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第3話 あるまじき逆転(399)
尋問中
「
その一人、或真敷ザックは殺害を思いとどまり……」
被告人と直接関係がないと判断されたか、話が端折られている。だが、バランの直前に被害者と会った人物のことだ。掘り下げれば何か関わりが出てくるかも知れない。
「待った!被害者が用意した逃げ道に気付いて人形を撃ったワケですね」
順を追って状況を聞き出そうと切り出す成歩堂。
「そう言うことッス。……アンタがその人形に気付いたこと、自慢したいッス?」
「え。いや、別にそういうワケじゃ……」
僻みったらしい糸鋸刑事に成歩堂は慌てる。糸鋸が更なる僻みをぶつけようとした時、牙琉検事から助け船が出た。
「彼が気付いた人形に警察が気付けなかったのは残念なことだね。現場写真にもはっきり弾痕は写ってるのにさ」
「ううう。すまねッス」
助け船と言うよりは糸鋸弄りだったようだが。
「むざむざと偽装されて、その思惑通り濡れ衣を着せられた人を捕まえちゃうしさ」
「面目ないッス……。こら!あんたのせいで怒られたッス!」
結局、火に油を注いだだけであった。牙琉検事のせいで、燃え上がる糸鋸刑事。
「証人、八つ当たりしないように!」
裁判長にたしなめられて鞘に納めはしたが……。
(ザックさんのとった行動について詳しく聞いてみようか……?)
寝た子を起こすべきか、永遠に眠らせておくべきか……?
ぼくの答えを選ぼう
・聞いてみる
・そっとしておく
虎穴に入らずんば虎児を得ずである。踏み込んで聞いてみよう。
「ザックさんは結局、その夜にはどういう行動をとったんですか?」
「指定の時間の30分前に病院に着いたという話ッス。その時は病院の前に何人か人がいたらしいッスが、しばらく様子を見ていたら誰もいなくなったので病院に入ったッス。それから指定の時間まで人目を避けて時間を潰していたらしいッス」
「病院に入ってからは割とすんなり病室に行けた感じですかね」
「そッスな」
この辺、ザック本人から聞いた話と変わりはないようだ。
「その後、被害者の部屋に行き……人形を撃ったわけですね」
「ううう。まだ蒸し返す気ッスか」
「いや、別に証人をイジメたい訳じゃ……。とにかく!その後、被害者と話をしたということでしたが」
「そうッスな。一座をお前に任せると言うようなことを言われたらしいッス。昨日カガク鑑定で存在が明らかになった書類を渡されたらしいッスが、事件の騒動のどさくさで無くしたとか」
「無くした?どういうことですか、証人!」
裁判長も身を乗り出す。
「事件が起きて逮捕された騒ぎの中で無くしちまったらしいッス。警察の捜査でもまだ出てきてないッス」
「そうですか……。弁護人、いくつか話が出てきたようですが、気になった話はありますかな?」
「そうですね……」
ぼくの答えを示そう
・人形を撃って銃は持ち帰った
・目を覚ました被害者と話した
・遺言状を受け取ったが無くした
・特に気になる話はない
「今のところは特にないですね」
虎穴に入らずんば虎児を得ず。だが、虎児を得たところで、養えるだろうか。否、である。今の事務所の懐事情では犬どころらハムスターすら持てあます。況んや虎。今はそっと、遠くから見守るだけにしておこう。
「そうですか。それで証人。……ザック氏が犯行を思いとどまったということは……?」
裁判長に促され、何も無かったように証言は続く……。
つづく

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