消費税をめぐる情勢と増税発言
社会保障財源 消費税頼み 誤り
NHK番組 市田氏主張 大企業減税見直せ
2009年6月29日 赤 旗
日本共産党の市田忠義書記局長は28日のNHK「日曜討論」で、“社会保障費抑制が限界だから消費税増税を”という政府・与党の姿勢を批判し、社会保障に重点を移す予算配分の転換と、大企業などに応分の負担を求める税制の転換を求めました。
政府の「骨太方針2009」について市田氏は、来年は社会保障費の毎年2200億円削減をやらないとする一方、社会保障費を5年間で1兆1000億円削減すると決めた「骨太方針06」を踏まえ「歳出改革は継続する」と明記していることを指摘。「これまでの削減路線は間違いだったと反省せず、国民の目をごまかすやり方だ。社会保障費抑制路線はきっぱりやめるべきだ」と迫りました。
公明党の北側一雄幹事長は、「(削減路線は)限界だ」とする一方、「国民に負担をお願いするか、社会保障サービスを抑制するかどっちかしかない」と述べ、「消費税の議論は避けてはならない」と強調しました。
市田氏は、「国民負担を増やすか、社会保障を抑制するかという二者択一は全く間違っている」と厳しく批判。「財源というとすぐ消費税に頼る考えは間違っている」と述べ、11年度に消費税増税を具体化しようとしている自公政権と、4年間の凍結後は消費税に頼ろうとする民主党を批判しました。
そのうえで市田氏は、財源の2つの考え方を表明しました。1つは予算配分の転換で、「朝日」の世論調査で、予算を増やすべき分野としては福祉や雇用を、削減すべき分野としては公共事業や軍事費をあげる声が多数だとし指摘。1メートル1億円もかかる東京外郭環状道路や米軍への「思いやり予算」、320億円に上る政党助成金をあげ、「いまある財源配分の見直しが必要だ」と述べました。
もう一つは税制のあり方で、この間行なわれた大金持ち・大企業減税を見直すだけでおよそ7兆円の財源が生まれることを示し、「なにかあれば消費税という発想はやめるべきだ」と主張しました。
民主党の岡田克也幹事長は、自公政権の社会保障削減路線を批判する一方で、「社会保障や医療費も聖域ではない。見直していく」と述べました。
「小さな政府」 決別を明言 首相
2009年6月26日 朝 日
麻生首相は25日の日本記者クラブの会見で、政府・与党がこれまで、社会保障をめぐる国民の不安に対応しきれていなかったとの考えを示した。そのうえで安定財源確保のため、改めて将来的な消費増税の方針を表明した。
首相は「ワーキングプア、ニート、子どもの貧困、医師不足。政府がこれらの問題に対応できていなかったことは認めなければならない」と述べた。昨年9月の首相就任直後は「目先の金融危機の対応に全力を挙げざるを得なかった」と釈明。「小泉改革」の旗印だった「小さな政府」とは一線を画し、医療・年金・雇用・教育など社会保障全般に目配りすると明言した。
経団連会長 “消費税増税を”
2009年6月24日 赤 旗
麻生内閣が23日決定した「骨太の方針2009」について、日本経団連の御手洗富士夫会長は同日、消費税増税の断行を求め、経済同友会の桜井正光代表幹事は、社会保障抑制の「棚上げ」に遺憾の意を表明しました。
このなかで、御手洗氏は「わが国は厳しい財政状況にある」として、「社会保障の機能強化、持続可能性を確保するためにも、消費税を含む税制抜本改革を断行する」ことを求めました。桜井氏は、「歳出拡大を抑制するための具体策が十分に盛り込まれなかったことが残念だ」とし、とくに「社会保障費の自然増を年2200億円抑制するとの方針が事実上棚上げされたことは、今後の歳出全般の肥大化につながりかねず、大変遺憾である」と表明しました。
社会保障抑制は継続 2200億円削減 来年度盛らず
「骨太方針09」を閣議決定
2009年6月24日 赤 旗
麻生自民・公明内閣は23日夕の臨時閣議で、経済財政運営の基本方針「骨太の方針2009」を決定しました。来年度予算編成では、社会保障費の自然増を認めるものの、抑制路線そのものはあくまで続けるという内容です。
高齢化に伴う社会保障費の自然増を抑制する方針について、与謝野馨財務・金融・経済財政相が10年度の予算編成では適用しないと与党側に表明。これを受け、「骨太の方針09」の原案に「社会保障の必要な修復をする」との文言を追加しました。一方、社会保障費の抑制を掲げる「骨太の方針06」を踏まえ、歳出改革を継続」するとしました。
医療、年金、介護の連続改悪への世論の批判の高まりのなか、与党内でも矛盾が噴出。総選挙を前に、10年度予算編成では2200億円の抑制は盛り込めなくなったものの、それは1年限りの措置です。「踏まえ」るとした「骨太の方針06」は、11年度までの5年間に、社会保障の伸びを1.1兆円抑制することがうたわれています。
閣議後に記者会見した与謝野財務省は、10年度予算では「社会保障の自然増をそのまま認める」とする一方、「11年度に累積して自然増を1・1兆円抑えることは変わっていない」と述べ、11年度予算編成では、自然増の抑制を強化する考えを示しました。
「骨太の方針09」はまた、消費税増税については、税財政の「中期プログラム」と09年度税制「改正」法付則の「税制の抜本改革の規定に則って」安定財源を確保すると明記。付則などに盛り込まれた消費税増税を11年度から実施できるよう、必要な法制上の措置をあらかじめ講じ、財界が求める法人実効税率の引き上げを「検討する」方針です。
「防衛」初の単独項目
23日に閣議決定された「骨太方針09」は、「防衛」という単独の項目を初めて設け、「真に必要な防衛生産・技術基盤の確立に努めるとともに、防衛調達等の改革を実施する」と述べています。
同方針はまた、「北朝鮮によるミサイル発射、核実験など・・・に適切に対処する」ことや、「米軍再編関連措置を着実に進める」ことなどを明記しています。
「海賊」派兵法 年金法 租税特措法
自公、 一気に再議決
2009年6月20日 赤 旗
自民、公明両党は19日の衆院本会議で、自衛隊の海外派兵を拡大する「海賊対処」派兵新法案、基礎年金の財源確保と称して消費税増税を狙う国民年金法改定案、2009年度補正予算法案の租税特別措置法案を、3分の2の賛成多数で一気に再議決し、成立を強行しました。3法案は同日午前の参院本会議で日本共産党など野党の反対多数で否決されたものです。07年参院選挙で参院の議席が与野党逆転となって以降、再議決は6回強行されましたが、たった1日で内容の異なる3つの重要法案をまとめて強行したのは前代未聞の暴挙です。【中略】
赤嶺議員反対討論 国庫負担引き上げ財源 政府、消費税増狙う
与党の3分の2の数の力で成立した、基礎年金財源の国庫負担割合を現行の3分の1強から2分の1に引き上げる改定国民年金法は、財源確保と称して消費税増税をねらうものです。
日本共産党の質問で、政府・与党が国庫負担引き上げに充てるとして、定率減税の廃止や年金課税の強化を強行してきたにもかかわらず、そのうちわずか17%しか年金財源に回っていないことが判明。財源確保を口実に、庶民増税に加え、消費税増税まで行おうという法改正の問題が明らかになりました。
また、2009年度補正予算関連の改定租税特別措置法は、緊急に求められる中小企業対策よりも、研究開発減税などで大企業を優遇するものです。また、一部資産家へ恩恵をもたらす贈与税減税を盛り込んでいます。
年金国庫負担 2分の1に引き上げ
年2.3兆円 見えぬ財源
2009年6月20日 朝 日
基礎年金の国庫負担割合を、3分1強から2分の1に引き上げる改正国民年金法が19日、成立した。少子高齢化が進むなか、公的年金の財政を持続可能にすることが目的。だが、2分の1に引き上げに必要な年2.3兆円は、向こう2年間は「埋蔵金」頼み。消費税を念頭に置いた「安全財源」確保への道筋は不透明なままだ。
制度維持のため、国庫負担2分の1引き上げが法律に検討課題として明記されたのは、15年前の94年改正。04年改正では給付と負担のあり方を見直した。【中略】
04年改正で、引き上げ時期は「09年度までに」と明記された。その前提として、「安定財源を確保する税制抜本改革」が必要とされたが、歴代政権は安定財源の消費税増税を避けてきたため、期限ぎりぎりで2分の1引き上げにこぎつけた。
引き上げに必要な年2.3兆円は消費税1%相当。09年度と10年度は財政投融資特別会計の「埋蔵金」を流用し、その後は、消費税を含む税制の抜本改革で安定財源を確保することになっている。ただ、この抜本改革は「経済状況を好転させることが前提」(麻生首相)。
今回の法改正により、抜本改革が進まず、11年度以降に安定財源が確保されない場合でも、「臨時の法制上・財政上の措置」により、2分の1は維持される。反面、安定財源を確保するまで、この不安定な状態が続く。
消費税上げ 慎重に対応を 日商会頭
2009年6月19日 赤 旗
日本商工会議所の岡村正会頭は18日の記者会見で、衆院選を前に消費税引き上げ問題について、景気が低迷している現状を踏まえ「中小企業が(増税分を価格に)転嫁しにくい状況や(低所得者ほど税負担が重くなる)『逆進性』もあり、慎重に考えてもらいたい」と述べました。
岡村会頭は、社会保障費の増大などに対応する消費税率引き上げに「真っ向から反対しているわけではない」とする一方、「経済の下降局面で上げれば、逆に税収が減ることも考えられる」と指摘しました。
党首討論 麻生首相 財源には消費税
民主代表 軍事費減言わず
2009年6月18日 赤 旗
【前略】 また、麻生首相は社会保障問題について「財源問題なくして、この問題に対応できない」と述べ、「景気が回復してきたときに消費税を含めた税の抜本改正をやらせてもらう。消費税は避けて通れない。民主党は財源を提示すべきだ」と述べました。
鳩山氏は「政権をとっても4年間は消費税増税しない」とのべましたが、新しい政策に充てるとしている20兆円の財源について、無駄遣いを徹底的に見直せば出てくると述べるだけで、軍事費を減らすことや大企業・大資産家に応分の負担を求めることにはふれませんでした。4年たった後の消費税増税にも言及しませんでした。
前回の党首討論で中傷合戦を演じた西松建設違法献金問題については、一言も議論になりませんでした。
党首討論 2回目対決 首相 逆襲不発 衆院選控え財源論争
2009年6月18日 読 売
麻生首相と民主党の鳩山代表による17日の党首討論は、衆院選を意識し、社会保障などの財源を巡る激しい応酬となった。首相は低迷する内閣支持率の回復を狙い、消費税率引き上げを訴えるなど、政権担当能力を強調したが、内心の焦りを感じさせる場面もあった。
財源論争のきっかけになったのは、医師不足解消を訴えた鳩山氏の発言だった。鳩山氏は、妊婦のたらい回し問題を挙げ、「医師も看護師も不足している。社会保障費も(毎年)2200億円がどんどん削られた。8000億円程度を手当する必要がある」と述べ、大学医学部定員の5割増、診療報酬の2割増を唱えた。
首相はすかさず財源論争を仕掛けた。社会保障費が少子高齢化で毎年1兆円程度増える現状を説明したうえで、「消費税は避けて通れない。財源がなければ極めて無責任だ」と景気回復後の消費税率引き上げの必要性を強調し、鳩山氏に見解をただした。
これに対し、鳩山氏は「徹底的に無駄遣いをなくせば10兆円程度削減できる」と反論し、「政権を取ったら4年間、消費税は増税しない」と明言した。若者の自殺の増加を指摘し、政府が国立メディア芸術総合センター(通称「アニメ殿堂」)の建設費として2009年度補正予算に117億円を計上したことを取り上げて、「政府は人の命よりも財源、コンクリートの方が大事だ」と断じた。
首相は今回の党首討論を「反転攻勢の第一歩」と位置づけ、15日の党役員会でも「政権担当能力を示すために具体的なテーマで問いたい」と意気込んでいた。鳩山氏の社会保障論にここぞとばかり財源論で反撃したのも、「民主党の政策は聞こえがいいだけで現実味がないことを、衆院選を前に国民にアピールしたい」(首相周辺)と考えたからだ。
財源論争は討論の多くの時間を占めた。だが、無駄遣いをなくすことで財源を捻出できるとする鳩山氏の主張とは平行線のままだった。得点を稼げなかった焦りからか、首相は討論の終了直前、民主党の小沢代表代行が2月に「米海軍第7艦隊で米国の極東におけるプレセンス(存在)は十分だ」と述べたことを蒸し返して攻撃する一幕もあった。最後は「財源、安全保障の問題に関して改めて開催していただきたい」と異例の申し入れまでした。(後略)
消費税増「着実に具体化」 政府が骨太の方針原案
2009年6月17日 赤 旗
政府は16日の経済財政諮問会議(議長・麻生太郎首相)に、「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2009」の原案を示しました。原案は「徹底した行政改革と歳出改革は継続する」と明記しました。
麻生内閣は、社会保障関係費の自然増を毎年2200億円抑制してきた「歳出改革路線」を堅持する構えです。
原案は、「中期プログラム」と「09年度税制改正法」付則に盛り込まれた消費税を含む税制「抜本改革」の規定に沿い「社会保障の機能強化と安定財源確保を着実に具体化する」と強調。消費税増税に向けた取り組みを着実の進める方針を示しました。
与謝野馨経済財政担当相は記者会見で、「社会保障の機能強化をはかるときには、やはり財源のことを考えてやるのが当然だ」と主張。財政「健全化」に加えて社会保障の拡充のためには消費税増税が必要との考えを示しました。
政府は23日にも「骨太の方針2009」を取りまとめる予定です。
歳出拡大圧力に配慮
「骨太の方針09」 原案を了承
2009年6月17日 朝 日
政府の経済財政改革の基本方針「骨太の方針09」の原案が16日の経済財政諮問会議で了承された。削減への反発が強い社会保障費用については、緊急に予算を投じる方針を新たに示す一方、歳出削減路線の維持も明記した。総選挙を前に与党の歳出拡大圧力は強く、支持率低下で麻生政権の基盤は揺らぐ。「骨太」の重みは今までになく薄れている。
「骨太09」は今後、与党と協議を経て最終案がまとまり、23日にも閣議決定される。麻生首相は自民党が総選挙で打ち出す政権公約(マニフェスト)にも反映したい考えだ。財務省は方針をもとに、10年度予算概算要求基準(シーリング)をつくる準備に入る。
与党や関係省庁との折衝が難航する歳出削減は、06年に小泉政権下で決めた「骨太06」の路線を形式上は維持。ただ、毎年削減・抑制を続けてきた個別の項目のなかでも、社会保障費年2200億円抑制は、医師会などを支持基盤に抱える自民党の反発が強い。
16日の諮問会議では、麻生首相の指示で策定した「最優先課題」を示し、緊急措置として社会保障機能強化の「先行実施」や少子化対策が盛り込まれた。景気対策で行なった09年度補正予算では、介護職員の処遇改善などの社会保障施策も期間限定で盛り込んだが、期限後も行なうことを事実上認めた形だ。
与謝野経済財政相は会議後の会見で、社会保障施策について「総理が特別な枠をつくって対応しろということなので、対応しないといけない」と述べた。「社会保障の持続的な機能強化の財源は消費税」と明言したが、政府が昨年末に決めた「中期プログラム」では消費税の増税時期を景気回復後としている。当面は将来の増税分をあてにしながら、別の財源を社会保障費にあてることになりそうだ。
与謝野氏は「(社会保障歳出の)効率化をしないで野放しで自然増を認めるのが正しいのか」とも述べ、一定の歯止めをかけたい考えも示す。ただ、与党内では「実質的に(歯止め)はない」(園田博之・自民党政調会長代理)との受け止めが大勢を占める。
小池氏 社会保障には半分
参院委 消費税7%増試算批判
2009年6月17日 赤 旗
日本共産党の小池晃議員は16日の参院厚生・労働・財政金融両委員会の連合審査で、経済財政諮問会議が10年以内に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するために消費税の7%引き上げが必要だと試算していることについて、「消費税増税を大企業減税や財政赤字の穴埋めに使うことになる」と追及しました。
小池氏は「試算の消費税増税分7%のうち社会保障機能強化に使うのは何%か」と質問。与謝野馨財務相は「社会保障機能強化のために必要な額は、2015年時点で消費税に換算して3.3から3.5%程度だ」と答えました。
小池氏は「政府の試算でも、増税分のうち社会保障機能強化に使うのは半分程度でしかない」と指摘。「『社会保障のため』といいながら、実際は今までの無駄遣いの穴埋めにも、今年のバラマキで生まれた赤字の穴埋めにも使うことになる」と批判しました。
小池氏は、政府の「中期プログラム」で、法人税の実効税率引き下げもがうたわれていることも挙げ、「大企業減税の穴埋めにまで消費税増税を回すことができる。09年度末までの21年間で集めた消費税は213兆円。その間の法人3税の減収は182兆円だ。こんなことをさらに拡大することは許されない」と強調しました。
「安心社会」 財源は消費増税
麻生首相に報告書を提出
2009年6月16日 赤 旗
政府の「安心社会実現会議」(座長・成田豊電通最高顧問)は15日、首相官邸で会合を開き、報告書を麻生太郎首相に提出しました。経済成長戦略との一体化の中で「安心社会」の実現を図るとし、財源について、「消費税を含む税制改革への行程」を示すよう要請。与野党を超えて「給付と負担のあり方」を討議する会議の設置を提言しました。
医療・介護など社会保障の「機能強化」にかかる公費について、社会保障国民会議の試算を示す形で、2025年で消費税6%分になるとしています。また、負担と給付を示す「社会保障勘定」を創設し、消費税を目的税化し、税収を同勘定に入れる方向の検討を求めました。
報告書の内容は、政府が23日にも閣議決定する予定の「骨太の方針2009」や与党の総選挙公約に反映させる考えです。「骨太09」の原案(9日)は、消費税を11年度から毎年1%ずつ引き上げ、12%にする試算を示しています。
具体的な方策としては、11年度までに@低所得層や子育て世帯に「給付付き税額控除」を導入A法人税引き下げで、非正規労働者の社会保険適用拡大などの処遇改善B子育てサービスの基盤整備で多様なサービス、事業参入促進C社会保障番号の導入――などをあげています。
医療・介護では、@医療資源を急性期に重点化し全体として病床を削減A入院日数を短縮し、医療・介護の在宅化を進めるーーとの方針を示した昨年末の「社会保障国民会議」の報告を、「着実に実行」すべきだとしています。
また、政府の機能を、個人や家庭、地方自治体、民間企業などが担うべきだとして「分権化」の推進をうたっています。
大企業には痛みなし
【解説】 貧困と格差の広がりと、ずたずたにされた社会保障にたいする国民の怒りに直面し、総選挙を前に、麻生首相は、「安心社会」のアドバルーンを上げる必要に迫られています。
その求めに応じて出された安心社会実現会議の報告ですが、その特徴は、並べられた施策が、大企業には痛くないものだということです。
非正規労働者の社会保険の適用拡大も、企業負担が増す分、法人税を引き下げます。低所得者や子育て世帯への給付付き税額控除などの、一般論としては検討に値する施策も、消費税増税が前提です。
「報告書」は、給付付き税額控除の規模を1兆〜4兆円としています。消費税1%で約2.5兆円といわれており、消費税アップで減税は帳消し。増税のめくらましといわざるをえません。
雇用を「安心の扇の要」としながら、対策は「中途採用、職業訓練、職業紹介」など「一生チャレンジし続けることができる条件づくり」という雇用の流動化を前提としたもの。企業に雇用を守らせ、破壊された雇用のルールを立て直す立場はありません。
深刻な状況にある医療・介護も、社会保障の「機能強化」「救急医療の重点化」の名で、病床を減らし、入院日数を短縮して、政府にとってお金のかからない「在宅」化を図る方向で、これも財界の求める方向と同じです。
結局、「報告」は、社会保障の「綻(ほころ)びへの対応」をいいつつ、それを逆手にとって、財界の求める消費税増税を進めるものです。
国民にとっては、「義務と負担の見送りが給付」だとされ、“社会保障を良くしたければ消費税を上げろ”とせまられることになります。
安心社会へ10の提言
政府会議 「給付付き税額控除」など
2009年6月16日 読 売
政府の安心社会実現会議(座長・成田豊電通最高顧問)は15日、首相官邸で会合を開き、「安心と活力の日本へ」と題した報告書を麻生首相に提出した。2011年度までに実施する緊急施策として、低所得世帯や子育て世帯を給付金と減税で支援する「給付付き税額控除」など10項目を提言。安心社会実現の財源について討議する与野党の「円卓会議」設置を提唱した。
首相は会合で、「報告書を基にして(政策を)実行に移していかなければならない。野党とも合意を作っていくことが必要だ」と述べた。首相は報告書の内容を、23日に決定する政府の「経済財政改革の基本方針(骨太方針)2009」や、自民党の次期衆院選マニフェスト(政権公約)に反映させたい考えだ。
報告書では、高齢者支援中心の社会保障を、働く低所得世帯や子育て世帯の支援にも拡充し、「切れ目のない安心保障」の構築を目指すとし、「雇用」「子育て」「教育」「医療」「介護」の5分野の連携が必要だとした。
緊急施策10項目には給付付き税額控除の創設のほか、非正規労働者への社会保険・労働保険の適用拡大、年金などの負担と給付記録を一元的に管理する社会保障番号に納税者番号の役割も持たせることも視野にした「安心保障番号・カード」の導入などを挙げた。
また、「改革に取り組むための行政組織の再編・人的資源の再配分」も盛り込んだ。首相は一時、厚生労働省の分割の検討を表明した経緯があるが、政府・与党内からの反発に配慮し、こうした表現にとどまった。
財源に関しては「消費税を含む税制改革への行程を示す必要がある」と指摘。消費税は社会保障目的税とし、「社会保障勘定」を創設して管理することを提唱した。
「骨太09」の素案 自公で批判続出
社会保障費・消費税率
2009年6月11日 朝 日
政府の経済財政改革の基本方針「骨太の方針094」の素案に対し、10日の自民、公明両党がそれぞれ開いた政調全体会議で、批判が相次いだ。自民党では、社会保障費抑制を掲げた「骨太06」を踏まえることに異論が噴出し、公明党では、内閣府が財政健全化に向けた試算で「消費税率12%」の必要性に言及したことに批判が集中した。
素案は、10年度予算編成の方向として骨太06を踏まえて歳出改革を継続し、社会保障費の自然増を毎年度2200億円削減する考え方を基本的に踏襲する内容。自民党の会議では「できないことにこだわるべきでない」との批判が出た。公明党の会議では消費税について「12%に上げないと健全化できないと受け止められる」との声が上がり、幹部は「12%に誘導したい意図がみえみえ。選挙に負けたいのか」と怒りをあらわにした。
“消費税を12%に” 内閣府試算、経財会議に提出
2009年6月10日 赤 旗
内閣府は9日、消費税率を5%から段階的に12%に増税することで財政「健全化」目標を達成するとしてきた試算を経済財政諮問会議に提出しました。試算は、政府が「財政健全化」の目標としてきた国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の値を計算したもの。経済が順調に「回復」し、消費税率が12%に増税された場合、2010年代末にも黒字化を達成できるとしました。
試算の対象期間は、23年度までの15年間。景気が順調に「回復」する場合、消費税の増税幅が5%と7%の二つのケースでは、基礎的財政収支が15年以内に黒字化するとしました。同3%のケースでは赤字が続くとしました。
同日の経済財政諮問会議では、与謝野馨経済財政担当相が、「骨太の方針2009」の素案を提出しました。素案は、内閣府の試算を踏まえて、これまで「11年度まで」としていた「基礎的財政収支の黒字化」の達成時期を、「今後10年以内」とあらためました。
これは、財政「健全化」を口実に、消費税の大幅増税に議論を導こうとする政府の姿勢を示したものです。今回の試算には法人税率を引き上げたケースは示されませんでした。一方、素案に「着実に具体化」するとされた麻生内閣の税・財政の「中期プログラム」には、法人実効税率引き下げを「検討する」としています。
与謝野氏は記者会見で、社会保障関係費の自然増を毎年2200億円抑制してきた「骨太方針2006」の方針を10年度予算でも「当然貫く」と明言。概算要求基準にも「社会保障抑制路線」を盛り込む考えを示しました。
政府は23日にも、「骨太の方針2009」を決定する予定です。
基礎収支 10年内の黒字化
政府試算 消費税12%が必要
2009年6月10日 読 売
政府は9日、経済財政諮問会議に新たな財政再建目標などを盛り込んだ「経済財政改革の基本方針2009」(骨太の方針)の原案を提示し、合わせて財政健全化に向けた中長期試算を公表した。少子高齢化で社会保障費の増大が見込まれる中で、新目標を達成するには経済成長や歳出削減に頼るだけでは不十分であり、2011年度以降、消費税率を現在の5%から7%引き上げて12%にする必要があるとの判断を示した。
政府が「骨太方針2009」原案で示した新たな財政再建目標は、国と地方の借金(債務)の残高が国内総生産に占める割合(債務残高のGDP比)を20年代初めに引き下げ、国と地方の単年度の財政状況を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス,PB)については「10年以内に黒字化する」という内容だ。
試算では、この目標を達成するには世界経済が10〜11年に順調に回復したとしても、消費税を11年度以降に5%引き上げただけでは債務残高の下落幅はわずかにとどまり、PB黒字化は21年度にずれ込むと指摘。政府がこれまで「標準シナリオ」と想定してきた「消費税10%」での財政健全化は困難だとの見方を示した。
一方、引き上げ幅を7%にすれば、債務残高のGDP比は11年度をピークを迎えた後、着実に減少して23年度には159.8%と09年度の163.3%を下回ると説明。PB黒字化も18年度に達成できるとしている。
麻生首相は9日の会議で、「財政再建目標の達成には歳出改革の継続、成長力の強化、景気回復後の税制抜本改革の着実な具体化が不可欠だ」と述べ、消費税を含む税制改革が必要との認識を改めて示した。
政府・与党は10日から「骨太方針2009」の策定に向けた調整を本格化する。与党内では衆院選をにらんで消費税引き上げ論議を回避したいムードが強まっており、今回の試算を巡って議論を呼ぶ可能性もある。
大幅な消費増税へ布石?
「骨太09」 目標達成「10%超」必要
2009年6月9日 日 経
(解説) 8日明らかになった政府の経済財政運営の基本方針「骨太方針2009」の素案は、これまでの財政健全化目標を先送りする一方、消費税率の大幅引き上げの必要性を言外に訴える内容となった。歳出削減ではこれまで明記してきた「最大限の削減」の表現が削られ、従来の歳出削減路線が緩む懸念もくすぶる。
骨太素案には「消費税」の言葉が一度も登場しない。衆院選を控え「増税」に神経質になる与党に配慮したとみられる。ただ素案が示す新たな目標からは、大幅な消費増税への布石が透けて見える。
9日の諮問会議で民間議員が示す中期的な財政試算によれば、消費税率を15年度にかけて10%まで引き上げる場合でも基礎的財政収支の黒字化は21年度以降にずれ込む。骨太方針で「10年度末までの黒字化」を掲げたことは5%を超す消費税率の上げ幅が必要との考えをにじませたといえる。
素案には「まずは景気を回復」「時宜に応じた検証」など条件付きの表現が随所にちりばめられた。景気や政局の不透明さから財政再建の道筋も描きにくい面もある。
基礎年金の企業負担3.8兆円
全額消費税ならゼロ 大門氏指摘
2009年6月9日 赤 旗
日本共産党の大門実紀史議員は8日の参院厚生労働・財政金融両委員会の連合審査で、基礎年金財源の全額消費税化により企業負担が減ることを示し、政府や民主党がねらう消費税増税を批判しました。
基礎年金の20兆円を全額消費税でまかなうと、消費税率は8%になります。大門氏は、全額消費税にすると、企業が負担している基礎年金部分の保険料負担3.8兆円がゼロになると指摘し、「国民が企業負担分をかぶることになる」とただしました。
与謝野馨財務省は「企業が国民年金の負担分を逃れようとして全額税方式を主張しているとは思いたくない。3.8兆円は企業に負担していただく必要がある」と答弁。大門氏は「(企業は)逃れたいから主張している。日本経団連は企業の社会保険料負担を減らせと強く要望している。そういうものに応えるのはとんでもない話だ」と批判しました。
また大門氏は、ヨーロッパ諸国の企業の社会保障財源に対する負担が高いことを示し、「国際的に見て日本の企業負担は軽い。まず大企業に応分の負担をしてもらうところから財源論を考えるべきだ」と強調。舛添要一厚労相は「企業の社会的責任は考えないといけない」と述べました。
消費税増税の時期くる 民主幹部
2009年6月8日 赤 旗
民主党の大塚耕平参院議員(同党政策調査副会長)は7日、NHK番組「日曜討論」で、消費税増税について「民主党も、しかるべき時期に、消費税を国民にお願いする時期がくる」と述べました。
大塚氏は、同党の鳩山由紀夫代表が「(今後)4年間に(消費税を)上げる議論は必要ない」と述べていることに対し、「議論はするべきだ」と表明。歳出改革などの「無駄をやらない体制」の確立後には、「国民にお願いしなければ財源は確保できない」と語り、社会保障などの財源に消費税増税をあてる考えを示しました。
財政健全化2020年以降に
内閣府試算見通し後退 消費税10%でも
2009年6月6日 朝 日
内閣府は、現在5%の消費税を2011年度以降、段階的に引き上げて10%に増税した場合でも、財政健全化を達成できるのは20年代初めになるとの見通しをまとめる。1月の試算では18年度に達成できるとしていたが、経済危機対策で借金がかさみ、景気後退で税収が落ちたためだ。
政府は昨年末、景気回復を条件に11年度からの消費税増税を決めたが、増税幅は明確にしていない。今回の見通しで財政再建には5%幅以上の消費税率引き上げが必要なことが鮮明になり、今後の議論では増税幅が焦点となる。
週明けに開く政府の経済財政諮問会議で報告する。財政状況の試算は、景気が回復し、11年度以降の消費税を5%増税するケースを想定。それによると、借金返済以外の歳出を税収だけでまかなう「基礎的財政収支」の黒字化は20年代初めになるという。
1月の試算では、消費税を11年度から毎年1%ずつ引き上げ、18年度に黒字化する見通しだった。政府は06年に11年度の黒字化を目標に掲げていたが、戦後最悪のマイナス成長に加え、15兆円の経済危機対策にともなう借金で大幅に後退する。
こうした現状を踏まえ、諮問会議の民間議員は新たな財政再建の目標を示す。まず09年度以降の5年程度で基礎的財政収支の赤字幅を半減させるよう求める。09年度から10年程度先には、債務残高が名目国内総生産(GDP)に占める比率を安定的に下げるよう求める。借金を経済力に見合った水準に減らす。新目標は、月末にまとめる政府の経済財政改革の基本方針「骨太の方針09」に盛り込む方針。
ただ、総選挙を前に与党内には消費税増税の論議を避けたい空気が強く、むしろ社会保障費を積み増すよう求める圧力もある。「骨太09」に明確な財政再建目標を盛り込めるかどうかは不透明だ。
年金財源 消費税増税やめよ
小池議員 国民負担増の実態示す
2009年6月5日 赤 旗
日本共産党の小池晃議員は4日の参院厚生労働委員会で、基礎年金の国庫負担引き上げの財源を消費税増税でまかなう場合、企業の負担が減る一方で、国民の負担が増える実態を示し、年金財源を消費税増税に求めるべきでないと追及しました。
厚労省の試算では、今年、基礎年金の国庫負担率を2分の1に引き上げることにより、基礎年金拠出金に占める企業負担額は、4・2兆円(2009年度)から3・8兆円(09年度)に減ります。
小池氏は「国庫負担引き上げの財源を消費税にすると、家計の負担はどうなるのか」と質問。厚労省の渡辺芳樹年金局長は「勤労者世帯は、すべての階級で負担増になり、低所得者ほど負担が増える。自営業者の場合も、低所得者世帯で負担増になる。年金受給世帯は負担が増えるだけ」と認めました。
また小池氏は、政府が当初、国庫負担引き上げの「安定した財源」に年金課税の強化と定率減税廃止を充てるとしていたことを指摘し、「このうちどれだけ充当されたのか」とただしました。
渡辺年金局長は、4956億円(年金課税強化=1632億円、定率減税廃止=3324億円)だと答弁。小池氏は「年金課税強化と定率減税廃止での増税は国税分で2兆8400億円だ。そのうち17%しか基礎年金に充てられていない。そして今回は消費税増税だという。一枚の証文で2回借金をとるやり方は許されない。国民への約束違反だ」と厳しく追及しました。
歳出引き締め後退 財政審 再建、消費増税頼み
2009年6月4日 朝 日
財務相の諮問機関の財政制度等審議会(財政審)は3日、10年度予算編成に向けた意見書を公表した。経済危機を受け、これまでの「引き締め路線」の軌道修正が目立つ。政府の経済財政諮問会議が着手した財政再建の新目標づくりも増税が前提。高齢化や格差拡大で社会保障費の抑制は難しくなり将来の消費税アップは避けられないとの思いがちらついている。
「財政規律を確保できる形で考えてほしい」。財政審西室泰三会長は、10年度の予算編成の基本的な考え方を示した意見書を与謝野財務相に手渡した後、記者会見でこう説明した。
10年度予算は09年度予算よりも税収減が確実で、意見書は「公債依存度が大幅に上昇する見込みだ」との見通しを示した。「非効率的な歳出の改革を先行すべきだ」(財務省幹部)との考えから、とりわけ医療と大学に重点を置き、具体的な問題を提起した。
医療分野では、地域間や診療科目による医師の偏在を取り上げ、中央社会保健医療協議会(中医協)が決めている診療報酬の配分方法に一因がある、と指摘。10年度の改定で、開業医と勤務医の待遇差の是正などを求めた。大学予算については、国立大学法人に、横並び意識を捨てて研究や教育成果を評価した上で予算の配分を決める「成果主義」を強化することを促した。
もっとも、一般会計の25%を占め、少子高齢化で膨らむ社会保障費については、昨年までの歳出抑制路線から大きくトーンダウン。前年の意見書には、自然増を毎年2200億円ずつ抑える数値目標が盛り込まれたが、今年は数値を明示していない。
09年度予算では社会保障費の抑制目標は事実上崩壊し、経済危機対策では「安全・安心」が旗印となっている。西室会長は「具体的に言っていないのは、『骨太09』で示してほしいからだ」と諮問会議の判断にゲタを預けた。
一方で意見書は、将来世代へのツケ回しを減らすため、歳入増の必要に言及。「安定財源の確保が一刻も早く求められている」とした。ただ、財源として有力視される消費増税については、具体的な言及を避け、将来の政府方針の紹介にとどまった。総選挙が近い状況を踏まえ、与野党の対立をあおって政局を揺さぶりかねないとの判断だが、財政の「お目付け役」としては物足りない中身だった。
財政審が建議 消費税の増税迫り 社会保障抑制強調
2009年6月4日 赤 旗
財政制度等審議会(財務省の諮問機関、西室泰三会長)は3日、「2010年度予算編成の基本的な考え方」とする意見書(建議)をとりまとめ、与謝野馨財務相に提出しました。社会保障財源を口実に、消費税増税を強く促すとともに、社会保障の抑制路線を堅持することを求めています。
意見書は、社会保障制度の「安定財源確保が喫緊の課題」とし、消費税増税を盛り込んだ政府の「中期プログラム」を「しっかり実行していくことが必要不可欠」としています。
一方、社会保障関係費の伸びを毎年2200億円抑制してきた政府の「骨太の方針2006」の「基本的な考え方の重要性はいささかも変わらず、むしろ一層高まっている」と強調。歳出「改革」に引き続き取り組むことが必要だと述べています。
そのうえで、社会保障について給付と負担は表裏一体」だとして、「給付を抑制しないのであれば、保険料・税負担といった国民負担は増加し、負担の増加を抑制するのであれば給付を削減しなければならない」と明記。社会保障給付を抑制しなければ、消費税の増税幅が大きくなるとの考えを示しました。
同日の記者会見で西室会長は「(2200億円という社会保障抑制の)具体的数値をそのまま残すといっているわけではないが、基本的精神はちゃんとしっかりやろうということだ」と述べました。

0