「ホルンという楽器の歴史〜第二回 ヴァルト・ホルン以前のホルン〜」
ホルン
昨日は台風の影響で地元に帰ることが出来ませんでした。九州のほうでは多数の方が被害に遭われたと聞きました。天災とは恐ろしいものです…。
先日お話いたしましたホルンの歴史に続きまして、ヴァルト・ホルン以降のお話をさせていただこうと思います…が、まずは、この更新後に来訪者の方からご指摘のメールがありましたので、少し省略を致しまして、そのご指摘を紹介し、付け加えをしたいと思います。
『ヴァルト・ホルンが今現在のホルンの先祖だと言う事を言ったが、ヴァルト・ホルン以前にもホルンの先祖と思しき楽器は存在していた。よって、ヴァルト・ホルンが今現在のホルンの祖であるということは誤りでないか。』
このご指摘に答えまして…。
確かに、ヴァルト・ホルン以前にもホルンの原型と思しき楽器はいくつか存在いたします。
例としまして、アルプス山脈の山々の高原で、遠いところへ信号を伝える『アルプ・ホルン』(アルプスの少女、ハイジのアニメオープニングのイントロの音、といって思い出されれば分かりやすいかと思われます)。
そして、欧州の郵便馬車がその存在を伝えるために吹いて知らせたという『ポスト・ホルン』(プレス・ホルンが本当の名でありますが)などがあげられます。
これは、自分は、現在のホルンの直接の先祖だとは捕らえにくいと感じ、説明を省略いたしましたのです。
すなわち、これらの楽器は、今現在のホルンに進化をした、と端的には言いづらいのです。前者の『アルプ・ホルン』は進化をすることなく現在も使われておりますし、奏者の『ポスト・ホルン』は、その進化の系列をコルネット(吹奏楽、軍楽隊で主に使用され、トランペットと形がよく似ており、混同されやすい。古来はリズム隊をトランペットが担当し、コルネットがメロディーを担当していた、ということです)に移し、ホルンのそれからは距離をおいたのです。
文幅がありすぎても読み手に心持悪いかと思われますので、この二つの楽器を主役に押し立てた楽曲の紹介をして文を終えたいと思います。
前者はレオポルド・モーツァルト(かの有名なアマデウス・モーツァルトの父親)の『アルプ・ホルン協奏曲』が有名。この楽器はスイスの民族楽器の印象が強いのですが、彼や現代作曲家は多く、この楽器を独奏楽器として用いているということです。
そしてちなみにこの曲、かのホルンの神様として名高い『デニス・ブレイン』が、ある一定の長さに切ったゴムホース(!)で演奏したことでも有名です。(アルプ・ホルンはただの一直線な管という単純な機構であるので、音色の変化とはありますが、同じ長さの管なら、どのような材質でも演奏が可能なのです)
そして後者。この『ポスト・ホルン』なかなか合奏楽器としての出番が多く、古くはモーツァルトの第九番『ポストホルン・セレナーデ』、そしてマーラーの交響曲第三番などにその例が見られます。この楽器もアルプ・ホルンと同様に、ただの管という単純な機構にもかかわらず多々野音楽作品に用いられることに、この楽器の音楽性に映えがあるのでしょう。
また、この楽器。郵便馬車の存在を知らせるため、とは先に述べましたが、そのシンボルとしての立場は変わっておらず、欧州の郵便切手にはいまだにポスト・ホルンが描かれています。
それでは、また次回。

1