とりあえず、流感の件はここではもうひと息つかせようと思っていたのだが、その後の展開や発表内容を受けた意見をもう少し読みたいというメールを知人(仕事上の)からもらったこともあるので、新潟出発前にちょこっとまとめておく。おそらく次は月曜か火曜まで更新の間が空くことになると思うし、また来月の雑誌では紙幅が足らなくてそれほど大げさなことは書いていないので・・・。
まず、大まかな考えはここまで書いてきたとおりで、補足するようなことはありません。
開催については、するもしないも、獣医師の見識や、詳細な内部調査に基づいての事であるし、外からは分からない部分もあるので、是非は決められない。と同時に、つくづくマスコミ(特に日刊紙)っていうのは、二元論というか、白黒でしか語れない奴らが本当に多いということを痛感。かなり前にも書いたけれど、なんで多角的というか、いろいろな局面を考慮しての物言いができないんでしょうかね。都合のいい時だけファンの味方になるのは噴飯もの。普段は何の問題意識も持たないくせに。(ただ何度も言い訳するけど、ちゃんとした人もいるのよ、中には。)
ただし、そんなマスコミに付け入る隙をJRAが与えてしまったという面は否定できない。これも事実。
彼らがゴロ巻けないくらいに、説明責任を最初からキチンと果たせばよかったのである。最初の混乱ではそれは無理だと擁護する人もいるかもしれないが、それはあまりにも世間知らずというものだ。個人的にではあるが、今回の騒動に油を注いだ最大の原因は、やはりココだった気がしてならないのである。その背景には、それぞれの部署がお見合いしてボール取りにいかない体質があるとは思うんですけどね。
前にも指摘したが、まずは16日から17日にかけてのドタバタぶり。「開催を行なう方向」という曖昧な説明への補足が足らず誤解を生んだし、また急転して中止となった時の状況説明も酷かった。17日の記者会見では、数行の感染馬、発症馬の調査データを記したものが配られ、これを丸々読み上げたのが唯一の「説明」で、すぐに質疑応答へ移るというお粗末なもの。最初から、要らぬ誤解や言葉尻を取られないようにする事ばかりに意識がいって、積極的に分かってもらおう、分からせようという態度が感じられなかった。これは私だけではなくて、出席した人間ほぼ全てが感じたことだと思う。
個人的にマズイと思ったのは、ウイルスに関しての説明だ。自分が質問したからいうわけではないけれど、当初は「従来と同じだから拡大はないとみている、変異したとは考えられない」から、「変異とは言い切れないが変異に近い現象はあったかもしれない」というまどろこしい回答となり、その後は「調査中」となっていること。ここまで変化しては、結局最初の時点で何も把握してなかったのでは?と疑われても仕方ないと思っている。
また、早い段階で、感染していても発症していない馬の競走能力について、キッチリした説明をしなかったことも大きな失敗。データを並べることも大事だが、今、何を説明しないといけないのかという優先順位を決める「察知力」がズレていたのも確かである。「万全を期す競馬のために鋭意努力」と抽象的な言葉を繰り返すのでは、とても納得させることはできない。突っ込まれてから説明するのと、最初から説明するのとでは、同じことを語っていても受け止められ方はかなり変わってしまう。自分たちから説明する努力。これがとにかく欠落していた。
今回責められることがあるとするなら、開催の是非よりもむしろこの点だと思われる。(もちろん開催是非についても、意見百出で結構、けしからんという意見があってもいいのだけれど、ただその「けしからん側」の意見の根拠が、見た範囲ではあまりにも脆弱だ。とてもマスコミとは思えないくらいに。ま、質が低いという事はずっと書いてきたことだから今さら失望はしないんですけどね。)
今回、マスコミは煽りのために、JRAはアイデンティティを守る錦の御旗として「公正競馬」という言葉を再三再四繰り返してきた。
先日もちらっと書いたけれど、どっちも「建て前」としてこの言葉を乱用したように見える(これまでもね)。明らかに公正競馬という言葉の本質についてのコンセンサスが、主催者、調教師、馬主、マスコミ、ファンなどあらゆる立場の人間に取れていないことを浮き彫りにした。そして、取れるわけがないのである。
完全な公正競馬などは、よーく考えればありえないことは誰にでも分かるだろう(説明しないっすよ。諸制度にしても馬場にしてもいろいろ広げていけば・・・分かるでしょ?)。あくまで「公正な状態を目指して競馬を執り行う」というのが本当のところ。その視点からすれば、今回の開催へ向けた動き(広報的な部分を除いて、いわゆる現場レベルの)は、正しい方向を向いていると思う。
誤解を恐れず言えば、公正競馬というものへの幻想を、みんな一度捨ててみればいいと思うんですけどね。ま、「不正のない競馬」という定義ぐらいに留めておけばいいんじゃないでしょうかね。公平と公正もごっちゃにはできないし。お互いに「公正競馬、公正競馬」と、二言目には逃げ場のように繰り返すこと自体が、「これが公正か?」と軽薄な正義感に火をつけることにつながっているように思うんですけど。
あと、話は逸れますが、JRAはもっとグリーンチャンネルを広報機関として有効に活用する態度があってもいいんじゃないでしょうかね。一蓮托生だけが能じゃないでしょう。他局にできないことが今回たくさんできたはず。まあこれについては当事者の端くれとして憤りを抑えられないようなこともあって、でも立場上書けないんですけどね(苦笑)。察してみて下さい。放送を見ていれば分かるかもしれませんが。

1