10年前にサーフカヤックを始めました。その時、サーフカヤックをやってる人は少なく、方向性が見出せず苦労しました。モデルにできる先輩がいないのです。そのため、サーファーやウエーブスキーヤーを見ながら学んでいきました。
憧れのサーファーはハワイのラス.Kとアメリカのウイングナットでした。ラスは長くロングボードの競技でトップに君臨した選手でした。現在は引退してサーフィンビジネスで成功している人です。彼はあるインタビューで「Kidsならいつでもサーフィンを教えてやるよ。ハワイの子供はもちろんだけど、日本やドイツの子供でもOKだよ。おっと、もちろんカルフォルニアの子供もウエルカムさ」と。彼はハワイに生まれ、近所のお兄さんに折れて使わなくなったサーフボードをもらったのが、サーフィンをはじめるきっかけでした。「インサイドで波を待ってると、アウトからインまで乗りついてくるエキスパートのお兄さんたちに、”おまえら、邪魔だ、どけどけ!!”と怒鳴られるなかでサーフィンを始めたんだよ」と。
ウイングナットは逆に全くコンペティションに出ない、いわゆる”ソウルサーフィン”の世界を確立した人です。彼はインタビューで”What is the surfing for you”という問に、「海と自分の間にある境界をなくすための道具」と答えていました。この言葉は僕に強いの影響を与えました。
初めてのサーフカヤックは葉山のセタスで買いました。セタスはウエーブスキーの元世界チャンプ、ミカさんがいました。ボートの代金を払ったその場で、1時間渡るサーフィン講義が始まりました。サーフの中でのルールとマナー、そしてカヤックの特性について。「カヤックはスープにつかまってズルズル引きずられるだけ」というのです。カヤックでサーフに入るなとも聞こえ、あまりいい心象をその時は持てませんでした。今なら理解できますが、全くのビギナーだった僕には理解不能で、これから始める人に何でこんなことを言うのか分かりませんでした。
5年ほどして、サーフポイントでミカさんと一緒になることがありました。それまで没交渉でした。「城後さん、深いところで乗れるようになったね」と言って話しかけてきてくれました。これをきっかけにミカさんと交流するようになりました。すると彼女の口から堰を切ったように出てきたのは湘南地区で起こっているサーファーとカヤッカーの間のトラブル、接触事故の話でした。そしてそのことに心を痛めていました。
当時ロングボードに乗るようになっていたので、サーファーの言い分はよく理解できました。そして、カヤッカーの思いも。問題はサーフカヤッカーが自分をサーファーだと勘違いしているところにありました。カヤックで波に乗る以上、サーファーではなく、カヤッカーなのです。これはボード(板)に乗ってみないと分からないでしょう。
ある時、ロングボードで波乗りをしていると、見知らぬカヤッカーポイントに入ってきて、サーフィンを始めました。「僕もカヤッカーですよ」と話しかけると、向こうは喜んで笑顔で、とてもいい雰囲気で話ができました。ところがあまりにガツガツ波に乗るので、ぽろっと「サーファーが優先だよ」という言葉がでました。それを聞いたカヤッカーの顔、目は今でも忘れられません。きっと僕がサーフカヤックを買った時にミカさんに抱いたのと同じ感情を僕に持ったのでしょうね。
今でも上記の3人は尊敬の対象だし、勝手に(笑)、師匠だと思ってます。
「サーファー優先」という言葉は、こういった自分の体験や経験から出てきた言葉です。申し訳ないけど、これは板に乗っているカヤッカーシか理解に至らないかな。。もしチャンスがあったら、サーフショップのビギナー講習を受けてみるといいでしょう。それだけで、視点や考えが豊かになります。どこのサーフショップでも講習はやっていて、誰に対しても門は開かれています。
今回の宮崎カップでファイナルに残った3人が3人とも板に乗っているか、元板乗りです。これは偶然なのか?探究心が強いからなのか?分かりません。でも、体験程度でも、一度、板に乗ることを勧めます。

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