大学に入る前に、いろんなことをしていた。
高校生活がイヤで、年間100日ぐらい平気で休んでいた。
殆どがM市へ映画を見に行ったり、同じような友達と煙草をふかし、70年代ハードロックLPを聞き、話していた。
中退して東京に出て、定時制にでも行こうかとさえ思った。
教師との確執・・・。
マァ、この辺も書くと長くなる。
なんとか卒業し、当然のように志望校などに見向きもされなかった。
一年の時にチェリッシュの
「なのにアナタは京都へ行くの」という曲と、自殺した立命館大生、高野悦子「二十歳の原点」が好きだった。
私の髪に口づけをして
可愛いやつと私に言った
なのにあなたは京都へ行くの
京都の町がそれほどいいの
この私の愛よりも・・・
それだけで京都へ行った。
ボクを愛してくれる彼女もいなかったけれど、京都の街に憧れた・・・。
親には片道の普通電車の料金を貰った。
京都の大学に行くから・・・と。
そこでバイトしながら大学を受けるからと・・・。
そんな与太話が良く通じたものだ。
この辺は別項で・・・。
そんな京都のあてどのない暮らしが上手く行くはずもなく、程なくして田舎に戻り、普通に東京に出た。翌年の事である。
ボクは新聞配達店に行った。
三月の事だ。
手っ取り早く衣食住があると思ったからだ。
三月の早朝・・・東京の住宅街。
その記憶は沈丁花の香りだ・・・。
甘酸っぱい芳香。
既に、夢や希望の一旦は失なわれていたのだけれど、その沈丁花の芳香は、東京の生活にかすかではあるけれど、望みのようなものを感じさせてくれた。
沈丁花の甘美な芳香は、いまだにその頃の何も見出せない右往左往していた自分を思い起こさせる・・・ある切なさとともに。
年が明け、ボクはある大学に合格した。
しかし、その喜びよりも重大な問題が持ち上がるのである。
続く

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