてもきれいな輝くビーチは、私が人生で見た最もきれいな風景です。
その懐かしい島が舞台の映画は、新垣結衣さんが主演なのも注目です。
実は五島は美人がとても多い島なので、新垣さんがそのイメージにぴったりなのです。
時間を作って早々に観に行きたいと思っています。
そして「くちびるに歌を」の映画の後には、焼肉屋で「くちびるに肉を」も楽しみにして。
祈りの島、五島。
