クリントイーストウッド監督が、「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」と言う2本の映画を製作した。
硫黄島は61年前、本土決戦の火蓋を切った島であり、日本軍が玉砕した島という程度の知識しかなかったが、この映画に興味を持ち、いくつかの知識を得た。
日本軍はアメリカで留学生活を送り、駐在武官としてカナダにも長期滞在経験のある、いわばアメリカを知り尽くした栗林中将を切り札と送り込んだこと。米軍は5日で攻略できると考えていたが、攻防は32日に及び、甚大な損害をこうむったこと。栗林中将の作戦は、当時の常識を覆す方法で、そのため米軍を硫黄島に釘着けにし、消耗戦に引きづり込んだこと。
そして、栗林中将に興味を持ち、「硫黄島 太平洋戦争死闘記」を読んだ。この本はアメリカ人がアメリカの立場から書いたものだが、栗林中将の行動、作戦、態度が読み取ることができ、多いに感じるところがあった。
栗林中将は、物量に勝るアメリカに正面から挑まず、上陸部隊の完全上陸を待って、反撃に出るというシナリオを描いた。アメリカ軍上陸時、大口径の艦砲射撃の援護、航空支援が行われるだろう。これに対抗したら、勝ち目がない。敵を上陸させて近距離戦になるまで反撃を禁じたのだ。
もちろん、自分の足元から反対意見が続出、見方をまとめるのに、まず苦労したようだ。
栗林中将は優れたリーダーであったと思う。日本軍の陥りがちな、「鬼畜米英」「神風特攻」を口にしなかったことだ。優れたリーダーは、部下に具体的な目標を提示できるものだ。彼は鬼畜米英とは言わなかった。「自決厳禁、一人十殺」と言ったのだ。
戦いの終盤、最後の総攻撃を栗林中将は行った。最後の命令はこうだ。「各部隊は本夜零時を期し、各当面の敵を攻撃、最後の一兵となるも飽くまで決死攻闘すべし。己を顧みることを許さず。予は常に諸氏の先頭にあり」
日本海軍の伝統に「指揮官先頭!」と言うのがあるそうだ。終戦近い時期には、かなりこの伝統が崩れたと、ゼロ戦のエース、坂井三郎氏の著作の中で嘆いていたのを読んだことがある。
優れたリーダーは先頭を行くものなのだ。ゆえに消耗も激しい。最後まで生き残れる可能性は低い。しかし、指揮官は先頭なのである。すばらしい伝統ではないか。
「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」、来月にぜひ見に行きたい映画だ。
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