ボクがこの町で独立するまで半年の時間があった。
10月に引っ越してきて、窯が翌3月に設置されるからだ。
年内を水道やにバイト。三ヶ月を独立準備に当てた。
歳が明け、地元のヒト、業者、友人・・・様々な協力の元に工房が立ち上がった。
工房は錆びたトタン屋根だけがあるコンクリートのたたき。
壁にトタンを貼らなければならない。
中古のトタン板を近所のKちゃんが見つけてきてくれた。
Kちゃんについて、大家本家の新宅の土建業の駐車場に行った。
話してやるから待ってろ〜
そう言ってその人は社長を連れてきた。
いいよ〜持って行って・・・
あそこでヤキモノやるんだ・・・
頑張ってナ
社長はそう言ってボクを案内してくれたKちゃんと話をして、家の中に入っていった。
Kちゃんどうもありがと〜
こんなには要らないんだけどなぁ〜
陶ちゃん、全部持っていくんだよ
処分に困ってるんだから、全部引き受けるんだよ・・・
いいものだけ選んで持って行ってはダメだよ。
なるほど・・・そういうモノか。
話が前後するが、この借家を借りる時の大変だったこと。
契約書もボクが自分で作り、大家に持っていった。
最初は備え付けられていたプレハブを使うことは出来なかった。
大家は別料金を欲しいと言った。
じゃぁ〜いいです・・・
そこを無償で借りるまでにそう時間は掛からなかった。
つまり信頼関係が生まれたからだ。
工房を作るのにも、本家の土建やさんから貰った照明器具。配線工事を格安でやってくれた電気屋さん。友人Oの無償協力・・・水洗トイレ&浄化槽を只同然で設置・・・。
酸素バーナー&溶接機で鉄のアングルをつけ、たるきを渡し、トタン板を貼って行く。それらは希望に燃えた時間ではあったが・・・。
そして散々書いてきた 〜I町の憂鬱「怪しい過去」・・・
思い出が多すぎるのだ。
ボクが怒鳴るのは無理もないと言えよう。 笑
笠間に引っ越してきて里子ちゃんがいたから12月だったのだろう。
その引っ越したIが新茶を持って挨拶&詫びに来た。
いろいろ若輩者でご迷惑をお掛けしました。
あのさ
あそこは物件じゃないんだよね
礼金敷金あるわけじゃないんだよ
つまりさ、みんなの善意でアンタに貸そうとした訳だよ
窯やとかにお礼をしたか?
してないだろ・・・?
荷物を片付けるのは当然の事だろう・・・
でもさ、そんなのは物件としての条件がないんだから、主張するんなら契約書交わさせるぜ!礼金敷金付けてさ・・・
そういうことになるけどな・・・
だからさ、お前らもそうだけど荷物先送りにすればいいんだよ〜
次の焼きモノやにそういえばいいんだよ〜
引っ越すという事は家を建てるということだろ?
仕事が忙しいというわけだろ?
うまくやればいいんだよ
申し送りで・・・
オレがさ、一切家をいじらなかったのは、そのうち家を建ててそこを出る、つまり焼きモノで食えるようになるために汚いままにしていたわけだよ
リフォームして生活してどうするのよ
金の無駄じゃないの?
まぁ〜そんな煙に巻くような話をされて、そいつは謝って帰っていった。
帰ったアトに里子ちゃんが言った。
そうとうビビってましたね
何したんですか・・・あのヒト 笑
そう別れの話だった。
またT町引越しの時に話は戻る。
続く

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