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第3話 あるまじき逆転(286)
聞き込み中
・みぬきへの告白
みぬきはどうしてもチャランに言っておきたいことがあるようだ。
「チャラン兄さん、みぬきのことが好きだったんですね」
犯人扱いされた恨み辛みよりも、まずはそれらしい。
「ぐはああああ!本人からダイレクトに言われた!!こっぱずかしいぜ!……それで、どうバレちまった勢いで聞くが……みぬきはおいらのことをどう思う?」
「モテモテのみぬきに思いを寄せてくれる大ファンの一人として心にとどめておきますね」
「ぐはああああ。実質可能性ゼロオオォォ」
(脈なし、……死亡確認)
「チャランさんはみぬきさんから一生逃げられないのに、みぬきさんはチャランさんからあっさり逃げましたね」
王泥喜は慰めにもならない一言を吐いた。いじけるチャラン。
「まだ早すぎると思ってよう。おいらのスイートなハートはそっと自分の胸の内に隠しておいたんだぜ。それをあんたが引きずり出しやがってよう……。アステカの神官かよ!」
そんなに物理的にハートをえぐり出したつもりは毛頭無い。
「チャランさんの太陽は生け贄のハートを受け取り拒否ですか。死に損ですね」
やはり慰めにならない一言だった。みぬきはチャランの一言に気になることがあるらしい。
「まだ早すぎるって、どういう事ですか?みぬき、まだ子供だから……DVDみたいに育ってからがよかったですか?」
(そうなったら見た目的に釣り合わなくなるケド)
少なくとも、チャランはもう成長が止まっている。
「そうじゃなくってよ。あと5年も経てばみぬきもおいらのオトナの魅力が分かる歳になったのにってことよ」
(どこにあるんだ、そんなもの)
心の中で冷静につっこむ王泥喜。そして口では更に辛辣な言葉を吐いた。
「チャランさんのせいで父親ごろしの犯人にされかけたんですから、そりゃあ、だめでしょうね」
「ぐはああああ。おいらだって最初は黙っている気でいたんだぞ。アニキがおいらが犯人を見たとか言い出すから引っ込みつかなくなって全部喋る羽目になったけど!」
「そりゃあ、喋らせるために小細工をして芝居を目撃させたんですから……」
ここで黙っていられたらバランとしても小細工をした意味がない。必死だったろう。
「そもそも、あんたもあんただぜ。おいらがみぬきを憎んでいるとか根も葉も身も蓋もタネも仕掛けもももももすもももないこと言い出すから、おいらの心の中にしまっておこうと思ってたピュアな思いをさらけ出す羽目になっちまったんだし」
「俺の発言、そんなになにもありませんでしたか」
「最後に残った希望も今ので見事に打ち砕かれちまったしよ」
「パンドラの箱ですか」
実際、開けてはいけないパンドラの箱のようなものだったようだが。タイミングとしても最悪だったのは間違いない。
「おいらは巻き込まれただけだぜ。大人はいつもそうさ。自分の都合のためにおいらたちを巻き込みやがって。チクショー、大人め!」
「俺はチャランさんより年下なんですけど。さっきオトナの魅力とか言ってたのはなんなんですか」
「大人と子供の中間の、ビミョーで複雑な年頃なのさ」
「三十路が迫ったオッサンがなにを……」
冷静に考えたら、オッサンが年が半分くらいの少女に恋をしているのだからとんでもないロリコンと言えよう。幸か不幸か、そう見えないだけで。
つづく

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