友人の水道屋のアルバイトをしていた。
焼きモノで食えなかったからだ。
そろそろ仕事に復帰する頃である。
そのころある陶芸技法(粉引きではないよ)にとらわれていた。
それは書けない・・・。
が、その技術が掴めなかった。
失敗の連続。
そして食えなくなりアルバイト・・・。
様々に想像を廻らす。
自分の中の配合比と方法論だけが机上のものとなって蓄積されてゆく。
3月になったらいろいろ試そう。
もどかしい2月だ。
ある日曜日、ボクは北の方へ車を走らせ、広い河原へ降り立った。
そこに落ちている変わった形の石を拾うためだった。
その石を型にして、変形の皿を造ろうと思った。
2月だが、良く晴れた午後だった。
河原にはバーベキューに来ている家族もいた。
冷たい風に吹かれながら、なるべく平らの変った石を拾い集めていた。
我ながらいいアイデア!
そんな事を考えながら河原を物色している。
バーベーキューをしている家族の子供の声が聞こえる。
ナニシテルノアノヒト?
この創作への探究心が分らぬか〜!といつもなら、口の端にニヒルな笑みなど浮かべるのだが、食えていない現在、ボクは水道屋さんだった。しかもアルバイトだった。
ムナイシイ・・・
こんな事していていいのか?陶ちゃん(違うけど)・・・
そして頭にはその技法の事が浮かんでいる。
今度成功しなかったら・・・
あきらめよう、と考えていた。
夕暮れが近づき、風も冷たく石を車に運んでいると、また子供の声がした・・・。
これ・・・しょっぱいね・・・
ナニ食ってんだろ・・・
しょっぱいか・・・
しょっぱい?・・・塩分・・・?
塩・・・塩基性ナトリウム
もしかして・・・!
ある技法の鍵・・・それは塩・・・かも?
ボクは河原の車に石を積み込みながら、これで型を取り成形した皿の姿が浮かんでいた。
その技法を施した皿が、はっきりと見えていた。
しかし、まだまだ問題が残っていた。
塩水の濃度である・・・。
また膨大な試験を繰り返すのか・・・。
その2月・・・。
休みの日曜日、ボクはあることに気づいた。
続く

0