金曜は慌ててホテルやチケットのキャンセルなど、開催中止に伴う雑用でスタート。その間にプライベートの外せない用事をしつつ、情報収集や残務処理。個人的に今回ムダになった原稿は、木曜入れの共同通信の予想原稿くらいで、金曜午後締めの中日スポーツはセーフ。ただ、東京から特番形式で放送するラジオ日本は、「思い出の名レース」という企画になったため、記者歴40年の大御所古川さんのみの出演となって、完全休業となった。その分、土曜は溜まってた原稿を片付けることになりそう。
専門紙などは、中止が長期にわたればかなりの損害となるだろうし、それに比べれば弱小ライターの被害は小さいものだ・・・と思いたい。
プライベートの用事が思ったより早く片付いたので、暴力的な暑さの中、急いで開催中止の記者会見のために六本木事務所へ。
詳しいことは最強でも書くので省略させてもらうが、いくつか会見で出たことと、私が個人的に思ったことを書いておくことにする。
★ 感染は会見の時点で163頭の検体から29頭、うち発症は1頭。しかしこれはさらに拡大する懸念がある。今週の出走予定馬について検査を行なった結果、函館在厩が32頭中9頭、新潟出走予定馬が110頭中19頭、小倉出走予定が土曜分のみの検査で21頭中1頭の感染。
★ メイショウサムソンが感染していた件(発症という表現をJRA側はしていた)は、あくまでも質問した日刊紙の記者側からの質問によって引き出されたもの。JRAが進んで公表したわけではない。(隔離すれば感染の拡大を防げるなら、なぜ国際厩舎で隔離状態だったサムソンが感染したのか、という質問で初めて明るみになった。⇒答えは、潜伏期間によるタイムラグであろうということ)。
★ 来週以降の開催については、全くメドが立っていない(といえばひとことで済むところを、なんかまどろこしい表現をしていた)。
★ 個人的に今回のポイントは、「新型ウイルスでないならば、なぜ突然感染が広がったのか」という、この1点に尽きると思っている。ここを質問したところ、あくまで新型ではなくて従来からある2型ウイルスを検出したとのこと。しかし、この2型が従来のワクチンに対して耐性を持ち出した恐れはないのかと重ねて尋ねたところ、その可能性は否定できないということだった(すんなりそう認めた発言をしたわけではなかったが)。
つまり2型は2型だが、変異した2型の恐れがあるということ。となれば、実質的には新種ウイルスとみてもいいわけだ。
また、「これまでも感染はあったのに、発症が出なかったから露見しなかったということはないのか」という問いには、「検疫体制からもそれは無い」と明言していた。
★ 感染ルートは特定できていない。また感染馬の公表も一切考えていない。
以下は個人的意見。
★ やはり、昨日の『開催の方向で検討する旨のコメント』は、やや軽率だったというきらいは残る。確かに開催を決定した、という表現はしてはいないが、一般マスコミはもう完全に開催決定というニュアンスで報道してしまう。(今、今日の会見を伝えているニュースステーションでも、『決定を一度は下したJRA』という表現をしていた・それにしても古舘は酷いですね・話逸れましたが)
もちろんマスコミ側も軽率なのだが、ああいう表現をすればこういう報道になるということは想定できるだろう。そこを懸念して昨夜、ここで「開催すると決まった訳ではない」と記したのだが、その懸念が現実化してしまったのはとても残念だ。どうもディープインパクト事件といい、対マスコミ、対世間という点での手の打ち方に甘さを感じて仕方が無い。
★ トラックマンによれば、厩舎の雰囲気の多くは、「開催はありえない」というものだったそうだ。そうならば、やはり中止は妥当な線だったと思う。
また、元獣医氏に取材したところ、馬インフルエンザの場合、その感染力から判断すれば、開催できるかもという判断をしたこと自体理解に苦しむとのこと。
★ 報道では、昨日、内山栗東トレセン診療所長が「ワクチン接種が徹底しているので、これ以上の拡大は心配いらないのではないか」とコメントしているが、これが開催の方向への舵きりとなった感は否めず、これもやや楽観すぎたと思う。というか、接種が徹底しているのになぜこんなことになっているのか?というイマージェンシー音を感知し、WHY?のモチベーションを持って動くことが、その職務からも正しい姿勢ではないだろうか。どうも、ワクチン接種済みへの過信感もあったような気がする。
寺田寅彦の言だったと思うが、「正しく虞れよ」という名言がある。いたずらに危機感を煽ることは愚かしいことではあるが、安易な楽観論もまた真相へのアプローチを妨げてしまうことを意味している。確か寺田は病気に対する、採るべき姿勢としてこの至言を発したと記憶しているが、いろいろな事態に通用することだと思う。ただ正しく恐れるには、それ相応の反射神経と知識と知恵と、判断力が求められることも事実なのであって、それを持つ人を探す事が困難なことなのではあるけれども。

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