消費税をめぐる情勢と増税発言
首相、法人税5%下げ指示
2010年12月14日 赤 旗
菅直人首相は13日、首相公邸で野田佳彦財務相、玄葉光一郎国家戦略担当相と会い、焦点となっている法人税減税について、2011年度から地方税を含めた「法人実効税率」を5%引き下げるよう指示しました。
法人税減税をめぐっては、政府税制調査会で、代替財源について議論が迷走してきました。その後、関係閣僚による調整が行われてきました。
政府は16日にも2011年度税制「改正」大綱の閣議決定を予定しています。
法人税5%下げ、政府決定…投資・雇用促進
2010年12月14日 読 売
政府は13日、2011年度税制改正の最大の焦点になっていた法人税減税について、国と地方を合わせた法人税の実効税率を5%引き下げ、35%強とすることを決めた。
法人税減税を巡っては、税収減を補う財源について政府内で意見が分かれていたが、菅首相が最終判断した。
菅首相は同日夜、「思い切って5%引き下げ、経済界には下がった(ことで生じた)お金で国内投資や雇用拡大をしてほしい」との考えを強調した。ただ、財源については言及を避けた。
玄葉国家戦略相や野田財務相ら関係閣僚は同日夜、菅首相に、「3%」案と「5%」案を持ち込み、判断を仰いだ。これに対し、首相は「デフレ(脱却)と成長と雇用だ」と言って5%を選んだという。
法人税の実効税率は現在40・69%だ。5%下げると、約1兆5000億円の減収が見込まれる。財務省は税収減を補う財源の確保を求め、少なくとも半分は企業の税負担増で賄う必要性を主張した。これに対し、経済産業省は将来の税収増に期待する考えを示し、意見が平行線をたどっていた。実効税率の5%引き下げに当たり、財源となる企業の税負担増は6500億円前後にとどまるとみられる。
消費税封印 遠い抜本改革
2010年12月14日 朝 日
菅直人首相が法人税の実効税率の5%幅の引き下げを指示し、2011年度税制改正に盛り込む主要税目の見直し案が固まった。「経済成長」を旗印に企業減税に踏み切る一方、個人では富裕層を中心に負担増を求める内容だ。16日の税制改正大綱の閣議決定まで、財源のつじつま合わせの作業が続く。
財源かき集め帳尻合わせ
「ここは思い切って5%下げたい」13日夜、首相公邸。菅首相は減税の財源をめぐって調整が難航していた法人税率の引き下げについて、自らの「政治決断」であることを強調した。
とはいえ、実効税率の5%幅引き下げで、税収は国と地方合わせて1・5兆円減るのに対し、減税分を穴埋めする財源は6500億円しか確保できていないのが実態だ。国の財政は巨額の借金を抱え、金融危機後の景気後退で税収が伸び悩むなか、大幅な実質減税は「両刃の剣」でもある。税率を下げても、企業がお金をため込むだけで設備投資や雇用の拡大に使わなければ、「成果」にはつながらないからだ。
そもそも、菅首相は6月の就任時に消費税増税の方針を示し、早期に税制の抜本改革に着手する意向だった。だが自らの消費税をめぐる発言のブレで参院選に大敗し、増税論議は「封印」。法人減税のための財源確保を難しくした。
個人向けの増税も、財源のかき集めの色彩が強い。財務省の五十嵐文彦副大臣は13日の記者会見で「これまでの税制は所得の高い人に有利な仕組みで、(所得の)格差拡大を生んできた。行過ぎた部分の是正は急務であり、前進したと思う」と説明。民主党が掲げる「格差是正」の理念に沿ったものだが、税金を取りやすい富裕層に負担増を求めるだけに終わった側面は否めない。
来年度改正では見送りが決まった配偶者控除の高所得者向けの所得制限案も、子ども手当を増額する財源を確保するために浮上したものだ。結局、給与所得控除などの縮小で財源にめどはつけたものの、配偶者控除の論議も「財源ありき」で、深まらなかった。
首相は10日、年金など社会保障制度の改革と消費税の増税を含む税制改革の具体案を、来年6月までにまとめる方針を示した。消費増税の封印を解き税制の抜本改革に着手できなければ、所得税の税率構造の見直しなどの実現は難しい。結局は毎年、財源探しと「小手先」の税制改正を繰り返すことになりかねない。
政府税調議論 法人減税 矛盾噴出
「このままでは個人に増税、法人に減税」民主幹部も嘆く
2010年12月12日 赤 旗
2011年度税制「改正」議論が大詰めを迎えています。「新成長戦略」の目玉として菅直人首相が指示した法人実効税率の引き下げをめぐる議論からは、財界・大企業の身勝手さと、その言いなりになって混迷を深める菅政権の姿が鮮明になっています。
身勝手財界、言いなり菅政権
経済産業省が主張する法人税率5%引き下げの財源をめぐって、政府税制調査会の議論が迷走しています。経産省がその代替財源を示したものの、その規模は、わずか5000億円程度。財務省が主張する1兆数千億円には程遠いものでした。
「どこかの党が何かやたらと演説をぶっているようですが、このままいくと、個人に増税、法人に減税というイメージを拭い去ることはできない」。民主党税制改正プロジェクトチームの中野寛成座長は、11年度税制「改正」で所得税の控除「見直し」が焦点となっていることも意識し、9日の会合でこう指摘しました。
減税は内部留保に
「庶民に増税、大企業に減税」との政権の姿勢を批判してきた日本共産党の主張を政権・与党の幹部自身が認めざるをえない状況になっています。
財務省が政府税調に示した資料では、法人税引き下げ分を内部留保にまわすとする企業が最も多く、25%を超えています。
政権内部からも法人税減税の効果を疑問視する声も出ています。
一貫して法人税率(国税)引き下げを求める経済産業省に対し、財務省は、研究開発減税など大企業に対する別の優遇税制を見直すことによって、減税財源を確保することを求め続けています。
ところが、財界はこうした議論に激しくかみ付いています。
“まず消費税増税”
法人税の5%引き下げを強く求める日本経団連の米倉弘昌会長は、「課税ベース拡大ということを言うのだったら、それ(=法人税率引き下げ)はもう結構ですと言わざるを得ない」と猛反発。法人税減税の穴埋めは、企業以外への増税に求めよという姿勢です。
大畠章宏経産相は7日の記者会見で「あくまでも法人税率5%引き下げという基本方針で進んでいく」と固執しています。
米倉氏は7日の記者会見で、法人税減税の意義を強調する一方で、「消費税を上げるということをまずやったらどうだ」と提起しました。財界・大企業に言われっぱなしの民主党政権では、国民生活が破壊されかねません。
社会保障と税―国民本位の与野党協議を
2010年12月12日 朝 日
政治が党派的な利害を超えて取り組むべき重要な課題がある。
今後の社会保障の姿とその財源をどう確保するか。給付と負担のありようを、国民本位で考えることだ。
菅政権と民主党は、社会保障と税制の一体改革を進めるうえでの基本的な考えをまとめた。
その軸になっている有識者検討会の報告では、消費税を社会保障制度の基幹財源の一つであると明示した。同時に、給付と負担の関係を個人ごとに見えやすくする共通番号制度の導入も打ち出した。
社会保障の高齢者偏重主義を改め、雇用や貧困問題、子育てなどを重視することも新方針として盛り込んだ。負担感がつのる若い世代への支援を強化し、納得が得られる仕組みをつくっていくという姿勢である。
こうした方向づけは、いずれも妥当なものであるといえよう。
年金などの現金給付に重点を置くか、それともサービスなどの現物給付に軸足を置いていくのか。教育政策との連係はどうするか。議論不足の点も目につくが、そこはむしろ今後の課題として、開かれた検討の場で議論を深めていってもらいたい。
社会保障の給付と負担のあるべき姿については、専門家などの議論は出尽くした感すらある。いま問われているのは、実現に向けた政治全体としての力量ではあるまいか。
その点、今回の報告では野党への配慮が目立っている。具体的な数字はなるべく入れず、選挙公約などで民主党が示してきた独自の年金改革案などへの言及も避けた。
しかも2008年の「社会保障国民会議」や09年の「安心社会実現会議」といった自公政権時代の議論を踏まえた内容であることを強調。社会保障や税の問題を政争の具にしないよう、早期に常設会議を設けるよう提案し、「与野党協議へ」の思いが強くにじみ出ている。
与野党間の協議を通じて超党派の合意をつくり出すことが国民の利益にかなう、という視点に立ってのことでもあろう。大いに評価できる。
政権交代が現実のものになった。首相が短期間で交代している現実もある。社会保障制度の再構築について、与党が入れ替わるたびに方針が変わるのでは、大がかりな改革はできない。財源の確保を軸とする安定的な制度づくりは困難をきわめる。
むろん、与野党協議の場作りは一筋縄ではいかない。05年には、年金改革をめぐる協議の場が国会内に設けられたが、選挙戦を前に自然消滅してしまった経緯がある。
だが、社会保障と税の一体改革は待ったなしの状況だ。未来世代への責任感を、政治全体で共有してほしい。
民主 消費税協議に意欲 「与野党協力」狙う
2010年12月12日 読 売
政府・民主党が、社会保障の安定的な財源としての消費税率引き上げ論議に野党を呼び込もうと必死になっている。「社会保障は一つの党だけの力で大きな課題を越えることは大変困難だ」
菅首相は10日の政府・与党社会保障改革検討本部でこう強調し、野党との連携に強い意欲を示した。検討本部がこの日決定した基本方針には、消費税率引き上げを含む税制の抜本改革案の来年半ばまでの策定に向け、「超党派の常設会議設置も含め、野党各党に協議への参加を呼びかける」という項目が盛り込まれた。
財政悪化や少子高齢化が進む中、社会保障の改革は急務だ。首相が超党派協議に力を入れるのも、大きな改革を実現して政権の実績にするためだが、首相の狙いはそれだけではなさそうだ。「消費税論議を与野党協力の枠組みにつなげ、ねじれ国会を打開したい」という思惑も透けて見える。
首相は9日、新党改革の舛添代表と都内で会食した。元厚生労働相の舛添氏は超党派会議設置に前向きな考えを示したという。11月に首相公邸を訪れたたちあがれ日本の与謝野共同代表も常々、財政再建のための与野党協議を呼びかけている。首相周辺では「首相には消費税論議を通じて両党を引き寄せることで、野党の足並みを乱す狙いもある」という見方がでている。
自公は「そっぽ」
ただ、最大野党の自民党はは「仙谷官房長官と馬淵国土交通相への問責決議を無視しておいて、『もみ手』されても困る」(幹部)と協議参加に否定的だ。公明党の山口代表も「政府・与党が議論してまとめたうえで、野党に呼びかけるべきだ」としている。
民主党は福田政権当時、社会保障と消費税のあり方に関する与野党協議機関設置を拒否した。政府関係者からは「与党時代のツケが回ってきた」という声も出ている。
■ 消費税は社会保障に
2010年12月10日 朝 日
公明党が18日発表する「社会保障トータルビジョン」で消費税の使途を社会保障分野に限定するよう提言していることがわかった。消費増税に踏み切る際は、税額控除制度や複数税率を実施し、低所得者の負担増に配慮するべきだと主張している。消費税論議を封印している菅政権の反応を見極め、今後のつきあい方を探る狙いもある。
■ 自民が消費税10%明記
2010年12月10日 朝 日
自民党は9日、来年度税制改正の「基本的考え方」をもとめた。参院選の公約を踏襲し、消費税を10%台に引き上げ、法人税率を20%台に引き下げることを明記。野田毅税調会長は、来年の通常国会で審議される政府案について「我々に大幅に寄って来なければ賛成できない」と述べた。
主張
消費税と社会保障 だまして脅して、問答無用か
2010年12月10日 赤 旗
民主党は政府に提出した「税と社会保障の抜本改革調査会」(会長・藤井裕久元財務相)中間報告で、社会保障の財源は消費税が「非常に重要」だとしました。「消費税を含む抜本改革に政府は一刻も早く着手すべき」と求めています。
民主党は、参院選挙で菅直人首相(党代表)が突然消費税の増税を持ち出し、国民のきびしい審判をあびたのをもう忘れたのでしょうか。消費税は「社会保障のため」だとだまし、消費税を増税しなければ社会保障が「維持できない」と脅し、結局最後は“問答無用”で増税を進めようとは、国民をバカにするにもほどがあります。
破綻した口実通用しない
消費税が社会保障のための「重要」な財源だというのは、消費税の導入のときにも、税率を3%から5%に引き上げるときにも繰り返されてきたごまかしで、国民になんの新味もありません。消費税が導入されて20年になりますが、この間社会保障は充実するどころか、年金も医療も介護も、福祉という福祉が切り下げられてきました。いまごろ「社会保障のため」といわれて信じるほど、国民は甘くはありません。
かつて細川護煕内閣が消費税率を一気に7%に引き上げようとしたとき(1994年)、つけた名前も「国民福祉税」でした。しかし、それも「福祉」を考えたからでなく、日米首脳会談の手土産にする「景気対策」の財源のためだったと、当時の首相秘書官が日本記者クラブの研究会で語っています。「社会保障のため」のことばになんの保障もありません。
「消費税は増税しない」という当たり前のことを、逆に社会保障を削減する口実に使ったのが、2001年発足した小泉純一郎内閣の「構造改革」です。社会保障費は毎年2000億円以上も削られ、福祉は福祉と呼べないほど、急速に悪化しました。これも国民のことを考えたからではなく、「構造改革」を続ければやがて国民が音を上げ、消費税増税がやりやすくなると考えていたことは、当時から指摘されてきました。
生活必需品を含めあらゆる商品やサービスに課税し、どんな収入の少ない人にも負担を押し付ける消費税が、社会保障の財源としてもっともふさわしくないのは明らかです。低所得者も高所得者も生活必需品の購入はそれほど変わりませんから、消費税は低所得者ほど負担が重い逆進的な税金になります。税金を転嫁できない中小企業は身銭を切ってでも納税しなければならないのに、輸出大企業は還付まで受けられます。こうした消費税を社会保障の財源とすること自体論外です。社会保障の財源はもともと、大企業や大資産家にこそ重く負担してもらうべきものです。
財政も経済も立て直す
菅内閣と民主党は、社会保障を消費税増税の「だまし」や「脅し」に使うのは、きっぱりやめるべきです。財政がきびしいから、社会保障のためには問答無用で消費税増税をと、まず“消費税増税ありき”の態度は改めるべきです。
消費税増税など国民の暮らしを犠牲にする「財政再建」では、財政も暮らしもいっそう深刻になります。経済危機の打開と財政危機の打開を一体に取り組むためにも、消費税の増税ではなく、大企業優先から「暮らし最優先」への経済政策の転換が急務です。
読売社説
社会保障予算 いつまで迷走を繰り返すのか
2010年12月10日 読 売
2011年度予算の編成作業が大詰めを迎える中、社会保障関連予算の財源確保や制度改革の議論が難航している。
自公政権当時の予算編成でも、社会保障分野は最後まで迷走した。少子高齢化の進行に伴う予算の自然増を、毎年2200億円削減するための方策に苦労したからだ。
だが今は、それをはるかに上回る困難に直面している。見通しのつかない財源の規模は兆円単位に上る。事前に財源を詰めてこなかったツケと言えよう。
社会保障に対する国民の不安感をこれ以上広げないためにも、11年度予算については、残り少ない埋蔵金などをかき集めて、何とか手当てするしかあるまい。
来年以降は、今年のような迷走を繰り返してはならない。安定財源を確保するため、消費税率を引き上げる道筋を今からつけておく必要があろう。
12月中旬になっても社会保障予算の大枠が固まらないのは、民主党政権の先送り体質に原因があるのは明らかだ。
社会保障費の自然増に加え、基礎年金の国庫負担割合を50%に維持するためには、合計4兆円近い財源が必要なことは早くから分かっていた。
にもかかわらず政府は、何の手も打たなかった。その上、子ども手当の拡大を図り、3歳未満に7000円上積みして、月2万円とすることを決めた。
これには2400億円要る。ところがその財源をめぐっては、支給対象となる家庭への所得制限や配偶者控除の見直し、相続税の課税対象の拡大など、さまざまな案が浮上し、いまだに政府・与党内で賛否が分かれている。
政府はまた、後期高齢者医療制度の“廃止”を急ぎ、新しい高齢者医療制度をあわただしく打ち出した。窓口負担の拡大や現役世代の負担増で帳尻を合わせようという内容だ。介護保険でも同じ方向の改革案が示された。
いずれにも民主党内から強い反対意見が出て、紛糾している。
一体、いつまで議論を続けているのか。政府・与党で誰が司令塔となっているのか分からないのが最大の問題だ。菅首相は今こそ、指導力を発揮し、党内の議論の一本化を急がねばならない。
そもそも、予算の無駄を徹底して排除すれば子ども手当など福祉充実の予算は捻出できる、という民主党の政権公約(マニフェスト)には無理がありすぎた。公約の早急な撤回・見直しが必要だ。
民主調査会 消費税引き上げ方針
自公政権報告が基
2010年12月9日 赤 旗
民主党・税と社会保障の抜本改革調査会(会長・藤井裕久元財務相)は消費税の社会保障目的税化などを盛り込む「中間整理」(6日)をまとめましたが、同調査会の議論や「中間整理」が、自公政権の福田康夫、麻生太郎両内閣の社会保障国民会議の最終報告をベースに行われていたことが8日、わかりました。調査会の議事録から判明しました。
社会保障国民会議は福田内閣の2008年1月発足、同11月に麻生首相へ提出した「最終報告で、基礎年金を税方式にした場合、消費税率は現行税率に15年で6〜11%、25年で9〜13%の上乗せが必要との試算を示し、社会保障財源に消費税増税が不可欠としました。民主党は基礎年金の税方式を主張しています。
「中間整理」のとりまとめに向けて11月15日開かれた調査会役員会で藤井会長は「社会保障国民会議(の最終報告の中身)を取り込んだと(おおっぴらに)いう必要はないが、使える」とシ発言しています。使えるとは「中間整理」の取りまとめ文書に取り込めるという意味です。
藤井氏は、席上の発言の前段で「(社会保障)国民会議ではいいことをいっていて、医療、介護は持続性を高めるとし、充実しなければならないのは五つとしている。攻めの話が書いてある」として、社会保障国民会議最終報告の内容を肯定的に受け止めるべきとの考えを示しています。
藤井氏はさらに消費税増税について、「大平、中曽根は(消費税、付加価値税導入で)失敗した。それは(財政の)穴埋めでやろうとしたから。(消費税の社会福祉目的の)完全目的税化は不可欠」とのべて、財政赤字の補てんという本来の狙いを隠して、社会保障目的のためという理由で消費税増税をはかるのが得策との考えを示しました。
藤井発言に調査会メンバーの長浜博行財務委員長が「この消費税の議論を克服しないといくらきれいな絵を描いてもたどりつけない」とのべ、小沢鋭仁前環境相は「(社会保障改革できなかったのは)負担(の議論)をしなかったからだ」と発言しました。
予算・税制 民主が提言
消費増税「一刻も早く」
2010年12月7日 赤 旗
民主党は6日、2011年度予算編成と同年度税制改正に向けた要望・提言を政府に手渡しました。政府に対し、法人税の実効税率引き下げを求め、消費税を含む税制の抜本改革について「政府は一刻も早く着手すべきである」と、消費税増税を迫っています。
民主党・税制改正プロジェクトチーム(中野寛成座長)がまとめた提言では、法人税減税の引き下げ率には言及しなかったものの、「国際競争力の維持」などを口実に引き下げを求めています。
また、政府が法人税減税で生まれる税収減の穴埋め財源案を検討していることについて「財源に固執するあまり、行き過ぎた課税ベース拡大によりかえって経済成長を阻害することがないよう留意する必要がある」と主張。財界が反発している研究開発減税の廃止などを行わないようけん制しました。
地球温暖化対策税については、原油や石炭、天然ガスなどに課される石油石炭税を活用して、化石燃料のCO2排出量に着目して課税することを提言。11年度から導入することと明記しました。
社会保障・税共通番号制度については「早期に導入の判断をすることが望まれる」としました。
朝日社説
法人税減税―小幅でもやむをえない
2010年12月6日 朝 日
来年度の税制改正の焦点のひとつである法人税率の引き下げが難航している。減税に必要な1.5兆円の財源のめどが立たない限り、小幅な下げもやむをえないだろう。
法人に対する税率は、国税と地方税をあわせて40%強。国税である法人税は30%で、経済界はこれを5%幅で引き下げるよう求めている。
菅直人首相はすでに政府税制調査会に法人減税の検討を指示している。減税で雇用拡大や景気回復を促そうという狙いだ。
朝日新聞の全国主要100社アンケートでは、菅政権に期待する経済政策として79社が「法人税減税」をあげた。世界ではここ10年、法人税引き下げ競争が激しい。日本の電機産業などが競合する韓国や中国の税率は今や20%台なかば、ドイツや英国も30%を切る水準だ。日本は割高である。
日本には研究開発減税のような制度もあるが、それを考慮しても実質負担率は、やはり他の主要国より高い。日本と同じ高税率だった米国も、議会には減税論が浮上してきたという。日本も早急に世界水準との税率差を埋めていく必要がある。
法人税を下げても雇用拡大の効果はそれほどない、との見方もある。円高や国内需要の減少で企業が生産拠点を海外に移す流れは構造的なものだ。しかし、国内に雇用を残したり、設備投資を維持したりするうえで不利な材料は、少しでも減らしたい。
財源について、政府の税制調査会は原則として企業の税負担の付け替えでまかなう方針だ。赤字を翌年度以降の黒字と相殺できる「繰り越し欠損金」制度や、資産の目減り分を損金算入できる「減価償却」制度などを見直し、課税対象となる企業を広げる。こうすることで税収を増やし、財源を確保する案が有力になっている。
それでは計1兆円足らずにしかならず、5%減税は無理だ。とはいえ一時検討された研究開発減税の縮小、石油化学製品の原材料となるナフサ免税措置の縮小などに踏み込めば、逆に雇用を減らす圧力を企業に加えかねない。
消費増税などの大型増税は封印されているうえ、歳出を削って財源を確保するにも限度はある。いきおい、赤字国債を増発して一時的にしのぐという手法に傾きかねないところだ。
だが、将来の税収増で穴埋めすればよい、という安易なやり方は採るべきではない。それでは財政そのものに対する信頼を著しく損なってしまう。その結果、避けて通れないはずの消費増税を柱とする税制改革はますます先送りされ、社会保障も財政再建も展望を失いかねない。
こうした状況を踏まえれば、財源が許す範囲で減税幅を決め、早期に実施するのが現実的ではないか。
消費増税 「早く検討を」
2010年12月3日 朝 日
民主党の「税と社会保障の抜本改革調査会」(会長・藤井裕久元財務相)は2日、社会保障の水準を充実させる財源として、消費税の増税を早期に検討することを求める中間報告をまとめた。消費税の使い方を福祉目的に限定する考えも併せて示したが、消費増税の時期や上げ幅などについては触れなかった。
藤井会長は近く、この中間報告を社会保障の抜本改革について議論する「政府・与党社会保障改革検討本部」に提出する予定。
主張 民主党税制提言
財界いいなりが目に余る
2010年12月2日 赤 旗
民主党の「税制改正プロジェクトチーム」が来年度税制の提言を大筋でとりまとめました。
政府税制調査会は法人税率引き下げの財源として、研究開発減税やナフサ(石油化学製品の原料)免税など大企業向け租税特別措置の縮小を検討しています。民主党の提言は「減税に対する経済界の期待」に反するとして大企業優遇税制の縮減に異を唱えました。
根拠がない法人税減税 財務省は研究開発減税の縮減で最大5100億円、ナフサ免税の縮減で最大1兆7200億円の増収を想定しています。これに反発した日本経団連は縮減に強く反対し、これら優遇税制は特別措置ではなく「むしろ本則化、恒久化すべきである」と主張しています。
民主党の提言は財界の要求通りに研究開発減税やナフサ免税の縮減に反対しました。特にナフサ免税について民主党は恒久化を求める方針だと報道されています。日本経団連の米倉弘昌会長は、この問題で直接の利害関係にある住友化学の会長です。民主党の財界いいなりの姿勢は目に余ります。
法人税率引き下げの目的として民主党の税制提言は「国際競争力の維持、国内産業空洞化防止と雇用維持、国内への投資促進」を掲げています。財界の主張を引き写しにした表現ですが、この主張に根拠がないことは政府税調の議論でも明らかになっています。
11月初めの政府税調全体会合で峰崎直樹・内閣官房参与は次のように指摘しました。「(企業に)キャッシュフロー(資金)が入ってきても、実は(企業は)投資をしないで内部に留保してずっとたまっていく、これが200兆もある。ここに今の日本経済が置かれている状況がある」。だから、減税すれば投資に向かうという話は「非常に疑問に思う」。
この日の政府税調の資料には、峰崎氏の主張を裏付ける資料が掲載されています。法人税率を引き下げても、社員への還元や設備投資・雇用拡大ではなく内部留保や借入金返済に回す企業のほうが多いという民間信用調査会社の調査結果―。企業の今後の海外移転の大きな理由は「消費地に近いから」が最も多く、「安価な人件費」「安価な部品・原材料」「為替」と続き、「税負担」を挙げた企業は圧倒的な少数派だという経産省の調査結果―。
財務省は基礎年金支給額の50%を国が負担している措置は「財源確保が困難」だとして負担割合を大幅に引き下げる方針です。暮らしの予算が確保できないと言っているのに、空前の金あまり状態の大企業に減税で何兆円もばらまくなどまったく論外です。
財界流の議論は転換を 基礎年金の財源問題で野田佳彦財務相は消費税増税を急ぐ姿勢を示しました。民主党の「税と社会保障の抜本改革調査会」は、社会保障の財源として消費税を含む税制の抜本改革に一刻も早く着手するよう求める方針です。
消費税は低所得者や中小企業には重い負担ですが、力の強い大企業は1円も負担しないで済む税金です。法人税減税と消費税増税を前提にした財界流の議論を根本から転換する必要があります。
政府税調で示された大企業優遇税制の是正策は、法人税率引き下げの財源としてではなく、基礎年金など暮らしの予算を確保する手だてとして活用すべきです。
読売社説
基礎年金財源 国庫負担50%を堅持すべきだ
2010年12月2日 読 売
公的年金に対する国民の信頼を一段と低下させかねない愚策である。
2011年度予算案の編成作業が山場を迎え、基礎年金の国庫負担の取り扱いが、最大の焦点になってきた。財務省は財源不足を理由に、2年前に36・5%から50%へと引き上げた国庫負担率を、元に戻すよう提案した。
そんなことをすれば、国民が払う保険料が上がるか、受け取る年金額が減る可能性がある。政府は財源をやり繰りし、国庫負担率50%を維持すべきである。
基礎年金の国庫負担率を50%にしたのは自公政権時代の09年度からだ。将来にわたって年金制度を安定させるには公費の追加投入が不可欠との判断だった。
問題は恒久的な財源なしに負担率を引き上げたことである。毎年2・5兆円要るにもかかわらず、「11年度までに恒久財源を確保する」として、09〜10年度は埋蔵金を取り崩してしのいできた。
これほどの規模の恒久財源を確保するには消費税率の引き上げしかあるまい。自公政権がその議論を先送りした責任は重い。民主党も子ども手当など巨額のばらまき政策を続けながら、同様に消費税率引き上げから逃げている。
年末を迎え、来年度予算の帳尻を合わせることが出来るのか、との懸念が高まる中で、財務省が出した答えが国庫負担率引き下げでは、国民の理解は得られまい。
年金特別会計の積立金(128兆円)から一般会計へ2・5兆円貸し付け、それを国庫負担金として受け取るという“帳簿操作”で国庫負担50%を維持する案も浮上しているが弥縫(びほう)策に過ぎない。
消費増税で確実に返済される、という道筋が示されなければ、将来世代に借金を付け回すことになり、国債発行と変わらない。
一方で、予算編成には、わずかながら追い風も吹きつつある。税収は10年度予算の当初見積もりでは約37兆円だが、企業業績の回復で40兆円程度まで上方修正される可能性が高い。11年度も同程度の税収が見込まれよう。
税外収入も5兆〜6兆円は確保できそうだ。鉄道建設・運輸施設整備支援機構の剰余金(1・4兆円)を国庫返納させ、歳出を10年度並みの92兆円強とすれば、基礎年金の国庫負担率を維持する財源のメドはつくのではないか。
ただし、12年度以降の保証はない。社会保障財源の安定的な確保と財政再建の両立を図るには、消費税率引き上げしかないことを、菅内閣は再確認すべきだ。
朝日社説
年金の国庫負担―借金頼みの実態を隠すな
2010年12月1日 朝 日
財源が確保できないので借金に頼らざるを得ないというのなら、その実態を隠してはならない。国民に知らせ、国債という借金を減らしていく努力につなげることが大切だ。
来年度予算の編成で検討が進む年金のような問題は、とりわけそうであり、小細工は禁物である。
年金制度を支えるには、基礎年金の3分の1だった国庫負担の割合を引き上げることが長年の課題とされてきた。2004年の制度改革のさい、09年度から2分の1に引き上げることが法律に明記された。
だが、そのための増税を先送りしてきた結果、2.5兆円の恒久財源を確保できない状況が続いている。
09、10両年度は財政投融資特別会計の積立金という「埋蔵金」の取り崩しでつじつまを合わせた。来年度に向け検討されているのが、年金特別会計の積立金128兆円の流用だ。
この積立金は、過去にも財政のやりくりで使われた。一般会計からの繰り入れを一時的に停止し、その分だけ積立金を取り崩して給付した。国債発行額は圧縮され、うわべは財政規律を保ったかに見えたが、実質的には赤字国債の発行と同じである。
年金特会では、将来の給付に備えて積立金を確保している。お金の山があるように見えても、余っているわけではないのだ。
流用が一時的なら、年金給付の減額や保険料の値上げに直結するわけではない。だが、「隠れ借金」とも呼ばれてきた手法の復活は安易な流用の横行につながりやすく、借金の実態を見えにくくする点も問題だ。
こそくな手段に頼らず、むしろ赤字国債を発行したほうが、不足分が目に見えるだけ、ましだと言えよう。
何よりも、菅政権自身が今年6月「会計間の資金移転や赤字の付け替えなどに依存した財政運営は厳に慎む」との財政運営戦略を閣議決定していることを忘れてはならない。
自ら定めた規律を破るとなれば、政権への信認はますます落ちる。もちろん、基礎年金の国庫負担を維持するために国債を発行する結果、政権が設けた「国債発行は44兆円まで」という枠を破るようなことも許されない。
苦しくとも他の歳出を削るなどの工夫をこらして、44兆円枠を守るよう努力してほしい。
もはや明らかなはずだ。毎年2.5兆円もの金額をまかなうための選択肢は増税しかない。さもないと、毎年の予算編成のたびにこの問題が立ちふさがるだけである。
菅直人首相も民主党も、参院選の敗北を機に、消費税を中心とする税制の抜本改革という重要課題を先送りしてしまった。その姿勢を改めない限り、真の解決策は見えてこない。

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