消費税をめぐる情勢と増税発言
法人税5%引き下げ明記 経産省 概算要求を発表
2010年8月31日 赤 旗
経済産業省は30日、2011年度予算概算要求を発表し、現行30%の法人税率を5%引き下げることを求めました。昨年まで経産省は、国税である法人税と、地方税である法人事業税、法人住民税を加味した法人実効税率(約40%)の引き下げについて「検討事項」としていました。今回、国税の法人税を引き下げ幅まで明記して要求するのは初めてのことです。
法人実効税率の引き下げをめぐっては、経産省が税制「改正」について各種団体から要望ヒアリングをおこなっており、日本経団連が「すくなくとも5%程度」引き下げることを要求しています。また、同ヒアリングでは日本国内の米国企業経営者の集まりである在日米国商工会議所も法人実効税率の引き下げを求めています。
経産省は法人実効税率の引き下げを「新成長戦略」の“目玉”にしたい考え。財界・大企業の要望にこたえたものです。一方、財界は、消費税率の引き上げを求めており、庶民増税によってさらなる大企業減税を迫るという身勝手な姿勢を変えていません。
消費税論議 早急に 内閣府参与・小野氏
2010年8月25日 読 売
菅首相の経済ブレーンとされる小野善康・阪大社会経済研究所長、内閣府参与は24日、CS放送「日テレG+(ジータス)」の番組収録で、「消費税率を2%引き上げれば160万人の雇用が生まれ、失業率は2・8%に下がる」との試算を披露し、税収増への論議を急ぐよう訴えた。
また、2011年度予算編成に関して、「雇用がどれだけ増えるかを基準に政策を取捨選択すべきだ」との考えを、菅首相に伝えたことを明らかにした。円高対策として政府の市場介入や日本銀行の金融緩和を求める声が市場で高まっていることには、「一時的な効果はあるが、それで経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が変わることはあり得ない」と述べ、政府が雇用・内需拡大策を打ち出すべきだとの考えを示した。
■「消費税増税発言が敗因」
2010年8月20日 朝 日
民主党を支持する連合(古賀伸明会長)は19日、先の参院選の選挙総括を発表した。同党の敗因について、公示直前の菅直人首相の消費増税発言を挙げ、「大きく議席を減らした一因となったことは否定できない」と指摘した。
獲得議席が改選前の54を大きく割り込んで44と大敗したことについて「民主党の政権運営に対し、国民が厳しい審判を下した」と分析。菅首相の「消費税10%」発言については「税率ありきと受けとめられる発言が唐突になされ、税金還付まで踏みこんだことは、選挙戦略や政策論の観点から慎重な対応は必要だった」と批判した。(後略)
法人税 来年度5%下げ要求
経団連、実効税率「20%台半ばへ」言及
2010年8月19日 赤 旗
日本経団連(米倉弘昌会長)は、来年度の税制「改正」について経済産業省が行った各種団体からの聞き取りの席上、法人実効税率(現行約40%)を5%引き下げることを要望していたことが、公開された議事録で分かりました。
税制「改正」に関する経済産業省の各種団体からの聞き取りは、8月3日から6日にかけて行われました。経団連からの聞き取りは、初日の3日でした。
経団連は、「法人税負担の軽減は経済界の最重要要望であります」と強調。来年度の税制「改正」で法人実効税率を「すくなくとも5%程度」引き下げるように要求しました。さらに今後、「早期に30%まで引き下げる」よう求めました。その上で「20%台半ば程度へ速やかに引き下げるべきである」と発言。いっそうの引き下げを求めました。
経団連が4月13日に発表した「成長戦略」では30%程度に「早期に引き下げる」としていました。「20%台半ば」への引き下げを公式に求めていたことが分かったのは初めてです。
これに対し増子輝彦副大臣は、「来年度税制改正の中では5%きちっと下げたいということは私ども政務三役で一致した基本方針」と発言。「これはぜひ税調の中でも一丁目一番地としてしっかりと今回やっていきたい」と応じました。
消費税増税について経団連は席上、「超党派で消費税を含む税制抜本改革のご議論を速やかに開始いただきたいと切望する」とし、自民党などと共同して消費税増税を強行するよう求めました。
年内に消費税協議を
2010年8月19日 赤 旗
民主党の城島光力政調会長代理は18日、時事通信のインタビューに応じ、消費税増税問題について、「デフレ解消の前に消費税アップはすべきではない」としながらも「一方で財政悪化も許されない。税制の抜本改革は避けて通れない課題だ。社会保障とも関係する。(党政調での議論は)遅くとも9月中にはスタートさせる。年内には野党との協議を申し入れたい」とのべました。(後略)
民主党代表選の動き 出馬に海江田氏「呻吟している」
2010年8月18日 赤 旗
9月の民主党代表選に意欲を示していた海江田万里衆院議員は16日夜、BS放送の番組で「出るか出ないかは本当に難しいところ。呻吟(しんぎん)している」「簡単にやりますと軽々に手を上げるわけにはいかない」と述べ、出馬に慎重な姿勢に転じたことを明らかにしました。
一方で海江田氏は、消費税増税を中心とした「財政再建」や「デフレ脱脚」が、民主党代表選の争点になると指摘。「自民党(政権)の時は経済財政諮問会議という司令塔があり、トヨタ会長がアドバイスをした。経済界の重鎮を入れてデフレ脱却、財政再建を描くことも必要だ」と、菅直人首相の「国家戦略室」縮小の方針に異議を唱えました。
民主党首脳陣の罪深さ 消費税増税反対請願たなざらし・・・紹介議員になりながら
2010年8月17日 赤 旗
一束の請願書が審議未了のまま衆議院に残されています。平成20年10月2日受理「消費税率の引き上げ・大衆増税反対に関する請願(83号)」。千葉県調布市の男性を筆頭署名者に2016人の署名とともに「消費税率の引き上げを行わないこと」を求めています。国会その他に対する請願は憲法16条で保障される国民の権利。国会への請願には国会議員の紹介が必要条件(国会法79条)です。前出の請願者の紹介議員は民主党の野田佳彦衆院議員、現財務相です。
主要メンバーが
野田財務相は7月の参院選の民主党選挙公約に消費税増税を盛り込むことを強く主張した一人。「民主党マニフェストづくりが進んでいます。私は、財政健全化の項目を新たに加えること、各種政策は安定財源を確保しつつ実施することを必ず明記すべき」(5月16日同氏「かわら版」といっていました。財政健全化、安定財源確保とは消費税増税を示す財務省用語です。
野田財務相だけではありません。消費税増税反対の請願の紹介議員を最近2年に限ってみると、仙石由人官房長官、前原誠司国土交通相、古川元久官房副長官、枝野幸男幹事長、細野豪志幹事長代理、平野博文前官房長官ら菅内閣・民主党の主要メンバーの名が見られます。
正反対の公約に
過去7年間にさかのぼると衆参両院に提出された消費税増税反対署名の12.6%は民主党議員を通じています。ちなみに82.7%は日本共産党議員が紹介議員です。
請願の紹介議員となりながら正反対の消費税増税を公約に掲げた民主党。有権者への罪深い背信です。
税制を問う 消費税は目的税で
藤井裕久・元財務相
2010年8月15日 読 売
菅首相の「消費税率10%」発言は、民主党がこれまで積み上げてきた税制の議論からするとオーバーラン(行きすぎ)だ。
消費税は大きな政治課題で、理念や議論と「増税の実行」との間には相当の距離がある。大平内閣の「一般消費税」、中曽根内閣の「売上税」、そして細川内閣の「国民福祉税」は理念が世論の動きに先行し、失敗した。菅氏も同じ失敗を繰り返してしまった。
消費税増税を実現するためには、議論しておかなければならない前提条件がいくつかある。消費税は目的税でなければならない。基礎年金などの社会保障費に充てるのが暗黙の了解だ。逆進性対策としての還付のあり方、地方と国の配分も考えておかねばならない。国会議員の定数削減もパッケージだ。国民に痛みを強いるのに、国会議員が無傷というのはおかしい。
9月の党代表選は首相を選ぶ選挙であって、「顔見せ興行」的なものであってはならない。その勝者は、消費税についてはまず制度設計や議員定数削減に丁寧に取り組むべきだ。実際に増税に結び付けるには、そうした点をしっかりまとめたうえで、次期衆院選で有権者に問う必要がある。
消費税論議 自民が着手
2010年8月14日 読 売
自民党は税制調査会(野田毅会長)で、税制改正大綱策定に向けた議論に着手した。同党は参院選で消費税率を「当面10%」に引き上げることを公約しており、引き上げ方法などの詳細な制度設計に踏み込めるかどうかが焦点だ。
税調は今月6日に開いた、党政調の「安心社会研究会」との合同会議で参院選後初めて税制論議を行った。今月下旬にも会議を再開し、年末までに大綱をまとめる考えだ。
増税議論今月中にも
2010年8月10日 赤 旗
民主党の城島光力政調会長代理は8日のNHKの討論番組で、消費税増税を含む税制改革に関する与野党協議について、「遅くとも年末ごろからきちっとした論議ができるようなピッチで進めたい」と述べ、年内の協議開始を目指す考えを明らかにしました。
また城島氏は、民主党内での消費税議論に関し「社会保障と税制抜本改革のプロジェクトチームを政調の下に今月中にでも立ち上げ、活動をスタートしたい」と話し、9月の党代表選を待たずにはじめる方針を示しました。
一方、自民党の林芳正参院政審会長は同番組で、与野党協議について「(民主党が)具体的な数字を出せば、いろんな議論ができる。呼びかけられれば応じる用意はある」と述べました。
首相、消費増税に執念 超党派協議を求める
2010年8月6日 赤 旗
菅直人首相は5日、参院予算委員会で消費税増税に向けた超党派協議への執念を見せました。
「公明党も社会保障(財源)に関しては消費税を引き上げることもありうると言っているわけだから、『自分たちはこう考えるけれどもどうなんだ』という形でご意見をいただければありがたい」
公明党の山口那津男代表の質問に菅首相はこう答え、消費税増税を含む税制「抜本改革」の超党派協議に向け、具体的な提案を公明党に求めました。
山口氏は、「与党の議論もまとまらず、連立与党の合意もない。制度設計の中身もぐらぐらしている。そんな状況で具体案をだせなんて、責任のあり方を取り違えている」と述べました。
一方、たちあがれ日本の片山虎之助参院幹事長は、「財政再建では一歩も引かないとあなた(総理)はいわれる。消費税の問題は避けて通れない」と断行を求めました。菅首相は、「できれば超党派での議論をお願いしたい気持ちは変わってない」と応じました。
「国民は消費税引き上げやむを得ないと思っている。政治家が毅然(きぜん)としていろんなことを示さないといけない」と述べる片山氏に対し菅首相は「激励をいただいた。信念を持って望みたい」と応えました。
経団連 民主と対話
社会保障と税財政 一体改革で一致
2010年8月6日 読 売
日本経団連は5日、昨年9月の政権交代後、初めて民主党との「政策対話」を開いた。両者は、社会保障と税財政の一体改革に向けた超党派議論の必要性では一致したが、環境税導入など企業に負担を強いる政策では意見の違いもあった。今後、どこまで対話が政策に反映されるかが注目されることになる。
鳩山政権下では、民主党の小沢一郎・前幹事長を中心に、自民党と蜜月を続けてきた経団連への批判が強く、政策責任者による意見交換の場はなかった。菅首相は協調路線に転換し、対話が実現した。
この日は、経団連の米倉弘昌会長が「税財政と社会保障制度の一体改革は待ったなしの課題だ」と述べ、超党派による協議の場をつくるよう要請した。玄葉政調会長も「(参院選の大敗で)消費税は議論自体が否定されたわけではない」と応じ、本格的な論議を秋から始める考えを示した。(中略)
法人税についても、ここに来て両者の意見の違いが鮮明になってきた。経団連は、約40%と主要国でも突出している高い日本の法人実効税率を5%程度下げるよう求めている。菅政権も、実効税率を下げる方針を示しているが、同時に、研究開発費の優遇税制など租税特別措置の見直しを含めることを検討中だ。
経団連がこれを警戒したためか、焦点となるはずの法人税はこの日は議論にならなかった。重要政策に経団連の意向を反映させるための場にできるかどうかは、まだはっきりしない。
消費税増税を推進
経団連と民主が一致 秋から議論
2010年8月6日 赤 旗
日本経団連と民主党は5日午前、経済運営について意見交換する政策対話を都内のホテルで開きました。経団連の米倉弘昌会長は「税財政・社会保障制度の一体改革は、日本の将来を左右する課題だ。超党派で協議する仕組み整えてほしい」と述べ、与野党が強調して消費増税も含めた議論に着手するよう強く要請。民主党の枝野幸男幹事長は「財政安定のための改革に努める」と応じました。
経団連と民主党の政策対話は、衆院選を控えた昨年8月以降1年ぶりで、民主党政権となってからは初めて。民主党からは、玄葉光一郎政調会長らも出席しました。玄葉政調会長は席上、7月の参院選での与党敗北に関連して「消費税の論議自体が否定されたわけではない。秋口から議論を開始したい」として、党内にも批判のある消費増税を含め、税制・社会保障の「改革」を検討する姿勢を表明しました。政策対話ではこのほか、新たな成長戦略の早期実行、地球温暖化対策などで双方が考えを述べ合いました。
経団連はこれまで、消費税増税を含む税制「改革」に「超党派」で取り組むよう求めてきました。今回の対話は、参院選で示された、消費税率引き上げ反対という国民の審判を無視して、消費税増税スケジュールを「既定路線」として推進する姿勢を改めて確認したものです。
首相、消費増税に固執
参院予算委で答弁 “不退転の決意”
2010年8月5日赤 旗
菅直人首相は4日の参院予算委員会で、「財政健全化」問題について「不退転の決意で臨んでいく」と述べ、あくまでも消費税の増税方針に固執する姿勢を示しました。自民党の林芳正参院政審会長に対する答弁。
林氏は、消費税増税推進の立場から質問。参院選後の菅首相について「いばらの道を選ばれたという決意が伝わってこない」と述べ、「リーダーシップを発揮する覚悟はあるのか」と迫りました。
これに対し、菅首相は「歴史に恥じない行動をとりたい」と呼応。「参院選結果は民主党にとっては厳しいものだったが、財政健全化は、どなたが総理をやろうとも回避することはできない」と語り、参院選で示された民意に背いて消費税増税に固執する姿勢を示しました。
菅首相は、今後、政府税制調査会や民主党政策調査会で議論をすすめていくと述べ、「これまで財務大臣時代に申し上げてきた考え方をしっかりと踏まえ、財政健全化のために不退転の決意で臨んでいく」と強調しました。
消費増税「付則」削除を
佐々木氏追及に 財務相は否定
2010年8月4日 赤 旗
日本共産党の佐々木憲昭議員は3日、衆院財務金融委員会で質問し、「(消費税は)4年間は上げない」とする民主党の公約についてただしました。野田佳彦財務相は、「菅首相の発言も、(消費税の)議論はしてもいいが、基本的にはその趣旨と同じだ」と答えました。
佐々木氏は、「政権担当期間中に消費税を引き上げないとするなら、消費税増税について『11年度までに必要な法制上の措置を講ずる』と明記した2009年度税制『改正』法付則104条は削除するのが当然だ」と追及しました。
野田氏はこれに対し、「消費課税、所得課税、法人課税、資産課税、それぞれ抜本的な見直しをするのが、政府の既定方針だ」と答弁。「(付則の扱いは)その抜本改革の議論がどうなるかによって中身が変わってくる。12年3月までの段階で検討する」と、付則の即時廃止については否定しました。
佐々木氏が、付則を廃止しないなら「政権担当期間の4年中に増税法案を出す可能性もあるのか」とただしたのに対し、野田氏は「税制『抜本改革』の議論次第だ。大きな税制『改正』を伴う場合は、当然、国民に信を問う」と開きなおりました。
「4年間上げない」という公約にあいまいな態度をとる野田氏に佐々木氏は、「重大な答弁だ。公約違反の可能性もあるということだ」と指摘しました。
国会論戦の詳報 3日の衆院予算委から
■税制改革
2010年8月4日 読 売
自民党・田村憲久議員 首相は基本的に消費税率を上げるべきだと考えているのか。
菅直人首相 今の日本の財政は、社会保障の増大を赤字国債で毎年埋める傾向になっ ている。そうしたことを考えた時、消費税も含めた税制全般の議論は必要だ。参院選公約で、消費税の議論を超党派ですると提案したつもりだったが、明日にも消費税を上げるという誤解を招いた。財政再建と同時に社会保障も考え、消費税を超党派的な立場で議論してほしいと思っている。
公明党・井上義久議員 消費税についての発言を「不用意だった」ですませていいのか。
菅直人首相 私が話したことが、国民の混乱を招いた点は反省している。「不用意」 という言葉を使ったのは、政府税制調査会の結論が出ていないのに発言したのは不用意だったという意味だ。(消費税の)議論が必要ない、議論をやめようと言ったつもりはない。
共産党・笠井亮議員 所得税の最高税率を元に戻すことが必要だ。
菅直人首相 所得税の最高税率が引き下げられ、格差が広がった。再配分機能を強めることも念頭に、年末までの税制改正に向け、政府税調に議論をお願いする。
消費税増税で菅政権の姿勢批判
“大連立の危険ある” 市田書記局長が記者会見
2010年8月3日 赤 旗
日本共産党の市田忠義書記局長は2日、国会内で記者会見し、同日の衆院予算委員会で始まった基本的質疑の受け止めなどを問われ、消費税増税や米軍普天間基地問題などで、参院選で示された民意に背き、自公政権と変わらない立場をとる菅政権の姿勢を批判しました。
市田氏は、同委で菅直人首相が、自民党の谷垣禎一総裁との質疑のなかで、自民党から消費税の増税を含む「財政健全化責任法案」についての提案があれば、「真摯(しんし)に受け止め、前向きに検討するよう党内にも指示したい」と述べたことを指摘。「消費税増税問題などでの事実上の『大連立』ができる危険がある」と強調。「“ねじれ”解消という名目のもとに、悪政を国民に押しつけるような大連立ということがあってはならない」と述べました。(後略)
予算委質疑 首相は消費税から逃げるな・読売社説
2010年8月3日 読 売
菅政権の発足後、初の本格的な国会論戦の場である衆院予算委員会が始まった。
自民党の谷垣総裁は、消費税問題を中心に、菅首相の見解をただした。
首相は「財政再建から引くつもりはない」と強調しながら、消費税については、当面、民主党政策調査会の議論に委ねる考えを繰り返した。党内で結論を出す時期も明言を避けた。
参院選の公約発表時には、首相は、自民党が掲げた税率10%への引き上げを参考にすることや、今年度中に税制の抜本改革案を取りまとめることなどを具体的に語っていた。首相の発言が大きく後退しているのは明らかだ。
財政の健全化と社会保障財源の安定的な確保のためには、消費税率を引き上げるしかないことは、多くの国民が理解している。首相が消費税問題で逃げの姿勢を取ることは許されない。
谷垣総裁は、先の通常国会で廃案となった財政健全化に関する自民党の法案を、秋の臨時国会に提出し直す意向を表明した。審議に入るなら、民主党との修正協議に応じるとも述べた。
法案には、基礎的財政収支を2020年度までに黒字化する目標などが盛り込まれ、菅政権が6月にまとめた財政運営戦略とかなりの部分が共通する。
これをきっかけに、税財政改革に関する超党派協議を始めることも可能なはずだ。
にもかかわらず、首相は「真摯に受け止め、前向きに検討するよう党に指示したい」と答えるのが精いっぱいだった。
民主党には、小沢一郎・前幹事長のグループを中心に消費税論議を牽制する勢力がいる。9月の党代表選を前に、首相は、再選反対の声が党内に広がることを警戒して、慎重な言い方をせざるを得なかったのだろう。
だが、首相がそんな及び腰の姿勢では、超党派協議はいつまでも始まらない。財政への危機感が本物なら、党内論議を急ぐよう指導力を発揮するのが筋だろう。
米軍普天間飛行場の移設や「政治とカネ」の問題でも、首相の答弁は具体性を欠き、あいまいなものに終始した。
“内憂”に気を取られて安全答弁を繰り返していては、ねじれ国会の打開に不可欠な野党との協力関係は築けない。政権の求心力も高まらず、党代表選での再選戦略にもマイナスでしかあるまい。
首相はもっと攻めの姿勢で国会論戦に臨むべきである。
首相、自民に審議協力要請
初の予算委、谷垣氏と論戦
2010年8月3日 朝 日
菅直人首相は2日、就任後初めての衆院予算委員会に臨んだ。自民党の谷垣禎一総裁との論戦では、参院で少数与党となったことを踏まえ、「参院で野党多数になり、与野党の合意を形成しなければ実行できない。丁寧な議論が必要だ」と述べ、国会運営で協力を呼びかけた。
首相は消費税について、社会保障目的税とすることを改めて表明。「社会保障と消費税は一体で議論したい。社会保障以外に消費税を使うことを軸とした提案では全くない」と語った。消費税を含む税制改革案のとりまとめ時期については「党の方で議論を頂く。いつまでに結論を出すという期限を切ることは改めたい」と述べた。
谷垣氏が自民党が準備している財政健全化法案への同調を求めると、首相は「前向きに検討したい」と応じた。首相は基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を2020年度までに達成するとの目標を民主、自民両党が掲げていることを挙げ、「どうやったら実現できるかを与野党で国会の場で議論し、一つの方向性が出てくればありがたい」と述べた。(後略)

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