消費税が争点に 民主代表選 野田氏は増税路線
2011年8月9日 赤 旗
民主党代表選に立候補する意向の野田佳彦財務相は、国の財政を管理する立場から消費増税の必要性を強調してきた。これに対し、立候補が取り沙汰される有力議員はいずれも消費増税に否定的。代表選では消費増税が大きな争点になりそうだ。
野田氏は今月5日の参院決算委員会で「家計も国も一定の見通しを持って借金するのはいいが、(国は)見通しを立てないままやってきた」と過去の財政運営を批判。そのうえで今年度内に消費増税の法案化を目指す考えを示した。こうした姿勢から、野田氏は党内の増税反対派から「財務省の組織内候補」などと皮肉られてきた。
これに対し、馬淵澄夫前国土交通相は代表選に立候補する意向を固めている。8日の大阪市での講演では「消費税は逆進性が高く、弱い立場の方々にしわ寄せが行く」と述べ、消費増税には慎重な見解を示した。「3年たてば名目成長率4%を実現し、十分に財源を確保できているはず」とも述べ、増税路線に否定的だ。
代表選への立候補が取り沙汰される前原誠司前外相や海江田万里経済産業相も、消費増税路線とは一線を画している。
前原氏は7月下旬の自らのグループの会合で「経済成長しなければ財政再建もできないし、社会保障も充実できない」と強調。最近、知人を交えて野田氏と面接した際にもこうした考えを伝えたと見られる
海江田氏は増税に反対する鳩山由紀夫前首相のグループに所属。党内最大の勢力を持ち、反増税の立場を堅持する小沢一郎元代表は、グループの議員が主導し、海江田氏が講師を務める勉強会を容認している。
党内の増税反対派の声は、6月末に決まった税と社会保障の一体改革で、消費増税の時期と税率をあいまいな表現に改める原動力となった。野田氏はこの一体改革の推進役で、復興増税にも積極的。こうした野田氏の「実績」がどう評価されるかが、代表選の行方を左右しそうだ。
内閣不支持72%、「月内退陣求める」68%
2011年8月8日 読 売
読売新聞社が5〜7日に実施した全国世論調査(電話方式)で、菅内閣の支持率は発足以来最低の18%(前回7月調査24%)に下落し、民主党政権として最も低かった鳩山内閣の19%(2010年5月)をも下回った。
不支持率は72%(前回63%)に達した。菅首相に「すぐに退陣してほしい」と思う人は32%で、「今の国会が終わる8月末まで」の36%を合わせると、月内退陣を求める人は68%に上っている。
菅首相の「脱原発依存」の方針については「賛成」67%、「反対」21%だった。しかし、この方針を、首相が内閣で調整せずに表明したことを「適切だった」と思う人は16%で、「そうは思わない」が74%を占めた。
今後の国内の原子力発電所については「減らすべきだ」49%(前回46%)、「現状を維持すべきだ」25%(同29%)、「すべてなくすべきだ」21%(同19%)、「増やすべきだ」2%(同2%)の順に多かった。(中略)
政府・与党が、社会保障制度の財源として、消費税率を10年代半ばまで段階的に引き上げる方針を決めたことについては「賛成」47%と反対46%が拮抗した。
東日本大震災からの復興財源とするための増税には「賛成」52%(前回53%)、「反対」42%(41%)となった。「賛成と答えた人に限って、主にどの税を中心にあげるのがよいかと聞くと「消費税」49%(同59%)に「法人税」23%(同19%)、「所得税」22%(同18%)が続いた。
主張 大震災「基本方針」
“復興なき大増税”に怒り新た
2011年8月1日 赤 旗
民主党政権が「東日本大震災からの復興の基本方針」を決めました。これを土台に第3次の補正予算案を編成するとしています。
基本方針は財界が求める農地の集約化やゼネコンの開発事業を進める土地利用の規制緩和、漁業特区の導入、幼稚園と保育所の一体化など、被災者の願いを踏みにじる施策を掲げました。住民の合意を尊重し生活再建を最優先するという復興の根本を忘れ、上からの押し付けが際立っています。
政府は財源として5年間で10兆円規模の増税を想定しています。まさに“復興なき大増税”にほかなりません。
国民負担増には熱心な
漁業特区は漁協と営利企業を同列に置いて、地元の総意にかかわりなく営利企業が沿岸漁業に参入できるしくみです。漁業者が自らルールをつくって漁業資源と環境を守ってきた漁協の役割をないがしろにするやり方は、被災した漁業者の復興への思いを引き裂く血も涙もない暴挙です。
被災地の生活と営業の再建は遅々として進まず、原発事故は収束の見通しも立たず、政府の姿勢が根本から問われています。ところが菅直人首相は「やるべきことはしっかり取り組んでいる。着実に復旧から復興に進んでいる」(7月29日の記者会見)と胸を張っています。被災地の実情が全く見えていないとしか思えません。
いっこうに復興に本腰が入らないにもかかわらず、国民への増税にだけは異常に熱心な民主党政権の姿勢には怒りをさらに大きく、新たにさせられます。
財源について政府は、復興のための国債を発行し、基幹税(所得税、法人税、消費税)を増税して返済に充てるとしています。増税の詳細は政府税制調査会(会長・野田佳彦財務相)で議論するとしていますが、政府は所得税や法人税に1割程度上乗せする「定率増税」を検討しています。
ただし、法人税に1割上乗せしたとしても大企業の負担は増えず、逆に少なくなるかもしれません。基本方針には法人実効税率の5%引き下げを「確保する」と明記しているからです。法人税率30%の1割は3%にすぎません。
大企業には減税し負担増は国民にだけ負わせようという意図がありありとしています。基本方針は「今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合う」とのべています。一番力のある大企業を特別扱いして何が「負担を分かち合う」でしょうか。
すでに民主党政権は社会保障と税の「一体改革」で、社会保障の抑制を続けながら3〜5年後をめどに消費税を10%に増税することを決めています。消費税の増税は被災者の暮らしと被災中小企業の経営をも直撃します。同時に、消費税分をすべて価格に転嫁できる大企業にとっては、消費税は1円も負担しなくて済む税金です。
政治の姿勢転換させて
財源の確保でまず手を付けるべきは、不要不急の軍事費や政党助成金などの浪費にメスを入れ、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を是正することです。
復興のために発行する国債は巨額の内部留保・余剰資金の使い道に困っている大企業に買ってもらうよう特別に要請すべきです。
財源問題を打開するためにも、本末転倒の政治の姿勢を転換させることが切実に求められます。

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