「旅の手帳」06年1月号に、定番土産のヒミツという記事で、伊勢名物赤福が紹介されています。
それによると、江戸時代には「おかげ参り」と呼ばれるお伊勢参りがブームとなり、3ヶ月で500万人が参拝したそうです。
門前町には沢山の餅屋が軒を連ね、その中の一軒が宝永4年(1707年)創業の赤福がありました。
今年でちょうど300年を迎えたわけです。
当主の浜田氏が第10代を継いだのはわずか1才の誕生日のこと。
祖母と母が切り盛りをしてきたわけですが、「ご先祖様や神宮の神様に対して、恥になることだけはしてはならない」というのが祖母ますの口癖だったそうです。
そのため、戦後は小豆、もち米、砂糖が不足したために、闇市で仕入れた粗悪な材料で作るよりも休業した方が良いという考えで、昭和23年まで休業という決断を下しました。
我々も見習うべき、見事な商売根性だと思います。
赤福の社是は「赤心慶福」で、「真心(赤心)をつくし、他人の幸せを我がことのように素直に喜ぶべし」という意味だそうです。
いつから歯車が狂ったのか、金儲けに走ってしまうと、意外と悪事がばれないことに気付き、「これなら大丈夫だろう」と益々悪がエスカレートしてしまうものです。
社是を肝に銘じ、「どうすればお客様に喜んでいただけるのだろう」と浜田氏が考え続けていれば、きっと今回の不正をする以上に売れ行きが伸びたことでしょうし、300年続いた立派な伝統を守ることもできたと思います。
歴史と伝統を作るのは想像できないくらいの努力と時間が必要ですが、それが崩壊するのは、わずか1日で充分です。