昨夜は興奮して深夜まで寝られませんでした。
そういう阪神ファンも多かったのではないかと思います。
私は半世紀以上もプロ野球を見ていますが、29日に甲子園球場で行われた阪神対読売戦で、延長12回裏に阪神の高山選手の「代打逆転満塁サヨナラホームラン」という劇的な一打をテレビで初めて見ました。
また、東京ドームで西武の西崎投手のノーヒットノーランを、広島市民球場でバックネットによじ登る蜘蛛男も、実際にこの目で見ました。
そして、代打逆転満塁サヨナラホームランなんて理論上はあるものの、この世には存在しないと思っていました。
甲子園に駆けつけた阪神ファンは、この日の入場料は安かったと思います。
4時間半の熱戦で、常時読売がリードして8回裏にマルテのツーランで追いつき、12回裏に初めて奪った勝利の一撃なのでした。
考えてみれば、昔から優勝チームには「ラッキーボーイ」がいるものです。
準優勝でしたが、74年の高校野球徳島県代表のさわやかイレブンでホームスチールをした雲本内野手、またワールドカップでの日本代表の大迫選手の「半端ないって」は一斉を風靡しました。
そして高山俊外野手は、16年には新人王を獲得しましたが、今年はベンチを温める仕事に文句も言わず耐えてきました。
ルーキーの活躍もあり、今年はまだ打点がないのですから。
テレビのアナウンサーは、12回裏に
「まだ誰かいましたか?」
ベンチ前でバットを振る姿を見て、
「そうです、高山がいました」
と忘れ去られた存在なのでした。
その悔しさを一撃にかけて強振したバットは、甲子園のカクテル光線に照らされた夜空に高く舞う、まるで往年の田淵が放ったような見事な弧を描く大ホームランとなって、揺れるライトスタンドに消え去ったのでした。
高山は、ヒーローインタビューでも冷静すぎるのです。
「有難うございました。明日も応援宜しくお願いします」
これが新庄なら
「やったぜー、明日も勝つ??」
それこそがヒーローの資質だと思うのです。
矢野監督は、この高山の反骨精神を買わない手はありません。
ライトスタンドでこのボールを手にした方は、是非とも甲子園の博物館に寄贈して欲しいと思います。
今年の秋には、阪神ファンから奇跡の一撃として語られる、伝説の白球になっている予感がします。