Mさんの部屋に入った。
「陶ちゃん(ちがうけど)待っててネッ・・・」
そういってMさんが出て行った。
部屋を見渡すと勉強机があり、そこに、生まれて初めて見るものが置いてあった。
ヴァイオリン
譜面台があり、隣に茶色にピカピカに光ったヴァイオリンが置いてあった。
ボクは立ち上がって、そっとヴァイオリンを触ってみた。
少し冷たかった・・・。(ちょっと指紋がついちゃった)
Mさんはコレを弾く所だったのかな?
Mさんがジュースの瓶と、コップを持って戻ってきた・・・。
その後部屋の中で何を話したのかは、記憶が無い。
なんで怒ったような顔をしたのか、とか生徒会長と付き合ってるだとか、
バカ小学生相手に話したとは思えないのだ。
そして帰る時に、
「陶ちゃん(ちがうけど)、さっき何買ったの?」
ボクがチョコレートを見せると、レジを開けてそのお金をくれた。そして、お店のいろいろなお菓子を袋に入れて持たせてくれた。
今度は母さんに言わないと叱られるな・・・
そんなことを思っていた。
でも、Mさんの所に来たことも言わなきゃならない・・・当然ボクはこの日のことを誰にも言わなかった・・・。
ただ、お菓子を貰っている自分が子供であるという再認識を、少し悔しく感じた。
そうして、来たときには気がつかなかった、ちょっと変わった良い匂いがした。
Mさんの家は、お菓子やさんではなく、製パン工場をかねたお店・・・Mベーカリー・・・だったのだ。
今でこそ、個人工房のパン屋さんは多いが、当時はどういう存在だったのか?近くの商店にも置いてあったし、町中に卸していたんだろうか・・・。
当時小学校が完全給食で、パンだった。
朝は食パンという習慣は無かったような気がするけど・・・。
Mさんの家がベーカリーであることが、Mさんの人生に少なからずの波紋を投げかけることになるのだ。
東京オリンピックが終わり、高度成長の波がこんなT町ににまで来るころだった。
続きます・・・。
Mさんのヴァイオリンを聞くんだよ〜・・・意外な場所で・・・
こうなったら、とことん書くね。
アンハピーでもミザリーにならないでね!

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