小泉内閣メールマガジンに載っていた「味覚の目覚め」と題された「オテル・ドゥ・ミクニ」オーナーシェフ、三國清三さんが書いた文章の中で、「キッズシェフ」という食育の活動が紹介されていました。
メールマガジンなので、リンクも張れないから、著作権違反だけど、載せちゃおう。
ファストフードが席巻した80年代半ば、イタリアで小規模生産者を守ろうと「スローフード運動」が興り、フランスでは三ツ星シェフたちがフランスの食文化を守ろうと学校で「味覚の授業」を始めました。こうした動きに倣って99年に18名の同志と始めたのが「キッズシェフ」です。
人類共通の味覚は、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」の四味(よんみ)です。味蕾(みらい)という舌にある「ぷつぷつ」が最も発達し、味覚が最も敏感な8才から遅くとも12才までにこの四味を明確に意識しないと、一生「味」に無頓着になりかねません。
小学3年生の授業では本物の四味を経験させます。ビターチョコレートをなめさせると、子ども達は「にがい!」と吐き出し、チョコレートの苦味を知ります。そして、この苦い味に砂糖を加えると大好きな甘いチョコの味になるんだ、苦いって美味しいものなんだと再発見するのです。
苦味は最も人を刺激する味覚です。昔は家庭で魚の内臓や山菜を食べさせ苦味を体験させましたが、今はなんでもかんでも甘くして、味覚の目覚めを妨げています。
塩をなめさせると「しょっぱい」。でも羊羹に塩を加えると、あれっ甘さが増している。塩ってしょっぱいだけじゃない、美味しいものだってわかるわけです。酸味はお酢をなめさせます。
授業の後、子ども達が「パンの塩味を見つけた」「魚の苦い味を見つけた」と、給食の中から味を探すようになり、給食が楽しくなったといいます。子ども達の中に眠っていた味覚が目覚め、開花したのです。
小学6年生には地元の食材を使ってコースメニューを作ってもらいます。
材料を洗ったり切ったりするところから調理、給仕まですべて子ども達が行います。料理は先生方に食べていただきますが、あまりの出来栄えに皆さん感激されます。
人においしいと言ってもらえる喜びを知った子ども達は、誰に強制される
でもなく、今度は家族に料理を作ってあげたい、という気持ちになります。料理を作って人に喜んでもらったという体験が、自分も人のために何かしてあげられるという自信につながるのです。
最近の子ども達は、人に何かしてもらうことが当たり前になって「人に何かしてあげる」という経験が乏しい。大人の責任です。授業を通じて、子どもに本来備わっている奉仕の心を呼び起こし、相手の心を思いやったり心配したりする心を持ってもらうことが、最終的な目標です。
当初、頭を下げてもなかなか学校に受け入れてもらえなかった味覚の授業ですが、「総合的な学習の時間」が始まると状況は一変、最近の食育ブームにも乗って、今や予約は「3年待ち」。2008年まで埋まっています。
これからもその土地に根ざした食材で子ども達の「味覚」や「奉仕の心」を呼び起こしていきたいと思っています。

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