取説 はじめから
第1話 逆転新世代(1)
プロローグ
7月14日 午後5時48分 わんぱく公園
人気のない公園に、男の声がひっそりと響く。
「……そう、その角を右だ。そこから真っ直ぐ。……俺は時計台の下で待ってるよ。すぐに分かるはずだ。……気にするなよ。部下に奢ってやるのは、上司として当然だろ?……ああ。じゃあ、待ってるよ」
男はそう言うと、携帯電話を切った。
何気ない動作で、その携帯電話をポケットにしまおうとする。だが、それはできなかった。
突然、背後から何者かに襲われたためだ。
男は抵抗する。無我夢中で背後からの襲撃者に掴みかかった。その目に、見覚えのある顔が飛び込んできた。
男が最後に見たのはひっくり返った世界だった。
薄れゆく意識の中、自分を襲った人物の名前を呟いた。
「クソッ!顔を見られちまった……!」
男の呟いた名前は、襲撃者の耳に届いていた。
やはり、“あんなこと”を思いついたからと言って、実行すべきではなかった。奇跡でも起きない限り、この男が目を覚ましたあとに待っているのは襲撃者の逮捕劇だろう。
その時、襲撃者の脳内に一つの考えがよぎる。
もうすぐ、そいつがここに来る。全ては、そいつに……。
襲撃者は狂気を帯びた笑みを浮かべ、今、自分が行ったことよりもさらに罪深い手段をとったのだ。
続く

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