その実家は、鶏卵と乳牛で生計をなしていた。
土間には卵を取ってきたかごがいつも十数個はあった。
産地からのものを、何処に送っていたのか子供には知る由もなかった。
近所の人が坂を登って卵を買いに来る。
居合わせたじ〜ちゃんやば〜ちゃんは、それを新聞紙で、卵が触れ合わないように器用に包み、お客さんに渡す。
食卓は、卵や鶏肉がでた。
廃鳥と称した老いて卵を産まなくなった鶏の首をキュと絞め、ぶら下げて血を抜き、羽をむしるのはじ〜ちゃんの仕事だった。
しかし、当時は肉を焼いたり揚げたりして食べた記憶はない。
殆どが蕎麦、うどんのツユの出汁だったり、カレーライスの中に入っていた。
それは、なんだか金臭く、不味かった。
ある時、千羽近くいた鶏が卵を産まなくなった・・・。
それがボク達兄弟のせいにされた。
村でも噂になった。
銀玉鉄砲。
鶏舎をご存知だろうか。
人間が入っていくと、一斉に沈黙しこちらを見る。また鳴き出し、えさをついばみ、人間の動きで一斉にまたパニックになったりする。
そんな中で、母屋にあるいは鶏舎の何処かに家の人がいるであろう環境で、鶏に向け銀玉を発射する事が出来ただろうか?
銀球鉄砲を取り上げられたことも、怒られた記憶もないのである。
この前の姪の誕生日BBQの時にこのブログの話が出た。
兄貴は
犯罪て、鶏が卵産まなくなった話か?
だいたいオレは動物好きだから、鶏に向かって発射するはずがないよ
オマエと戦争ごっこがしたくて大量に玉を買っていったんだからな・・・
牛舎に、猫を懐に入れて隠して連れて行って、牛の背中に放した事あったじゃん!動物好きだぁ〜?
あれはオマエ、牛が良い乳を出すように運動させてやったんだよ
牛も猫もパニックになってたけどね!
では、約千羽の鶏が何故卵を産まなくなったのか?
少しずつ記憶に蘇る光景がある。
鶏舎の騒然とした通路にぶら下がる電球。
昼でも暗い鶏舎の中で、誰もいないことを確認し、鶏糞の匂いと、蝿に苛立ちながら、その電球に向け銀球鉄砲を発射しはしなかったか?
次第に命中率が良くなるなかで、銀球鉄砲のカチャカチャと響く引き金の音と、パチッ!パチッ!銀球が電球に当たる音にたった一人で恍惚となっていった。
その時鶏舎は、いつのまにか沈黙が支配していたのではなかったか?
鶏が、ストレスを感じるには充分なほどの沈黙が・・・。
オレ・・・か?
BBQに戻る。
鶏、卵産まなくなったのが犯罪かね〜?
それはただのいたずらだよ
違うよ・・・
犯罪の話は、兄貴の知らない全く別の話だよ・・・。
続く

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