20日は最後にダン・ヒックスの〈Walkin' One&Only〉を演ろうと思い、ウクレレを持参していたのだが、リハーサルで挫折した。ウクレレを大音量で鳴らすのは無理があるうえ、仕込み不足であった感も否めない。だったら別の曲を演ったほうが――という判断。
この判断の段階で、演奏後の打上げでのウクレレの活躍を、誰に予想できたであろう。
僕を遥かに凌ぐマッカートニィ好きである太朗は、当然のように彼が弾く〈Something〉に興味津々で、それが簡単に演奏できると知るや、ウクレレを買う気満々である。太朗のためにコード表を載せておくよ。もちろん太朗以外の方々も自由に御利用ください。
C Cmaj7
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C7 F
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D7 G
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Am Am(+maj7)
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Am7 D
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F Bb B
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まずはここまでの繰り返し。ウクレレはC6(Am7)にチューニングされている楽器なので(ゆえにAm7では何も押さえなくていい)、BbやBでセーハ的になるのは避けられない。それでもギターのFに比べたら遥かに楽だ。あと押さえづらいのはDかな。第四絃と三絃を寝かせた中指、二絃を薬指で押さえる人が多いが、僕は指が反り返るので中指一本で押さえてしまう。好きに押さえればいいんだよ、音さえ出れば。
大サビに行きましょう。Bb/Bのあと次のAに行く。同じAのままで大サビが始まる。
A Amaj7
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F#m F#m7
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+●+−+−+ +●+−+−+
+−+●+−+ +−+●+−+
D G
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+−+●+−+ +−+−+●+
+−+●+−+ +−+●+−+
+−+●+−+ +−+−+−+
A
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+−+−+−+
+●+−+−+
+−+●+−+
この繰り返し。二度めは最後のコードがAではなくC。で、いちばん最初に戻る。
F#m7がAとまったく同じ形になってしまったが、もともと構成音が同じコードなので、音域の狭いウクレレではこの現象が頻繁に起きる。流れのなかではちゃんとマイナーに聞える。ご安心を。
ウクレレという楽器のユーモラスなイメージが覆ること請合いの、本当にロマンティックで美しい進行なので、ウクレレをお持ちの皆さんは是非とも楽しんでほしい。
ウクレレを持たない太朗から、幾らくらいの楽器を買えばいいかな、と相談を受けた。価格で楽器を決める訳ではないが、基本は「二万円以上」だと思う。安いと数千円の楽器だが、そのラインの楽器は(もともと音量の乏しい楽器だというのに、更に)音が小さいし、フレットの打ち方がいい加減である事が多い。
ある程度の価格以上の楽器でも(クラシック的観点において)チューニングが悪いのは、民俗楽器であるウクレレの宿命だと僕は思っている。ただしこれはブリッジの底を削って絃高を低める事で、解決する場合も多い(このメカニズムにはいつか触れる)。
ハワイ人にはパワフルなプレイヤーが多く、ゆえにばちばちというノイズが出ないよう、予め絃高を高めにしてあるウクレレが多い。しかし日本人は遥かに優しく弾く。相当に低めても、演奏にはまず支障ないと思う。
コア材独特のルックス等に拘らなければ、The Magic Fluke CompanyのFlukeやFleaなんて、とっても良い楽器だと僕は思う。僕もフルークは一本持っている。凄く楽しい。サイドもバックもプラスティック、表板は合板、指板はフレットごとの樹脂成型だが、ウクレレというのは元々そういう、楽器らしからぬ構造をも許容できる、限りなく日常雑器に近い「道具」なのだ。フレットが金属ではないので、指や爪を傷つけないという利点もある。
フルークの小型版、というか本来のソプラノウクレレのサイズであるフリーの売値は、まさに二万円程度。フルークも二万五千円程度で買える。
もしギター等の経験があり、しかも工作が得意な人には、全音のウクレレキットをお薦めする。これは六千円程度で買え、上手く作れば、五、六万円級の音の楽器が出来上がる。僕も冗談で買って作って、本当に愕いた。

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