じゃぁ〜ボクが鬼になるよ
ココで百数えるから、隠れろよ
あんまり離れるとわからないから、鳥小屋の方は禁止ね
そう言って後ろを向き、従姉妹とM君が走っていく方向を感じていた。
適当な時間に振り返り、牛舎を見渡しながら、離れのトイレの方に行った。
子供がそんな所に隠れるわけが無かった。
隣の納屋に入った。
藁が山積みされていた。
その裏にM君がいた。かがんでこちらの様子を伺っていた。その、見上げる目が少し不気味に、同時に子供心に間抜けな顔に見えた。
それを放っといて従姉妹を探した。
M君はココを動かないと思ったからだ。
庭の方に走って行く従姉妹が見えた。
ボクはそれを追いかけるように納屋を出ようとすると、何を思ったのかM君が立ち上がり、ボクの横を通り過ぎて従姉妹を追いかけて行った。
だから子供と遊ぶのは嫌なんだよな・・・
M君はかくれんぼを知っているのか?
庭に出た二人を呼び止めた。
鬼に見つからないようにして、ここの木に触るんだよ
そうすれば勝ちだからな!
今度はM君が鬼ね!
黙ってM君が頷いた。
ボクと従姉妹はまた藁納屋のほうに走っていった。
あれ、百まで数えられんのか?
できないよ、そのうち泣きだすよ
どうする?
従姉妹のZがそう言ったが、ボクは黙って藁の束の方に行った。
この天井裏に上がるかな・・・
Zも上がるか?
Zは頷きハシゴを登り二人で天井裏に上がろうとした時、M君が半泣きでこちらに走ってきた。
まだ三十ぐらいのカウントだった・・・。
ボクだけが天井裏に上がっていた。
M君は下にいたZに
もう帰る・・・
家に帰る・・・
Zが何か言った。M君が泣きながらZの胸を突き、Zが藁の上に倒れた。
たぶんボクの事を言っているのだろう。
ボクはハシゴを降りながら
Z、M君にお菓子上げるんじゃなかったっけ?コタツの上にあったやつ。
アレ、とって来いよ・・・。
M君待っててね
Zが、そうだっけ?という怪訝な顔で母屋の方に走っていった。
M君が泣きながらボクを見ている。
Zが母屋に入るのを見届けると、M君にこう言った。
鬼なのに帰るんだ・・・
今Zを突き飛ばしたよな!
M君の顔が少し歪んだ。いきなり走って納屋を出ようとした。
ボクはその瞬間に、M君の背中を押し、床の開口部から地下に突き落とした。
目の前からM君が一瞬で消えた。
地下には藁が敷いてあったが、その厚みはわからなかった。
子供には恐怖を感じる高さだった。
ボクは何事もなかったかのように納屋を出ると、Zがお菓子を持って戻ってきた。
Mちゃんは?
帰った・・・
そう言ってZと母屋に戻り大人に混じってテレビを観た。
ボクの記憶はそこまでだ。
それからM君の親が家に怒鳴り込んできた話も、従姉妹のZがM君になにか聞いた話も無い。
M君はまだ・・・藁の中か?
続く

0