野球の話が多くて恐縮です。
私の中で、過去に阪神で記憶に残っている四番バッターは誰かというと、掛布と新庄だと思っています。
新庄は決して打率も高くないし、ホームランバッターでもありません。
しかしメジャーへ行き、メッツでは四番も経験したのには、大きな理由があると思っています。
それは、投手に対する威圧感と、1球にかける勝負強さです。
「ここで一発欲しいなあ」
という場面では、ことごとく打ち、ファンは痺れたのです。
掛布は嫌な球だとファウルにして、好球を待つ技術があり、相手投手からは嫌われたと思います。
そして江川の全盛期でも、外角のスライダーをバットが振り遅れてでも芯に当て、レフトポール際に運ぶ技術もありました。
そして田淵もホームランバッターですが、三振も多かったので、掛布と新庄が上にランクされています。
また、糸井が日本ハムに追われるようにオリックスへ移籍した時「その理由が何かある」と思いました。
その後、オリックスからFAで阪神に来て、その理由が分かりました。
チャンスに全く打てないのです。
つまり、四番バッターの資質がないのです。
FAでベテラン選手がいれば、四番を打って当たり前の世界ですが、ホームランも打たないし、チャンスにも弱いのであれば、実に楽な打者なのです。
そして今年の阪神打線を見ていると、最も相応しいのは福留だと思います。
しかし福留もピークは過ぎているために、ホームランを打てなくなりました。
そこで、若い選手を育てようと昨年の最下位を受けて、監督の裁量で今年は大山が四番に座り続けています。
テレビカメラがアップで撮ると、時々泣き出しそうな顔をしており、相手投手からは全く恐れられていない「楽な四番」なのです。
11日、敵地ヤフードームへ乗り込んでのソフトバンク戦では、9回にあと一人で追いつかれ、12回には無死三塁のピンチを切り抜けて引き分けました。
その前の12回表、最後の攻撃の時に二死満塁になり、大山がバッターボックスに入る最大のチャンスを迎えました。
ソフトバンクの武田は、急な登板で調整不足なのか変化球が入りません。
「初球勝負だ!」
と思った途端、あっという間に直球の棒球を2球見送ってしまい、ツーストライクと追い込まれました。
その時点で勝負は負けです。
3球目に武田は大きく外角に外れるスライダーを投げ、大山はまるでルーキーの初打席のような屁っ放り腰の空振りをして、三振に倒れたのでした。
そもそも阪神というチームは、満塁などチャンスに弱く、打った試しがありません。
ことごとく勝負に弱いのです。
新庄は「何としてでも塁に出る」と、テレビカメラでも感じるほどの気迫がありました。
では、技術も実績もない大山はどうすれば良いのか。
「当たれば飛ぶな」
と相手投手が思うほど、空振りでも積極的にバットを振ることです。
目線は下を見ていると弱気なのがわかってしまうので、投手を睨みつけるのです。
睨みつけるのはルール違反ではありません。
イチローがルーティンでバットを立てて睨みつけるのは、実は投手に「失投するように暗示にかける」と聞いたことがあります。
一流のプロの投手がそんなに失投するはずがないので、精神的に追い詰めて失投させるのです。
もう何度も書きましたが、昔阪神の外野手に川藤がいました。
彼はコーチも務めたのですが、外野手に
(コテコテの大阪弁で)
「ホームランと思うても、必死で追いかければその気迫に負けてボールが落ちてくるもんや、諦めた時点で負けや」
この理論は間違っていないと思います。
変な宗教のようですが、正しく四番バッターは気迫が必要なのです。
大山は、「押し出しは避けたい」という武田の心理を理解していませんでした。
初球は空振りで良いから、武田をビビらす大振りでも効果はあったと思います。
ベンチが「初球勝負だ」とアドバイスをするべきだったのかもしれません。
大山は四番失格で、今シーズンこのまま大山が四番を打ち続けることには私は疑問です。
今は投手陣が頑張っているものの、打線が弱いので連敗を始めれば10連敗する可能性もあり、秋にはBクラスも覚悟しています。
Aクラスに残るためには、大山が初球から積極的にバットを振る勇気は、絶対欠かせません。
大山は、選手育成には定評のある矢野監督が四番で使い続けているので、その素質はあると信じています。
そういえば昔、田淵がバットを振らないので「不動の四番」と揶揄されたことがありました。
今後、大山がその「不動の四番」ではなく、生え抜きで本物の「不動の四番」になれるよう、頑張って応援を続けようと思います。