みんなが集まっている所へ行く。
ボクたちの立つ位置は、車から10メートル位は離れていただろうか。
崖の下の道路に停車していた白い車に朝日が当たっていた。
行きには見えなかった車内に朝日が差し込んでいる。
続き、心臓に悪いかもです。
運転席側の窓に手書きの地図の様な紙が貼ってある。
その窓越しにシートを倒して真上を向き、目をつぶっている男性の顔が見えた。
朝日に照らされたその面長な顔は真っ白だった。
車の中で寝ているという雰囲気ではなかった。
そう思わせる違和感は、助手席に置いてある車内に不似合いな銀色のブリキのバケツだった。
そのバケツは真新しく、朝日にキラキラと輝いている。
「練炭だな・・・」
「まだ、若いね・・・」
「(わ)ナンバー?・・・レンタカーか・・・」
誰ともなく、口々に喋り始めた。
区長が軽トラで坂を下りて行く。
後をついて2〜3人が下りて行く。
携帯で警察に電話している。
「なんだよ・・・行くまでそこに居てくれと!」
電話した男が笑った。
それを合図にみんな不安からか饒舌になって行く。
「○○ちゃん、日当出るかもよ〜」
「レンタカーやさんもたまらんね・・・あれ、使い廻すんだろうな」
「三ヶ月発見されなかった、なんていうのよりいいんじゃないの?シートとか・・・」
そのシーンを想像したのか黙った。
「まぁ、そのためにレンタカーを借りる、という事だしね・・・」
「あ、練炭、草の上に落ちてるぞ!」
「よくシートが燃えなかったなっ・・・」
車の所から上がってきて
「まだ、30代だな・・・連絡先書いた紙がシートの上にあったよ・・・」
自殺者の状景を細かく語った。
みんなは更に饒舌になり昔体験した交通事故の話や、以前書いた「呼ばれている」このエリアの話を、時には笑いながら話し始めた。
ある意味、ここの住人はこの手の出来事に慣れているのだ。
だが、次第に躁状態になってゆく。
先に帰った家の隠居じーちゃんが、原チャリなどで見に来る。
「気の毒に・・・」
そう言うと
「気の毒というか・・・」
と、返された。
「よほど煮詰まるんだろうね・・・死ぬ気なら何でも出来る、なんて嘘だよな・・・」
「精神状態がもう、あれなんだろうね・・・」
誰もがそこを離れられなくなっている。
警察が来るまでは、そこに居るのが義務であるかのように・・・
パトカーが来た。
それがきっかけで体が動いた。
「一応、見てくるね・・・後学のために・・・」
ボクは一人で坂道を下りた。
後から鑑識の車も静かに下りて来た。
続く

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