ですぺらで使ったウクレレは、MAUI MUSICというハワイのメイカーのもの。いま内部のラベルを見たら、型は「SK」と手書きされていた。Soprano/Koaの略か?
一度工場が焼けて生産をやめていたが、今は再開しているらしい。品質が落ちたと楽器店で教えられた。しかし新しいほうは弾いたことがない。
ライヴでウクレレを使おうと思えば、電気的に増幅するほかない。とうぜん音色は変わる。イコライジングで生音に近づけんとしても、絶対に同じにはならない。
だから音程の合う楽器ならそれで良かったのだが、大学での先輩にコレクターがいて、ネットオークションで買ったものの気に入らず使っていないと云い、この楽器を見せてくれた。ネックがウクレレにしては太く丸っこい。ヘッドストックが妙にでかくて、ペグもごつい。頑丈そうだった。
借りてきて、そのままライヴ用に改造してしまった。買い取らないと。
渋谷の楽器店で、Birdlandという日本の会社のOBP-1なるピックアップを仕込んでもらった。ブリッジの下に敷くタイプのピックアップはどうも音色がヒステリックで、ハワイ風に爪の側でストラミングする僕には合わない。ボディ裏への貼付けなら、すこし絃からの距離がある。そういう音がする。
ボディエンドにはケーブルを差すジャックも仕込んでもらい、工賃含めて一万円程度。内側に錘がくっ付いたようなもので、そのぶん生音が小さくなったが、もともとうるさいほどだったから、未だ僕のどのウクレレよりも音量がある。
この種のピックアップは極度に出力が低い。プリアンプが必要、と断言してしまうと誤解が生じる。他の楽器や歌とのバランスがとれるなら、直接アンプやPAに繋いでも差し支えない。ドラムがいるようなバンドなら、介したほうがバランスさせやすい。
九月のですぺらでは、高校のときコントラバスのために買ったBOSSのFA-1というコンパクト・プリアンプを使った。電池式で、裏側はベルトに止めるクリップになっている。とっくの昔に生産中止だが、僕はこのプリアンプが好きなので、もし完動品を持て余している方がおられたらご連絡ください。何かと交換しましょう。
より大きくて多機能なプリアンプも持っている。しかし重いし、家で実験したかぎり結果は似たようなものだった。99パーセントのミュージシャンにとって、機材の移動は最も頭の痛い問題だ。僕らは酒を飲むし、毎度駐車場を探している余裕もないから、電車で移動する。一般的なコンパクトエフェクターでも、ケースに七、八個並べて配線したら五キロになる。最も重たいエレキギターくらいの重量だ。
ミキサーまでの間に、さらにARIONという日本企画、スリランカ生産ブランドの、ステレオコーラスSCH-Zを介して薄くかけた。そうしたほうが、なぜかハウりにくい。SCH-Zは四千円もしないのだが、筐体がプラスチックで軽いし、音色がちょっとBOSSのCE-1に似ている。代用品としてときどき使う。
CE-1は大昔、ギターを辞めた友達から貰った。野球部員の弁当箱のようにでかい。
村下孝蔵というフォーク歌手がいた。もう死んでしまった。若いころ広島で活動しており、楽器店の店頭で歌っているのを、立ち止まって聴いていたことがある。当時はまだ珍しかったオベーションを抱え、足許にはCE-1があった。湿っぽい歌ときらびやかなスリーフィンガー・ピッキングに、素直に感動できない自分になんだか苛立った。

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