「私は日本でリスクの概念を説明するのが難しいと常々思っています。その理由は、多くの人がリスク(risk)と危険(danger)を一緒にして考えているためです。リスクというのは、あくまでも計量可能でコントロール可能なものを指します。逆に、自分自身で計量できなかったり、コントロールできないリスクを取ってしまうことはリスクとは言えず、単なる危険(ギャンブルなど)を指します」 勝間和代
アウトドアスポーツはリスクスポーツです。リスクはマネージメントすることによってコントロールできます。リスクに対して準備し備え、事前に、行為中にリスクの芽を早めに摘んでしまったり、なだめたりして突破できます。
ボートコントロールに自信のあるカヤッカーは多いと思うのですが、リスクのコントロールの得意なカヤッカーは決して多くないように思います。そもそもリスクとは何か、重大な危険とは何か、そして被害を受けない(最小限にする)ようにするにはどうすればいいか、我々はリスクについての教育を受けていないのです。
では、どのようにしてこのようなセンスや技術を身に付けるか。それは、上手な人から習えばよし。僕の経験では、日本ではクライマーやラフトガイドさんがいい先生になります。外国人のカヤック遠征家、彼らの中には軍隊の出身者が多く、よく教育を受け、さらに訓練をつんでいます。また、不幸にして起きてしまった重大事故や、インシデントは反面教師で、学ぶところが大きいです。
カヤックにおけるリスクや危険には2種類のものがあって、厳密にセパレイトして認識(評価)するようにしています。一つは自然から受けるもの。台風や風、増水、津波など。そしてもう一つが人的なもので、なかなか厄介です。人から受ける危険や脅威です。僕は東南アジアをカヤックの活動場としていますが、こちらは人的リスクが自然リスクと同じか、やや高く、そのための備えをして行動をしています。
残念ながら、なかなかこういったことを学ぶ場がないですが、身に付けたいという人は、書物から勉強すると言うのも手です。戦記物の本(戦国時代、宮本武蔵、先の大戦、海外ではアレキサンダー大王以降のもの)、近代の危機管理書(佐々淳之さんはお勧め)。また生きた教材としては、日本だと自衛隊、警察、QQ関連を職業とする人から、仕事の話をじかに聞くなど。
以前、テレビ番組で、消防の人にインタビューし、少し面白く描いてる番組がありました。お笑いの人が質問者で、「映画やドラマの中で描がかれている消防士と実際の現場の人との一番の違いは?」の問に「どんな事があっても単独行動はとらない」との答えがあり、番組的には「火の中に一人で飛び込んでいって、助けてくれないの?」的な扱いでしたが、僕としては多くを学ばしてもらった一言でした。

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