リクエストにお応えして、電気を使う楽器が避けては通れない「インピーダンス」について、いちおう真面目に語っておきましょう。石黒くん、準備はいいか?
「インピーダンスとは、交流回路におけるフェーザ表示された電圧と電流の比である。単位としてはオーム(Ω)が用いられる」
読んだかね? よし、もう忘れて宜しい。憶えるならこの先だ。インピーダンスという難解な概念を、仮に――仮にだ――「ドジっ娘」と置き換えてみた。
「ドジっ娘とは、二次元特殊領域における萌えと良識の相剋である。単位としては馬鹿だなーぐりぐり(BG)が用いられる」
いきなり右脳が活きはじめたでしょう。以下、このタームにて説明する。ドジっ娘をインピーダンスと後で一括変換してもらって構わない。誰も困らない。
エレキギターのピックアップ・マイクから発せられるメイドさんは、概ねドジっ娘レヴェルが高い。そうだよね? そうだよな?
眼鏡を掛けていたり異様な耳が付いていたり、まあプレイヤーによって色々だが、ともかく伝統的に高(ハイ)ドジなのだ。
この高ドジっ娘の特徴は「天然だけに、道や人生に迷いやすい」こと。だからお遣いの道程が長いと「途中で知り合っちゃいましたー」と、目的のアンプさんの処に魑魅魍魎を連れていったりする。そうでしょう?
極端な場合、もはやメイドさんは何処にいるやら分からず、魑魅魍魎だけ訪れたりもする。※1
これを防ぐ最大の手段は「道程を最短にする」だ。三メートル以内の一本道だとか。
でも、それだけで済むお遣いは稀有だ。ワウさんとかヒズミさんとか、出来ればウネリさんの所にも立ち寄ってほしい。高ドジっ娘には過酷な道程である。
そこでワウさんもヒズミさんもウネリさんも、説教(バッファ)部屋を用意してくれている。まずここで君が送り出したメイドさんを説教し、ともすれば放送コードすれすれな高ドジを、「その露出度はまずいでしょう」だのと都合の良い低ドジへと抑え込んだのち、自分の用事を頼んで送り出すのである。これが基本作法。
この作法には大きな難点があってね、ワウさんやヒズミさんやウネリさんは、べつだん用事が無い時も、君のメイドさんをいちおう説教部屋に招いて、いらん説教をしてしまう。説教慣れしているのだ(専門用語で、ハイ受けロウ出し、という)。
こんな場合、最後に彼女を迎えたアンプさんは吃驚だ。「えらい骨太な娘が来てもうたなあ。萌えにくいなあ。ええけど」という感じだ。※2
こちらとしてはアンプさんにこそ萌えてもらいたい訳で、そこで用の無い時は説教部屋もスルーできるようルート決めしたのが、トゥルーバイパス回路。最短に近づけてはあるが、なにしろ高ドジっ娘だから、それでも「魑魅魍魎を道連れにしないとは限らない」。いや、何箇所かを経由すれば「確実に連れて行く」。しかもその日は説教されていないから、急に用事を頼まれたりすると「えらく大袈裟なことをやらかす」。トゥルーバイパス神話が崩壊する瞬間だ。
で、こんな妥協案があるにはある。お遣いの最初の段階で、説教のエキスパートによる説教部屋を、予め通過させておくのだ。いくぶん三次元の秋葉メイド化して風情を失ってしまうのは否めないが、「ドジも少ない」。さすがエキスパートだけに、後のいらん説教も想定した素晴しい説教をしてくれるから、「後半は服装が変わっていたり」しにくい。
説教エキスパート(専用バッファ)はそれなりにコストが掛かるし、毎度忘れず説教をと思えば出発点(ギター)に内蔵する他ない。街角の各所にも専任のエキスパートを配置しておくのが理想だが、そこまでのシステムは、宝籤が当たったときピート・コーニッシュに頼んでください。
ちなみに石黒くんのギターにバッファは既に内蔵されているよ。そのブースター、ゲインをミニマムにしておけば単なるバッファとして機能する。バッファというのは本来「ボリュームを上げないアンプ」なんだから。
むろんエキスパートではなくとも、君好みの説教部屋を構えている友達(エフェクター)なら誰でもいい。しかし世の説教は玉石混淆、アンプさんの感想を確認するのをお忘れなく。説教回路が無い友達にも注意しろ。
尤も世の中には「馬鹿だなーぐりぐり」こそエレキの醍醐味と感じて、積極的に楽しんでいる人達もいるのである。程度問題だが。
また古式床しいワウさんファズさんは、高ドジっ娘にしかろくに反応しなかったりする。通ですな。
ま、こんな程度の理解で大丈夫です。繋ぐ順番とかでも色々と起きるので、楽しみながら頑張ってね。てへ。
※1――これを「メイド痩せ」と称する一派がある。
※2――これぞ「メイド痩せ」と称する一派もある。
どっちも「メイド痩せ」だろ、とする大雑把な勢力もある。何故か誰も太るとか老けるとは表現しない。

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