埼玉へのドライブ(5)「長瀞の虎岩」
宮沢賢治が、『 つくづくと「いきなもやうの博多帯」荒川岸の片岩のいろ 』と、うたった
「虎岩」という結晶片岩があるというので、大まかな地図をもとに博物館近くの荒川の河原に下りました。
目立つ大きな岩があったのでそこを目指して進みました。「この岩が虎岩だろうか、確かにおもしろい岩に違いないが、賢治が詩によむほどの美しさは感じられないな」と思いつつ、一通り観察して戻りました。
帰宅して後日、博物館にメールと写真を添付して「虎岩」かどうか尋ねますと、その岩から15mほど下流に「虎岩」の露頭があると教えていただきました。一緒に「虎岩」の写真も付けてくれました。
その写真は、表面の模様が虎の毛皮のように茶褐色の鉱物・スチルプノメレンと白色の石英や方解石からなる波模様を映し出していました。
時間的な余裕があまりなかったので、もう一歩踏み込んで探索していれば「虎岩」に出会っていたのにと残念に思いました。
先に記した、長瀞の「岩畳」の岩石が、石英の割合が多く、緑色片岩や黒色片岩に見えなかったので「なんという結晶片岩だろう」と疑問に思っていました。この件でも、博物館にメールで尋ねてみました。
『ご遠方よりご訪問頂きありがとうございまいた。
御存じのとおり、お住まい御所と長瀞地域は、
三波川帯(三波川結晶片岩類)の分布域になります。
一口に結晶片岩と言っても、変質を受ける前の源岩や熱・圧力などにより
変成してできあがった岩石の顔つきが変わります。
ちなみに、黒色片岩は泥岩が、緑色片岩は塩基性の火山砕屑岩(凝灰岩等)が変成したものです。
岩畳に分布する結晶片岩は、
上流域は、黒色片岩類が優勢で、
下流記は、黒色片岩のほかに緑色片岩もみられます。
どの場所を比較にされたのか?分かりませんが、
岩畳を構成している岩石の黒色片岩の表面は、
黒色部を構成する石墨(石墨=鉱物)は、非常に柔らかいものなので、
表面が剥離して、石英などの硬い部分が露出しています。
そのために、黒色というよりも灰色に近づきます。
すなわち、岩石の色は、新たな岩石の割口をみないと
正確な色は分からないことになります。・・・』
と、メールの返信で教えていただきました。
納得しました。そういえば黒色片岩に近いかな、とは心の隅っこに引っかかっていたのですが。岩石の表面は風化などして本当の顔をみせてくれないので難しいです。
それにしても、ますます博物館が改装中で訪問できなかったことが悔やまれますが、
埼玉県立自然の博物館 自然担当の先生にはお世話になりました。
長瀞の旅も少しはすっきりしました。本当にありがとうございました。
※写真@ 博物館から送っていただいた「虎岩」の写真 褶曲もみごとに観察できますね。
A この岩、「虎岩」かなと思って調べてみたが・・・
B 近くに秩父鉄道の橋


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