学生の時、初めて読んだ横溝正史氏のミステリー小説が「三つ首塔」でした。
近所にある小さな本屋さんの文庫本の棚に「三つ首塔」が並んでいて、長い間ずっと気になっていました。
塔の祟りで事件が起きるのか、それとも何か塔にまつわる悲劇があったのか、その本をパラパラと見ても本屋のオヤジがハタキをかけ始めるだけでした。
数百円でその本を手に入れたら、本の中の世界が自分のものになると思うと、期待でワクワクしました。
その後、「本陣殺人事件」、「悪魔の手毬唄」、映画化された「八つ墓村」や「獄門島」「犬神家の一族」など、横溝正史氏のその面白さに虜になり、小遣いは次々と文庫本に消えていきました。
先日、その懐かしい三つ首塔をWOWOWで観ました。
リメイクを現代風に制作しても、十分に面白いだろうなあ、と思える内容でした。
横溝正史氏は岡山出身なので、郷里を舞台にした小説が沢山あります。
中学生の時によくこんな「おどろおどろしい小説」を読んだものだ、と思うほどです。
でも当時はどのような展開になるのか楽しみで、怖いもの読みたさにワクワクしながら食事もそっちのけで、読んだ記憶があります。
そして高校生になると、自転車で10分くらいのところに平和ドルビーという安いリバイバル映画館があったので、上映の映画が変わると毎月のように出かけました。
1日3本上映の映画を6時間見て、確か800円くらいだったと思います。
しかも今みたいに入れ替えがなかったので、気に入った映画は2回ずつ観て、12時間を映画館で過ごしました。
外に出ると、いつも太陽が沈んでしまい、闇の世界になっていました。
ミステリーやサスペンス、また人生で感動する映画を沢山観た平和ドルビーも今は無くなってしまいました。
文庫本と映画の面白さに虜になった、不思議な学生生活でした。