ひと月以上前の、1月10日の話。
成人式の連休前に休みを1日だけ取り、また18きっぷ1日分が手に入ったので、久しぶりに旅に出ました。
私にとっては、今年の正月です。
時刻表を繰って、さてどこへ行こうか、何をしようかと探っていると、久しぶりに雪を見たくなりました。
しかし切符は1日分しかないので、今日中に帰らなくてはなりません。
芸備線に乗りたかったのですが、残念ながら運休中。
岡山を経由して津山線、因美線、山陰線、伯備線で戻るコースがベストなのですが、岡山と高松で乗り換え時間がわずかしかなく、雪で遅れたりトラブルがあると、どこかで1泊する必要が生じます。
そのため、以前からプランは考えていたのですが、板野駅の2駅先、香川県の引田駅まで車で行くと、高松からの1便遅い列車でも帰れます。
しかも引田駅には日極め200円の格安駐車場があるのでした。
しかし駐車場が満車だと他の場所を探さなくてはならないし、列車の旅が車の旅に変わってしまいます。
朝は5時に起きる習慣がついているので、4時半に起きるのは平気ですが、明けの明星が「何してんの?」と見つめる真っ暗な夜空の下、車を出して引田駅に向かいました。
無事車を停めれば、これで一安心。
ガラガラの高徳線上りの引田駅始発列車に乗り込みました。
途中の三本松あたりから続々と学生が乗ってきました。
朝早くから部活でしょうか、学生も大変です。
そして、高松駅には昨夜東京を出発した「サンライズ瀬戸」が、「おはよう、久しぶり」と長旅を終えて疲れを癒していました。
岡山からは久しぶりに津山線に乗ります。
私は撮影で布原に訪れたため、新見にはよく行ったのですが、津山は記憶にないほど昔です。
蛇行する旭川に沿って走る津山線は好きで、いつか撮影を、と思うのですが、なかなかその機会に恵まれません。
そんなことを考えていると、最後の心配事が頭をよぎりました。
乗り継ぎの時間が少ないので、昼を食べられるかどうか、生きていると次々と心配事が湧いてきます。
食べるとすれば、鳥取駅か米子駅の20分くらいで駅蕎麦をすするくらいです。
しかし、そんな店があったかどうか、私の記憶にはありません。
鳥取駅は確か駅に隣接してレストラン街があったことを記憶していますが、20分では無理なので、パンでも買うしかないでしょう。
旅の不自由さは、実に面白いと思います。
決してツアー旅行などでは味わえない、苦労した手作りの旅の味があります。
自分で時刻表を繰って好きなところへ行き、時間に余裕があれば好きな街で下車する、そんな旅が面白くて好きです。
最近はスマホのルート検索機能があるため、時刻表を買う人が少なくなったそうです。
例えば、板野から鳥取を経由して米子まで検索すると、瞬時にルートが表示されます。
時刻表を繰っていると、10分はかかります。
年寄り臭いですが、便利な世の中になったもんです。
便利といえば、山陽線の上郡駅から因美線の郡家まで智頭急行が完成しました。
そして、岡山から鳥取までは「スーパーいなば」の独断場となり1時間50分で結んでいます。
大阪や京都からもこの津山線を通らずに智頭急行を経由して「スーパーはくと」が走っています。
じゃあ、何のために姫新線を建設したのか、実にもったいない話です。
智頭急行を走る特急列車は、オーソドックスなネーミングですが、なかなか素晴らしいと思います。
将来、高徳線にも新型特急が配属されれば、「スーパーうずしお」が走る時代が来るのでしょうか。
何だか目が回りそうな、洗濯用洗剤のようなネーミングですが。
さて昔、津山にはホルモンうどんを食べに来た記憶があります。
駅にほど近い小さな店に入りましたが、結構美味しかったのを覚えています。
時間が11時前とまだ早いし、乗り換えにも微妙に時間がないため、今回は断念します。
また気温はマイナス0.5度と、普段体験しない寒さに身体も凍えてしまいます。
余談ですが、津山城主は信長に仕えた森蘭丸の弟、森忠政公が築城しました。
また東津山にはB’zの稲葉さんの実家「イナバ化粧品店」があります。
のどかな田園地帯ですが、ここで生まれて名曲を作り出す才能が育まれたのかと思うと、納得です。
その昔、津山からバスに乗ると、日本原高原にユースホステルがありました。
高校生の時に泊まりに行くと、翌朝はわざわざ近くのバス停まで送ってくださいました。
40年も前のことなのに、嬉しかった旅の思い出はまだ覚えています。
津山から因美線で越える那岐山系は、私の好きな鉄道路線の一つです。
ディーゼルカーがエンジンをフル回転させて峠を登って行くので、SLの時代には運転士はご苦労だったことでしょう。
分水嶺の美作河井駅が近付くと、雪が次第に深くなり、列車のスピードが急に落ちました。
そして長大な那岐山トンネル付近からは、列車は呪縛から解き放たれたように快走し、滑り込むように那岐駅に到着しました。
鳥取駅は随分昔から高架で、まるで新幹線が入線してくるように思えます。
18きっぷが2枚あれば、間違いなく鳥取で泊まりました。
その時のスケジュールは、姫路からの播但線と余部橋梁を入れたでしょう。
そんなことを考えただけで、ワクワクするのでした。
明日の後半へ続く。
美作河井駅付近の雪景色
