コレは帰りの話だ。
鳥取から敦賀に抜け、水戸天狗党惨殺の倉庫を見てこようと思った。
鳥取、餘部鉄橋、、天橋立、小浜、若狭湾を抜けて敦賀に向かった。
当時は沖に高速艇が出没し、浜にいる人間を拉致するという噂があった。
思い起こせば本当の話だった。
20年前は誰も信用していなかった。
福井県の美浜の国道から海岸沿いに折れ、細い松林の道を通って海岸に出た。
海に出る松林のところに四人ぐらいの若い男女と子供が二人立っていた。
家族だとおもった。
向こうは怪訝そうな顔をしてボクの車を見ていた。
それはそうだろう、平日の夕方、多摩ナンバーのわけのわからぬ車が砂浜に入っていくのだから・・・。
釣りの時によく体験するけれど、田舎の道を通る時は気を使うものだ。
それは住人の生活圏だからだ。
有名な釣りのスポットだと、観光化されて慣れている家もあるのだけれど・・・。
海の近辺には人家はなかったのだけれど・・・。
海岸で車を止めランプやコンロを出し、夜の一人宴の準備をしだした。
文句を言われる事はないからね・・・。
そうして次第に辺りが暗くなり始めると、ボクはガソリンランプに火を入れて砂浜に置いた。
日本海の夕暮れ。
帰ったら仕事を探さなきゃな・・・
帰路に向かっている思考は、そちらに移りつつある・・・。
少し鬱ではあったが、まだ少し貯えもあり、気持ちが楽だった。
まだ明るい。
先ほどの家族の方を見ると誰もいなくなっていた。
家に帰ったのだろう。
歩いて帰ったのかな?車はなかったけどな・・・。
完全に夜の帳が下り、ボクはバーボンを出して飲みだした。
漁火と波の音が心地よかった・・・。
その時にあることに気がついた。
さっきの家族がいた辺りには松林が有った筈だよな・・・?
さっき確認した時はそんな雰囲気ではなかった。
ボクは少し酔っていたのか?
ランプを持って家族の立っていたほうへ歩いていった。
大体どこから歩いてきたのだろうか?
彼らは何をするともなく立っていた。
近くの人家まで一キロ以上はあったような気がしたが、裏の道でも通れるのかな・・・?
海岸に出る道の所に来た。
そこには松林は無く、普通の植え込みのような緑がある道だった。
見間違えか・・・
ランプを植え込みの方にやってみた。
お墓があった・・・。
ぎゃ〜〜〜〜
ボクは、車に走った。
マサカ海で亡くなった家族とかいうんじゃないないだろうな〜〜
足元ちゃんと見たっけかなぁ〜〜〜
相当バーボンを飲んでいたのだけれど、アウトドアグッズを車に積み込み、車を走らせた。
この海岸は不気味だった。
海から家族が上がってきそうじゃないか・・・
とにかく人のいる所に行きたかった。
ゾクでも来てくれよ〜〜
海岸を出るには先ほどの場所を通らなければならない・・・
その瞬間にバックミラーに家族が写ってる・・・
なんつうことにならないだろうなぁ〜〜
後部座席から首なんて絞められないだろうなぁ〜
頭がぐぁんぐぁんぐぁんしている・・・
そこを通り過ぎてから、バックミラーも後ろも振り返らず、国道へ出た。
美浜の国号は路肩で仮眠しているトラックがたくさん停車していた。
助かった・・・
トラックの間に車を停め近くのドライブインに冷たいコーラを買いに行った。
そうしてようやく浅い眠りについた。
何度も目が覚め、そのたびに何度もバックミラーを覗き込みながら・・・。
これはもう、旅の終わりを意味しているのだな、と自覚した。
あらゆることは長距離移動の疲労なんだと、思い込みたいが為に。
続く

0